会議アジェンダ・議事録のテンプレート
議事録を書くのが苦手だ、という声をよく聞きます。会議が終わってから1時間かけて発言を思い出し、翌日に配る。配るころには内容が少し古くなっていて、読む人も「決まったことだけ教えて」と言う——そんな循環に心当たりはないでしょうか。
この記事では、その手間をほとんどゼロにする方法として、アジェンダと議事録を同じ1枚にするテンプレートを紹介します。会議の前に左半分を埋めておき、会議の中で右半分を埋める。会議が終わった時点で議事録が完成している、という形です。記入例は、事例集の「リンクスタッフ(架空)の派遣スタッフ管理システム刷新」に当てはめています。
■ 1. 背景・よくある課題
よくある状態 | 何が起きるか |
|---|---|
アジェンダと議事録が別のファイルになっている | 議事録は会議後の作業になり、必ず後回しになる |
発言を時系列で書き起こしている | 作成に1時間かかるうえ、読む側は結論を探さなければならない |
アジェンダが「進捗確認」だけになっている | 何を決める会議なのか分からず、報告会になる |
「〜する方向で」「前向きに検討」で終わっている | 後から読んで、決まったのかどうか判断できない |
決定事項に主語がない | 「誰が決めたか」が残らず、後でひっくり返る |
議事録の中にTODOを書いている | 過去の議事録を全部開かないと、残っている宿題が分からない |
これらはすべて、「議事録を会議後に作るもの」と考えていることから生まれています。会議中に完成させる前提にすれば、書く量は自然に減ります。
■ 2. テンプレート作成の目的
目的 | 具体的にどうなることか |
|---|---|
会議が終わった時点で議事録を完成させる | 会議後の作業をゼロにする |
議題ごとに結論を残す | 「決定」「保留」「TODO」のどれかを必ず書く |
決めた人の名前を残す | 後から蒸し返されたときに、経緯をたどれる |
TODOは管理表に逃がす | 議事録の中で宿題を管理しない |
会議の必要性を判定できるようにする | 決めることが無い会議は、資料配布に置き換える |
■ 3. テンプレートの全体像
A4で1枚。左側(グレー)を会議の前に、右側(青)を会議の中で埋めます。

アジェンダと議事録は、実は同じ表の左半分と右半分です。別々のファイルにするから、議事録が「後でやる作業」になります。1枚にまとめてしまえば、会議中に右の列を埋めるだけで済みます。
ブロック | いつ埋めるか | 中身 |
|---|---|---|
① 会議の基本情報 | 会議の前 | 会議名、日時・場所、出席者(欠席者も)、この会議で決めること |
② 議題と結論 | 左は前・右は中 | 1行1議題。左:議題・担当・時間・資料/右:結論・決めた人・TODO番号 |
③ 決定事項 | 会議の中 | ②の「決定」だけをあらためて箇条書きにする |
④ 保留事項 | 会議の中 | なぜ決まらなかったか+次に何があれば決まるか |
⑤ TODO | 会議の中 | TODO管理表に登録した番号だけを書く |
■ 4. 各項目の説明
① この会議で決めること
会議の冒頭に書く、いちばん重要な1行です。「進捗確認」ではなく「連携I/Fの項目を確定させる」のように、終わったかどうかが判定できる形で書きます。ここが書けない会議は、資料を配れば足りる会議です。
② 議題と結論
列 | いつ | 書き方のコツ |
|---|---|---|
議題 | 前 | 「〜について」ではなく「〜を決める」「〜を確認する」と動詞で書く |
担当 | 前 | その議題を説明する人。個人名で書く |
時間 | 前 | 合計が会議時間の8割に収まるようにする(残り2割は調整用) |
資料 | 前 | 事前に配ったものを書く。当日配布の資料は原則なし |
結論 | 中 | 「決定:〜」「保留:〜」のどちらかで始める。それ以外の書き出しを使わない |
決めた人 | 中 | 個人名。会議体名(「進捗会議」など)で逃げない |
TODO | 中 | その場で管理表に登録し、番号だけを書く |
③〜⑤ 議題には3つの出口しかない
ひとつの議題を取り上げたら、必ず次の3つのどれかで終わります。

この3つのどれにも入らない議題は、そもそも会議で扱う必要がありません。「共有しておきたいこと」は、資料を配って終わりにできます。会議の時間を短くするいちばん確実な方法は、議題の数を減らすことです。
なお④保留事項では、「なぜ決まらなかったか」と「次に何があれば決まるか」を必ずセットで書きます。後者が無い保留は、次回も同じ議論を繰り返します。「重複データの件数が分からないので決められない/件数の集計が出れば決まる」まで書いて、その集計をTODOとして登録する。ここまでが1セットです。
■ 5. 記入例(架空企業:リンクスタッフ)
人材派遣会社リンクスタッフの「派遣スタッフ管理システム刷新プロジェクト」(13か月・196人月)の、2025年6月11日(水)の週次進捗会議です。
項目 | 記入内容 |
|---|---|
会議名 | 第18回 週次進捗会議 |
日時・場所 | 2025年6月11日(水)10:00-10:30/本社会議室B+オンライン |
出席者 | 田中(PM)、佐藤(ベンダーPL)、鈴木(業務部)、高橋(営業部)/欠席:山口(情報システム部・代理出席なし) |
この会議で決めること | 連携I/F項目一覧の確定日と、受入テストの参加体制を決める |
議題と結論は、次のように埋まりました。
No. | 議題 | 担当 | 時間 | 結論 | 決めた人 | TODO |
|---|---|---|---|---|---|---|
1 | 連携I/Fの項目を確定する | 佐藤 | 10分 | 決定:給与システム側の3項目を追加し、6/18に確定とする | PM 田中 | TODO-041 |
2 | スタッフマスタの重複データの扱いを決める | 鈴木 | 10分 | 保留:件数が分からず判断できない。件数の集計が出れば決まる(次回再議) | ― | TODO-042 |
3 | 受入テストの参加体制を決める | 高橋 | 5分 | 決定:各部署から2名ずつ選出する。候補者名簿は6/20までに提出 | PM 田中 | TODO-044 |
③決定事項には、次の2行を書きます。
決定事項 | |
|---|---|
D-018-1 | PM田中が、連携I/F項目一覧に給与システム側の3項目を追加し、確定日を2025/6/18とすることを決定した。 |
D-018-2 | PM田中が、受入テストの参加者を各部署2名ずつとすることを決定した。名簿の提出期限は2025/6/20。 |
主語を書く、という点に注目してください。「〜することとなった」ではなく「PM田中が〜を決定した」と書きます。数か月後に「なぜこうなっているのか」と聞かれたとき、聞きに行く相手がすぐ分かるからです。
④保留事項は1行です。
保留事項 | |
|---|---|
H-018-1 | スタッフマスタの重複データの扱い。重複件数が未集計のため判断できない。TODO-042(6/16期限)の集計結果が出れば、次回6/18の会議で決定する。 |
この1行があるだけで、次回の会議で「あれ、この件どうなってましたっけ」から始まらずに済みます。
■ 6. 運用ルール
ルール | 内容 | 理由 |
|---|---|---|
アジェンダは前日までに配る | 議題・担当・時間・資料を埋めた状態で送る | 当日配布だと、その場で読む時間が要る |
会議中に画面を共有して書く | 結論欄をその場で埋め、読み上げて確認する | 認識のずれが、その場で見つかる |
最後の5分をまとめに使う | ③決定事項・④保留事項・⑤TODOを読み上げる | 会議が終わった時点で議事録が完成する |
結論は「決定」か「保留」で始める | それ以外の書き出しを使わない | 「〜の方向で」は後から判断できない |
TODOは管理表に逃がす | 議事録には番号だけを書く | 宿題の置き場所をひとつにする |
決めることが無い週は開かない | 共有だけなら資料を配って終わりにする | 「毎週あるから開く」会議は、必ず形骸化する |
3つめの「最後の5分をまとめに使う」が、このテンプレートの肝です。議論に30分すべてを使い切ってしまうと、結局あとで書くことになります。最初から「25分議論、5分まとめ」と決めて時間を取っておいてください。
もうひとつ。欠席者を記録に残すのも大切です。「山口(欠席・代理出席なし)」と書いておけば、後から「聞いていない」と言われたときに、事実として確認できます。責めるためではなく、事実を残すためのひと手間です。
■ 7. 活用シーン
場面 | 使い方 |
|---|---|
週次進捗会議 | そのまま使う。議題は3〜5件、時間は合計で会議時間の8割まで |
変更管理会議 | 議題欄にCR番号を書き、結論欄にA〜Dの判定と理由を書く |
ステアリングコミッティ | 「この会議で決めること」を1つに絞る。報告は事前配布の週次報告書で済ませる |
ベンダーとの定例 | 決定事項に主語を入れることで、後の精算協議の根拠になる |
要件レビュー | 指摘事項をその場でTODO登録し、番号を議事録に書く |
フェーズ完了の振り返り | 決定事項を時系列に並べ、判断の経緯をたどる |
■ 8. よくある失敗と直し方
失敗 | 起きること | 直し方 |
|---|---|---|
発言を時系列で書き起こしている | 作成に1時間かかり、読む側も結論を探すことになる | 書くのは結論だけ。経緯が必要な議題は備考に2行で足す |
結論が「〜の方向で」になっている | 決まったのかどうか、後から判断できない | 「決定:」か「保留:」で始めると決め、それ以外を使わない |
議題が5件を超えている | 時間が足りず、後半が形式的な確認になる | 議題は3〜5件。入らないものは次回か、別の会議体へ |
TODOを議事録の中で管理している | 残っている宿題を知るのに、過去の議事録を全部開くことになる | TODO管理表に登録し、議事録には番号だけ書く |
保留の理由だけ書いて終わっている | 次回も同じ議論を繰り返す | 「次に何があれば決まるか」を書き、それをTODOにする |
議事録を清書してから配っている | 配布が翌日以降になり、内容が古くなる | 会議終了時のままを即日共有する。誤字は後から直す |
■ 9. 導入効果
リンクスタッフでこのテンプレートに切り替えたあとの変化です。
観点 | 導入前 | 導入後 |
|---|---|---|
議事録の作成時間 | 会議後に約50分 | 会議中に完了(後作業なし) |
配布までの日数 | 翌日〜翌々日 | 会議終了の5分後 |
議事録の分量 | A4で2〜3ページ | A4で1枚 |
「決まったか分からない」項目 | 毎回2〜3件 | ほぼゼロ(決定/保留の2択) |
前回の議題の蒸し返し | 毎回1〜2件 | 月1件程度(決定事項に主語があるため) |
会議の時間 | 45分(延長が常態) | 30分(うち最後の5分はまとめ) |
効果として大きかったのは、時間の短縮よりも「決まったことが決まったままでいる」ようになったことでした。主語つきで決定を記録しておくと、数か月後に別の人が同じ議論を持ち出したとき、「6/11にPM田中が決めています」と示せます。これだけで、やり直しの議論がかなり減ります。
■ まとめ
議事録を書くのが大変なのは、書く量が多いからではなく、会議が終わってから作ろうとしているからです。アジェンダと同じ1枚にして、会議中に結論の列を埋めていけば、後作業はなくなります。
次の会議から、アジェンダの表に「結論」「決めた人」「TODO」の3列を足してみてください。それだけで、会議が終わった時点で議事録ができあがっているはずです。