プログラム要員配分計画のテンプレート
プロジェクト単位の要員計画は、それぞれ正しく作られていることが多いものです。それでも足りなくなるのは、同じ人が複数のプロジェクトから必要とされているからです。しかもこの重なりは、プロジェクトの計画書を1本ずつ読んでも見えません。
この記事では、プログラム全体の要員配分計画のテンプレートを紹介します。ポイントは、総人数の山より先に、希少スキルの山を割ることです。記入例は、加美乃フーズ(架空)の「生産・供給改革プログラム」(2年半・承認枠5億2,000万円・構成4本)です。
■ 1. 背景・よくある課題
よくある状態 | 何が起きるか |
|---|---|
プロジェクトごとに要員計画を作っている | 同じ人が複数に計上され、実態より多く見える |
総人数だけで山を見ている | 人数は足りているのに、特定のスキルで詰まる |
兼務を1.0人月として数えている | 実際には0.4人月しか出ておらず、計画が最初から破綻する |
業務部門の工数が計画に入っていない | 要件レビューの時間が取れず、要件確定が遅れる |
山が超えたときの打ち手が「増員」しかない | 人を増やしても、希少スキルのところで止まる |
供給の上限を決めていない | いくらでも積める計画になり、実行段階で崩れる |
3つめと4つめは、プログラムの要員計画でとくに見落とされやすい点です。業務部門のメンバーは本業を持ったまま参加します。「週16時間」と決めておかないと、実際には週4時間しか出てきません。
■ 2. テンプレート作成の目的
目的 | 具体的にどうなることか |
|---|---|
プログラム全体で山を見る | プロジェクトを積み上げ、時期ごとの総量を出す |
希少スキルを別に管理する | 数名しかいないスキルを、個人単位で山積みする |
供給の上限を決める | 社内・ベンダーそれぞれの上限を、先に合意しておく |
兼務を実働で数える | 0.4人月なら0.4と書く。1.0で数えない |
山を割る順番を決める | スキル→着手時期→増員、の順に検討する |
■ 3. テンプレートの全体像
シート | 役割 | 粒度 | 更新の頻度 |
|---|---|---|---|
① 総量の山積み | プロジェクト別に積み上げ、供給上限と比べる | 四半期 | 四半期ごと |
② 希少スキルの山積み | 数名しかいないスキルを、個人単位で見る | 月 | 月次 |
③ 要員台帳 | 1人1行。所属・スキル・参加期間・稼働率 | ― | 参加・離任のつど |
④ 供給上限の定義 | 社内・ベンダー・業務部門の上限と根拠 | ― | 年度ごと |
■ 4. 総量の山積み

加美乃フーズの例では、供給上限32名に対して、2024年4Qに33名、2025年1Qに36名と、2四半期だけ超えています。超えているのが一部の期間だけなら、打ち手は限られます。
打ち手 | 効果 | 副作用 |
|---|---|---|
後続プロジェクトの着手を後ろへずらす | 山が下がる。追加費用なし | ベネフィットの実現が遅れる |
ベンダーを増やす | すぐ人数は増える | 費用が増え、立ち上がりに時間がかかる |
プロジェクトの範囲を削る | 山も費用も下がる | ベネフィットが落ちる |
上限そのものを上げる | 計画は通る | 実行段階で必ず崩れる。最後の手段 |
加美乃フーズが選んだのは1つめでした。C2(需給計画高度化)の着手を1四半期うしろへずらすことで、2025年1Qの山が36名から27名に下がっています。
■ 5. 希少スキルの山積み
ここが、プログラムの要員計画でいちばん大事な部分です。総人数が上限内でも、希少スキルの山が割れていなければ止まります。
加美乃フーズでは、生産管理の業務知識をもつ社内要員が4名しかいませんでした。この4名が必要になる作業は、次のとおりです。
時期 | C1 | C2 | C3 | 必要人数 | 判定 |
|---|---|---|---|---|---|
2024年10〜12月 | 要件確認(3名) | ― | ― | 3名 | 可 |
2025年1〜3月 | 受入テスト(4名) | 需給ロジック設計(2名) | ― | 6名 | 不足2名 |
2025年4〜6月 | 定着支援(2名) | 需給ロジック設計(2名) | 原価配賦ルール(2名) | 6名 | 不足2名 |
2025年7〜9月 | ― | 受入テスト(2名) | 原価配賦ルール(2名) | 4名 | 可 |
この表を作ると、総人数の山とは違う時期に不足が出ることが分かります。加美乃フーズの場合、総人数の山は2025年1Qですが、希少スキルの不足は1Qと2Qの両方で起きていました。
打った手は次の3つです。
打ち手 | 内容 |
|---|---|
C2の着手を1四半期うしろへ | 需給ロジック設計を2025年4〜6月へ移し、1Qの重なりを解消 |
C3の原価配賦ルール策定を7〜9月へ | 2Qの重なりを解消。C3の稼働日は変えずに済んだ |
4名のうち1名を、期間限定で他業務から外す | 2025年1〜6月のみ、専任に近い状態にする(部門長の承認) |
■ 6. 兼務は実働で数える
要員台帳では、稼働率を実働で書きます。ここを1.0で数えると、計画は最初から破綻します。
参加の形 | よくある計上 | 実際に出る時間 | 台帳に書く値 |
|---|---|---|---|
専任(プログラム以外の業務なし) | 1.0 | 週40時間 | 1.0 |
兼務(部署の業務を持ったまま) | 0.5 | 週8〜12時間 | 0.25 |
業務部門のレビュー参加 | 計上していない | 週4〜8時間 | 0.15 |
管理職(承認・判断のみ) | 計上していない | 週2〜4時間 | 0.08 |
とくに業務部門のレビュー参加は、計上されていないことが多い工数です。しかしここが出てこないと、要件が確定しません。プログラムの要員計画には、必ず業務部門の行を入れてください。
加美乃フーズでは、業務部門のレビュー工数を「週16時間(0.4人月)×6名」として体制表に明記し、各部門長の承認を取っています。
■ 7. 運用ルール
ルール | 内容 | 理由 |
|---|---|---|
山を割る順番を守る | ①希少スキル → ②着手時期 → ③増員 | 逆にすると、人を増やしても希少スキルで詰まる |
供給上限を先に決める | 社内・ベンダー・業務部門それぞれの上限を合意しておく | 上限が無いと、いくらでも積める計画になる |
兼務は実働で数える | 0.25や0.4のように、小数で書く | 1.0で数えると計画が最初から破綻する |
希少スキルは月次で見る | 総量は四半期、希少スキルは月次 | 不足が出る時期が、総量とずれる |
離任の予定も台帳に書く | 「2025年6月に異動予定」まで記録する | 異動で希少スキルが抜けると、代替が効かない |
上限超過は運営委員会に上げる | PgMの判断で上限を超えない | 上限を動かすのは、人を出す部門の判断 |
■ 8. 活用シーン
場面 | 使い方 |
|---|---|
プログラムの計画時 | 構成プロジェクトの順序を、山が上限内に収まるように決める |
プロジェクト追加の判断 | 追加した場合の山を描き、上限を超えないかを確認する |
四半期の見直し | 実績と計画の差を見て、次の四半期の配分を調整する |
ステージゲートの判定 | 次フェーズの要員が確保できているかを、判定項目に入れる |
異動・離任が出たとき | 希少スキルの山を見て、どの作業が止まるかを特定する |
ベンダー調達の検討 | 不足の時期と量を根拠に、調達の規模と時期を決める |
■ 9. よくある失敗と直し方
失敗 | 起きること | 直し方 |
|---|---|---|
総人数だけで判断している | 人数は足りているのに、特定スキルで止まる | 希少スキルの山積みを、別シートで月次に持つ |
兼務を1.0で数えている | 計画上は足りているが、実際は半分も出ない | 実働で小数で書く。過去の実績から係数を決める |
業務部門の工数が入っていない | 要件レビューが進まず、要件確定が遅れる | 週何時間かを体制表に書き、部門長の承認を取る |
上限を超えたら増員、で済ませている | 費用が増え、立ち上がりにも時間がかかる | まず着手時期の調整を検討する |
上限を決めていない | 実行段階で必ず崩れる | 社内・ベンダー・業務部門の上限を、年度ごとに合意する |
離任の予定を把握していない | 希少スキルが突然抜ける | 台帳に離任予定の列を作り、四半期に1回確認する |
■ 10. 導入効果
観点 | プロジェクト別に作っていたとき | プログラムで山積みしたとき |
|---|---|---|
重なりの把握 | 実行段階で分かる | 計画時に、2四半期の超過が見える |
希少スキル | 見えない | 4名の山が、月単位で見える |
打ち手 | 増員(費用増・立ち上がり遅れ) | C2の着手を1四半期ずらす(追加費用なし) |
業務部門の工数 | 計上されていない | 週16時間×6名として、部門長の承認つきで確保 |
2025年1Qの山 | 36名(上限+4) | 27名(上限内) |
■ まとめ
プログラムの要員計画は、プロジェクトの山積み表を足し合わせるところから始まります。しかし本番はその先で、数名しかいない希少スキルを、個人単位で山積みすることです。
まずは「このプログラムで、いちばん代わりがきかない人は誰か」を挙げてみてください。たいてい3〜5名です。その人たちの山を月単位で描くと、総人数の山とは違う時期に不足が見えてきます。