課題管理表のテンプレート
課題管理表は、どの現場にもあります。ただ、毎週使われている表は多くありません。件数だけが増え、3か月経つと誰も開かなくなる。よくあることです。
このページでは、課題管理表のテンプレートと、使われる状態を保つための運用、記入例をまとめます。記入例は、事例集の「クラウドリーフ(架空)のSaaS基盤刷新」に当てはめたものです。
■ この帳票が要る場面(背景・よくある課題)
よくある症状 | 本当の原因 |
|---|---|
オープンの件数が増え続ける | 課題でないものまで載せている(作業・決定済みの記録) |
1か月以上触られていない行が多い | 期限が「随時」で、急ぐ理由がない |
担当がPMばかり | 決める権限のない人を担当にしている |
会議で全件レビューをして、時間が足りない | 見る範囲を絞っていない |
何をもって完了かが曖昧で、閉じられない | クローズ条件を書いていない |
■ このテンプレートの目的
判断が必要なことだけを載せる:作業はTODOへ、決まったことは決定記録へ分けます
誰が、いつまでに、何を決めるかを明らかにする:決める人はPMではなく、決められる人です
決まらない理由を、材料不足として扱えるようにする:判断に必要な材料を書く欄を設けます
■ テンプレートの全体像
まず、その1件をどの帳票に載せるかを決めます。ここを間違えると、あとの運用がすべて崩れます。

帳票 | 載せるもの | 追い方 | 見る頻度 |
|---|---|---|---|
課題管理表 | 起きていて、まだ決まっていない、判断が必要なこと | 「誰がいつまでに決めるか」 | 週1回(期限が今週・来週のもの) |
TODO | やることが決まっていて、担当と期限を決めれば進むもの | 「終わったか」 | 週1回(期限切れと今週分) |
リスク管理表 | まだ起きていないが、起きたら影響が出ること | 「監視する数字」 | 週1回(数字の読み上げ5分) |
決定記録 | すでに決まったこと | 追わない(参照するだけ) | 必要なときだけ |
■ 各項目の説明
列 | 何を書くか | 書き方のコツ |
|---|---|---|
ID | I-001、I-002… | クローズしても番号は再利用しない |
区分 | 判断が必要(課題) | この欄がフィルターになる。作業ならTODOへ移す |
決めること | 「〜か、〜か」の形で | 「移行方式について」は不可。選択肢が見える形で書く |
決める人 | 決定権を持つ個人 | PMではなく、その判断ができる人。ここがこの表の要点 |
期限 | 必ず日付 | 「随時」「TBD」「順次」は禁止 |
クローズ条件 | 何をもって完了とするか | 「方式を決定し、○/○の会議の議事録に記載する」の形 |
判断に必要な材料 | 決めるために揃える情報 | この欄が最も効く。揃っていない材料はTODOに落とす |
決まらない場合の影響 | 計画のどこが止まるか、何日遅れるか | 日数で書く。「重要」では動きません |
起票者・起票日 | 誰が、いつ | 期限を延ばすときの相談先になる |
最終更新日 | 最後に動いた日 | この列で形骸化が分かる(30日以上更新なしの件数を数える) |
状態 | 未着手/材料収集中/判断待ち/完了 | 「対応中」だけにしない。どの段階かが分かるようにする |
「判断に必要な材料」の欄が、この様式でいちばん効きます。この欄を埋めようとすると、「決められないのは迷っているからではなく、材料が揃っていないからだ」と気づきます。そうなれば、次にやることは「決める」ではなく「材料を3つ集める」になり、TODOとして担当と期限を割り当てられます。
■ 記入例:クラウドリーフ SaaS基盤刷新
3,400テナント・28TBのデータを移行するプロジェクトです。作り直し前は186件が載っていましたが、仕分けた結果、課題管理表に残したのは58件でした。
課題票(1件の詳細)
項目 | 記載内容 |
|---|---|
ID | I-034 |
区分 | 判断が必要(課題) |
決めること | 3,400テナントの移行を、1回で行うか、200社ずつ17回に分けるか |
決める人 | 技術部長 |
期限 | 2025/6/27(金) |
クローズ条件 | 方式を決定し、6/27の技術会議の議事録に記載する |
判断に必要な材料 | ① 一括方式の停止時間の実測値 ② 分割方式の追加費用 ③ 顧客への告知に必要な期間 |
決まらない場合の影響 | 移行リハーサルの着手が遅れる。1日遅れるごとに全体が1日遅れる |
起票者・起票日 | PM/2025/4/8 |
最終更新日 | 2025/6/20 |
状態 | 判断待ち |
課題一覧(抜粋)
ID | 決めること | 決める人 | 期限 | 状態 |
|---|---|---|---|---|
I-034 | 3,400テナントの移行を、1回で行うか200社ずつ17回に分けるか | 技術部長 | 2025/6/27 | 完了 |
I-041 | 移行時のサービス停止を、平日深夜に行うか土曜早朝に行うか | カスタマーサクセス部長 | 2025/7/25 | 完了 |
I-048 | 旧基盤の停止時期を、切替完了の何か月後にするか | 技術部長 | 2025/9/12 | 完了 |
I-055 | 移行に失敗した場合、どの時点まで戻すか(切戻しの基準) | 技術部長・CTO | 2025/10/10 | 完了 |
I-063 | 移行対象外とする休眠テナント412社の扱い | 営業部長 | 2025/11/14 | 完了 |
件名がすべて「〜か、〜か」または「〜をどうするか」の形になっています。「移行方式について」のような名詞止めは使いません。決めることが書いていない課題は、決まりません。
58件に「判断に必要な材料」を書いてみた結果
状態 | 件数 | 次にやること |
|---|---|---|
材料は揃っている。あとは決めるだけ | 19件 | 期限を切って、決める場に出す |
材料が足りない | 31件 | 足りない材料をTODOに起こす(のべ68件) |
そもそも決める必要がなかった | 8件 | クローズ |
半分以上が材料不足でした。決まらない課題の多くは、決断力の問題ではありません。この見立てができると、「なぜ決まらないんですか」ではなく「何が分かれば決まりますか」と聞けるようになります。
■ 運用ルール
課題管理表には「判断が必要なもの」だけを載せる。作業はTODOへ、決まったことは決定記録へ
件名は「〜か、〜か」の形で書く。名詞止めは禁止
決める人は、決められる権限のある個人にする。PMや「情報システム部」は不可
期限は必ず日付。「随時」「TBD」「順次」は使いません
期限を延ばすときは、影響日数を書く。「6/27→7/11(全体に+3日)」
週次会議では、期限が今週・来週のものだけを見る。全件レビューをやめます
月初に「30日以上更新なし」の件数を数える。オープン件数の3割を超えたら、仕分けをやり直します
7番目が、形骸化を防ぐための数字です。オープン件数を減らそうとすると、無理にクローズするようになります。測るべきは「触られていない件数」です。
■ 活用シーン
場面 | 使い方 |
|---|---|
週次の進捗会議 | 期限が今週・来週の課題だけを扱う。1件に3分かけられる |
判断が止まっているとき | 「判断に必要な材料」の欄を見る。揃っていなければTODOに落とす |
エスカレーションするとき | 「決まらない場合の影響」を日数で示す |
月初の棚卸し | 30日以上更新なしの行を抽出し、閉じるか動かすかを決める |
フェーズの振り返り | 課題の平均滞留日数を出し、意思決定の速さを測る |
引き継ぎ | オープンの課題一覧を渡すだけで、未解決の論点が伝わる |
■ よくある失敗と直し方
失敗 | 何が起きるか | 直し方 |
|---|---|---|
課題・作業・決定記録を1つの表に混ぜる | 件数が膨らみ、どれも追えなくなる | 起票のときに、4つの帳票のどれかに振り分ける |
件名が「〜について」 | 何を決めればよいか分からず、放置される | 「〜か、〜か」の形に書き換える |
担当がPM | 決める権限がないので進まない | 決められる人の名前に書き換える |
期限が「随時」 | 永遠に残る | 必ず日付にする。分からなければ仮の日付を入れる |
クローズ条件がない | 何をもって完了か分からず、閉じられない | 「○○を決定し、議事録に記載する」の形で書く |
毎週、全件をレビューする | 時間が足りず、判断が必要な件に時間を割けない | 期限が今週・来週のものだけに絞る |
オープン件数を減らそうとする | 無理にクローズし、問題が別の形で出てくる | 測るのは「30日以上更新なし」の件数にする |
■ 導入効果
項目 | 作り直し前 | 作り直し後(8か月平均) |
|---|---|---|
オープン件数 | 112件 | 21件 |
30日以上未更新 | 74件(66%) | 2.5件 |
期限切れ | 58件 | 3件 |
担当がPMのもの | 41件 | 4件 |
平均滞留日数 | 47日 | 12日 |
週次会議での課題レビュー | 45分 | 20分 |
オープン件数が112件から21件に減っていますが、これは課題を解決したからではなく、仕分けたからです。186件のうち84件は作業だったのでTODOへ、44件は決まったことだったので決定記録へ移しました。
そして図1で紹介したI-034は、78日間動かなかった課題が、様式を変えて材料を揃えたら7日で決まりました。変えたのは書き方だけです。
最後に1つ。いま使っている課題管理表を開いて、次の3つを数えてみてください。30日以上更新されていない件数、担当が「PM」「PMO」「全員」になっている件数、期限が「随時」になっている件数。この3つがオープン件数の3割を超えていたら、仕分けをやり直す時期です。