未来PM
PgMテンプレート

プログラム終結判定チェックリストのテンプレート

プログラムの終わり方は、2つあります。計画どおりに終わるか、途中でやめるか。どちらの場合も、「終わってよい」と判断する基準が必要です。

基準がないと、プログラムはずるずると続きます。構成プロジェクトはすべて終わっているのに、PgMもPMOも解散できない。残った細かい作業を誰かが抱え続ける。こうした状態は、どの会社でも見かけます。

この記事では、プログラムを終わらせてよいかを判断するチェックリストを紹介します。


■ 背景・よくある課題

よくある状態

なぜ起きるか

その結果

全PJ完了=プログラム終結だと思っている

プロジェクトの感覚で考えている

旧運用の停止や効果測定が宙に浮く

終わらせる判断をする人がいない

終結の承認者を決めていない

いつまでも解散できない

残った作業を誰かが抱え続ける

引き取り先を決めていない

その人が異動すると消える

ベネフィットが出そろう前に終わる

効果測定の引き継ぎ先がない

投資が回収できたかわからない

教訓が残らない

ふりかえりをやっていない、または個人のメモで終わる

次のプログラムで同じ失敗を繰り返す

要員の次の配置が決まっていない

終結の日程が直前まで決まらない

終結の直前に主要メンバーが抜ける


■ 終結判定の6分野

電力小売の東和エナジー(年商620億円・契約98万件)が進めたスマートメーター運用基盤プログラム(2023年10月〜2026年3月、承認枠14億8,000万円、構成PJ4本・ベンダー4社)の、2026年2月時点の終結判定です。

図 終結判定の6分野

この時点では終結できません。D(旧運用の停止)に1件、未了があるからです。全PJが完了し、引き継ぎも終わり、効果も出ている。それでも終わらせません。

残っていたのは、旧メーターデータ収集の回線契約1件でした。解約通知を出し忘れていて、2026年3月まで契約が残っていたのです。これを終結後に放置すると、誰も気づかないまま自動更新されます。だから終結の前に片づけます。

もう1つ注目してほしいのが、B(ベネフィット)の扱いです。ここだけは「完了」にできません。効果が出そろうのは終結の後だからです。したがって条件は「目標の達成」ではなく、「達成、または達成見込みと測定の引き継ぎ先が確定していること」とします。


■ チェックリストの全体像

6分野それぞれの確認項目です。全部で20項目ほどになります。

分野

確認項目

確認する人

A 成果物

構成PJがすべて完了し、完了報告が承認されている

PgM

A 成果物

成果物の受入が業務部門から承認されている

業務部門長

A 成果物

未完了の成果物がある場合、その引き取り先と期限が決まっている

PgM

B ベネフィット

目標を達成している、または達成の見込みが立っている

PgM・業務部門

B ベネフィット

未達の指標について、理由と今後の見込みが説明できる

PgM

B ベネフィット

終結後の測定を誰が続けるか、いつまでかが決まっている

業務部門長

C 運用引き継ぎ

全PJの運用引き継ぎが完了している

運用部門長

C 運用引き継ぎ

定着の確認項目が基準を満たしている

運用部門長

C 運用引き継ぎ

PJメンバーの管理者権限がすべて削除されている

情報システム部門

D 旧運用の停止

旧システムがすべて停止している

情報システム部門

D 旧運用の停止

旧契約がすべて解約されている(自動更新の期限を含む)

調達部門

D 旧運用の停止

旧手順・紙の帳票が現場から無くなっている

業務部門長

E 財務

全ベンダーとの精算が完了している

調達部門・経理

E 財務

支払いが完了している、または支払予定が確定している

経理

E 財務

最終的な実績額と当初計画の差が説明できる

PgM・財務

F 記録・知識

文書が所定の場所に保管され、保存年限が設定されている

PMO

F 記録・知識

教訓(うまくいったこと・失敗したこと)がまとめられている

PgM・PMO

F 記録・知識

プログラムのメンバーの次の配置が決まっている

人事・各部門長

F 記録・知識

終結後の問い合わせ先が決まり、関係者に周知されている

Pg

「確認する人」の列を見てください。PgM一人では判定できないことがわかります。運用部門長、調達部門、経理、業務部門長。それぞれが自分の分野について「終わっています」と言えて、はじめて終結です。


■ 判定のやり方

判定

意味

次にやること

終結

全項目が「済」または「条件付」

終結の承認を得て、完了報告書を作る

条件付き終結

残る項目があるが、引き取り先と期限が決まっている

残項目の一覧を添えて承認を得る。期限までPgMが追う

終結しない

1項目でも「未」があり、引き取り先も決まっていない

その項目を片づけて再判定する

大事なのは、「条件付き終結」と「終結しない」を区別することです。東和エナジーのE(財務)は支払残2件がありますが、支払予定日が確定しているので「条件付」です。一方D(旧運用の停止)は、契約が残っていて解約手続きも始まっていないので「未」です。

条件付きの場合、残項目を一覧にして承認者に見せます。「残り2件、いずれも3月末までに完了予定、担当は経理部の〇〇」という形です。これがないと、条件付き終結は「終わったことにする」と同じになります。


■ 途中でやめる場合

プログラムは、途中でやめることもあります。前提が変わった、効果が見込めなくなった、優先順位が下がった。これは失敗ではなく、正しい判断であることも多いものです。

途中でやめるときも、同じ6分野で判定します。ただし内容が少し変わります。

分野

計画どおり終わる場合

途中でやめる場合

A 成果物

全PJが完了している

作りかけの成果物をどうするか(保管/廃棄/別用途)が決まっている

B ベネフィット

目標を達成している

部分的に得られた効果を測り、記録している

C 運用引き継ぎ

運用部門へ引き継ぎ済み

稼働済みの部分だけを引き継ぐ。残りは元に戻す

D 旧運用の停止

旧運用を停止している

旧運用に戻す手順が完了している

E 財務

精算完了

契約の中途解約と違約金の精算が完了している

F 記録・知識

教訓をまとめている

なぜやめたかを記録している。これが最も価値のある教訓になる

途中でやめる場合、Fの「なぜやめたか」がとても重要です。3年後に同じような企画が出てきたとき、この記録があれば判断が早くなります。失敗の記録は、成功の記録より役に立つことがあります。


■ 運用ルール

タイミング

やること

誰が

終結予定の6か月前

チェックリストを作り、各分野の担当に配る

PgM・PMO

終結予定の3か月前

1回目の判定。未了の項目を洗い出す

PgM・各分野の担当

終結予定の1か月前

2回目の判定。要員の次の配置を確定させる

PgM・人事・各部門長

終結予定日

最終判定。運営委員会で終結を承認する

運営委員会

承認後

完了報告書を作り、関係者に配る

PgM

条件付きのとき

残項目の期限まで、PgMが月次で状況を追う

PgM

6か月前からチェックリストを動かすのは、早すぎるようで、ちょうどよい時期です。契約の解約通知は3か月前までに出す必要があるものが多く、要員の次の配置も3か月前には決めておかないと間に合いません。終結の準備は、終結の半年前から始まります。


■ よくある失敗と直し方

失敗

何が起きるか

直し方

全PJ完了で終結にする

旧運用の停止や効果測定が宙に浮く

6分野すべてを確認する。A(成果物)は6分の1に過ぎない

PgMだけで判定する

財務や契約の残りが見えない

分野ごとに確認する人を決める。その人のサインをもらう

ベネフィットの達成を条件にする

いつまでも終結できない

「達成見込みと測定の引き継ぎ先の確定」を条件にする

条件付き終結を口約束で済ませる

残項目が忘れられる

残項目の一覧を作り、担当と期限を明記して承認をとる

要員の配置を終結直前に決める

主要メンバーが先に抜ける

3か月前に確定させる

途中でやめた記録を残さない

数年後に同じ企画が出てくる

「なぜやめたか」を必ず文書に残す


■ 導入効果

項目

前回のプログラム

今回

全PJ完了から正式終結までの期間

11か月

2か月(予定)

終結後に見つかった未解約の契約

3件・年1,240万円

0件(予定)

終結後も残った作業

7件(担当不明)

2件(担当・期限とも確定)

効果測定の継続

終結とともに停止

業務部門が終結後12か月まで継続

教訓をまとめた文書

なし

A4で12ページ。次のプログラムの計画時に使用

前回は全PJ完了から正式終結まで11か月かかりました。理由は、終結の条件が決まっておらず、「まだ何か残っている気がする」という状態が続いたからです。基準があれば、終われます。


■ まとめ

  • プログラムの終結は、成果物・ベネフィット・運用引き継ぎ・旧運用の停止・財務・記録の6分野で判定します。

  • 全PJ完了は6分の1にすぎません。それだけでは終結できません。

  • ベネフィットだけは「達成」を条件にしません。達成見込みと、測定の引き継ぎ先の確定が条件です。

  • 分野ごとに確認する人を決めます。PgM一人では判定できません。

  • 「条件付き終結」と「終結しない」を区別します。条件付きなら、残項目の一覧・担当・期限を添えて承認を得ます。

  • 準備は終結の6か月前から始めます。契約解約も要員配置も、直前では間に合いません。

  • 途中でやめる場合も同じ6分野で判定します。「なぜやめたか」の記録が、最も価値ある教訓になります。

次回は、このシリーズの最終回として「プログラム完了報告書・ベネフィット実現報告書」のテンプレートを紹介します。

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