ベネフィットの測り方と、測る時期
プログラムの仕上げは、成果が出たかどうかを確かめることです。ところが、ここで多くの取り組みがつまずきます。
理由は2つあります。ひとつは、比べる相手(基準値)がないこと。もうひとつは、測る時期を間違えることです。

■ 稼働直後は、必ず悪くなる
新しいシステムや手順に切り替えた直後は、成績が落ちます。当たり前です。誰も慣れていないからです。
操作に時間がかかる
問い合わせが増え、周りの人の時間も奪う
例外的なケースの扱いが決まっていない
この時期の数字を見て「効果が出ていない」と判断するのは、早すぎます。むしろ、この落ち込みは計画に織り込んでおくべきものです。
経営層への説明でも、事前にこの図を見せておくと効きます。「2〜3か月は下がります。基準値に戻るのが3か月後、効果が見え始めるのが6か月後です」と先に言っておく。後から説明するより、はるかに通ります。
■ 基準値は、プログラムの最初に測る
「以前は何分かかっていましたか」と後から聞いても、正確な答えは返ってきません。記憶は当てになりませんし、都合よく思い出されることもあります。
だから、プログラムの立ち上げ期に測ります。方法は業務によりますが、凝る必要はありません。
測り方 | 向いている場面 | 手間 |
|---|---|---|
システムのログから集計 | 件数、処理時間、エラー数 | 小 |
2週間だけ手で記録してもらう | 紙の作業、電話対応、移動時間 | 中 |
数人に聞いて代表値を置く | 厳密さより傾向が大事な場合 | 小 |
3行目でも構いません。大事なのは、測った時期と方法を記録しておくことです。後で比べるとき、同じやり方で測る必要があるからです。
■ 3か月後に見るのは「戻ったか」
3か月後の測定は、成果の評価ではありません。基準値まで戻ったかどうかの確認です。
ここで戻っていない場合、原因はだいたい3つのどれかです。
戻らない原因 | 確かめ方 | 打ち手 |
|---|---|---|
手順が現実に合っていない | 現場で実際の作業を見る | 手順を直す。例外の扱いを追加する |
使い方が分かっていない | 問い合わせの内容を分類する | 追加研修、手順書の書き直し |
旧のやり方が残っている | 新手順の実施率を測る | 旧の運用を止める。ここが効く |
3行目が最も多く、そして最も効きます。旧システムや旧帳票が残っていると、人は慣れたほうを使います。止めることまでがプログラムの仕事です。
■ 成果が出ないときに何を疑うか
6か月後に中間指標が動いていない。このとき、順番に疑います。
使われているか(実施率)。使われていなければ、成果は出ません
使われているが、想定どおりの効果が出ていないか。この場合、最初の想定が甘かった可能性があります
効果は出ているが、別の要因で数字が相殺されていないか。取扱量が増えた、人員が減ったなど
3番目は見落としやすい点です。処理時間は短縮されたのに、件数が1.5倍になったため、総残業時間は変わっていない。こういうことは実際に起きます。1件あたりの指標と、総量の指標を両方持っておくと、切り分けられます。
■ 測ったあとが本番
成果を測ったら、必ず記録して共有します。良かった場合も、悪かった場合もです。
想定と実績の差(何が、どのくらいずれたか)
ずれた理由として考えられること
次に同じような企画をするときに、変えるとよいこと
この記録が、次のプログラムの見積もり精度を上げます。多くの組織では、ここが残っていません。だから毎回、同じ楽観的な見積もりを繰り返すことになります。
■ まとめ
成果はいったん下がってから上がります。基準値は最初に測り、稼働直後の数字で評価しない。3か月後に「戻ったか」、6か月後に「動いたか」、12か月後に「達成したか」を見る。
いま関わっているプログラムで、基準値が記録されているか確認してみてください。なければ、まだ間に合う段階かもしれません。