プログラムの目的は「成果」で書く
プログラムの企画書を開くと、目的の欄にこう書かれていることがあります。
「基幹システムを刷新し、業務効率を向上させる」
間違ったことは書いていません。ただ、この一文ではいつ達成したか、誰にも判定できません。効率が何パーセント上がれば成功なのか、決まっていないからです。
プログラムの目的は、作るものではなく、動かす数字で書きます。

■ 成果は「鎖」でつながっている
図のとおり、成果物からいきなり経営の数字が動くわけではありません。間に段階があります。
作ったもの(システム、手順、研修)
業務が変わる(二重入力がなくなる、など)
中間の指標が動く(1件あたりの処理時間)
最終の成果が出る(リードタイム、コスト、売上)
この鎖を書き出しておくと、良いことが2つあります。
ひとつは、途中で効果を確認できること。最終成果は1年後にしか分かりませんが、2番目と3番目は数か月で測れます。ここが動いていなければ、最終成果も動きません。早めに手を打てます。
もうひとつは、抜けが見つかること。鎖を書いていくと、「この成果物だけでは、業務は変わらないな」と気づきます。たいてい、研修や手順の切替が抜けています。
■ 成果の書き方には型がある
次の4つがそろっていれば、目的として機能します。
要素 | 例 | ないとどうなるか |
|---|---|---|
指標 | 受注から出荷までのリードタイム | 何を見ればいいか分からない |
現在の値 | 平均5日 | 改善したかが判定できない |
目標の値 | 2日 | どこまでやれば終わりか不明 |
期限 | 来年3月末 | いつまでも先送りできる |
並べると当たり前に見えますが、実際の企画書では「現在の値」が抜けていることが非常に多いです。今が何日かかっているのかを誰も測っていない状態で、「短縮する」と書かれています。
だから、プログラムの立ち上げ期に必ずやる作業があります。現状の値を測ることです。1か月かかっても、やる価値があります。
■ 指標は3つまでに絞る
成果を並べ始めると、いくつでも出てきます。コストも下げたい、品質も上げたい、社員満足度も上げたい。
ただ、全部を追いかけると、優先順位がつけられなくなります。プログラムの判断は「AとBのどちらを先にやるか」の連続です。指標が5つも6つもあると、どちらが大事か決められません。
分け方 | 内容 |
|---|---|
主指標(1つ) | このプログラムの存在理由。迷ったらこれで判断する |
副指標(1〜2つ) | 主指標と一緒に見る。トレードオフの監視にも使う |
制約条件 | 悪化させてはいけないもの(品質、事故件数など) |
3行目の「制約条件」を置いておくと、副作用を防げます。リードタイムを縮めた結果、出荷ミスが増えては意味がありません。
■ 測れないものをどうするか
「社員のモチベーション向上」のように、直接測りにくい成果もあります。この場合、2つの方法があります。
代わりに測れるもので置き換える:離職率、残業時間、アンケートの特定の設問
成果ではなく、前提条件として扱う:目的には入れず、制約条件の欄に置く
大事なのは、測れないものを主指標にしないことです。主指標が測れないと、プログラム全体の判断ができなくなります。
■ 誰が数字を持つかを決める
成果を決めたら、最後にひとつ決めることがあります。その数字に責任を持つのは誰かです。
リードタイムを短縮するプログラムなら、その数字を持つのはプログラムマネージャーではなく、物流部門の責任者かもしれません。ここを曖昧にすると、こうなります。
「システムは予定どおり入りました。ただ、リードタイムは変わっていません」「それは現場の運用の問題です」「いや、システムが使いにくいからです」
この会話を避けるために、立ち上げ時に、数字ごとに名前を書いておきます。
■ まとめ
プログラムの目的は、指標・現在値・目標値・期限の4点セットで書く。成果物ではなく、動かす数字を書く。そして主指標は1つに絞る。
いま関わっているプログラムの目的を、この4点で書けるか確かめてみてください。「現在値」が書けないなら、それを測ることが最初の仕事です。