会議体一覧(コミュニケーション計画)のテンプレート
会議が多い、長い、そして何も決まらない。プロジェクトが進むにつれて、こうなっていくことがあります。原因のほとんどは、それぞれの会議で何を決めるかを、最初に決めていないことです。
このページでは、会議体一覧(コミュニケーション計画)のテンプレートと、設計の考え方、記入例をまとめます。記入例は、事例集の「リンクスタッフ(架空)の派遣スタッフ管理システム刷新」に当てはめたものです。
■ この帳票が要る場面(背景・よくある課題)
よくある症状 | 本当の原因 |
|---|---|
同じ話が、複数の会議で繰り返される | どの会議で何を決めるかが決まっていない |
会議で決まらず「次回までに検討」が続く | その場に決められる人がいない |
小さな判断まで月次の会議に上がってくる | 現場で決めてよい範囲を決めていない |
逆に、大きな判断が現場で決まってしまう | 上に上げる条件を決めていない |
会議の出席者が多く、発言しない人がいる | 「念のため呼ぶ」を続けた結果 |
報告のためだけの会議がある | 資料を送れば済むことを、会議にしている |
■ このテンプレートの目的
会議ごとに「決めること」を1つに絞る:会議の目的がはっきりします
上に上げる条件を、数字で決める:現場で決めてよい範囲が分かり、判断が速くなります
出席者を必要最小限にする:決める人と、決めるための情報を持つ人だけを呼びます
■ テンプレートの全体像

会議体は、頻度が高いほど扱う範囲が狭く、頻度が低いほど扱う金額が大きくなるように設計します。4層が基本形です。
層 | 会議 | 頻度・時間 | 出席者 | 決めること |
|---|---|---|---|---|
1 | 朝会 | 毎日15分 | チーム内(5〜8名) | 今日やること、詰まっていることの対処 |
2 | 進捗会議 | 週1回30分 | PM+各リーダー(6〜10名) | 今週・来週のTODOと課題、次週の作業割り当て |
3 | 変更管理会議 | 隔週45分 | 課長級+PM(5〜8名) | 変更依頼の判定、課題の対応方針 |
4 | ステアリングコミッティ | 月1回60分 | 本部長級(4〜6名) | 予算、スコープ、稼働日、重大リスク |
小規模な案件なら、1層目と3層目を省いて2つでも構いません。大事なのは層の数ではなく、それぞれの層で何を決め、どこから上に上げるかが決まっていることです。
■ 各項目の説明
列 | 何を書くか | 書き方のコツ |
|---|---|---|
会議名 | 正式名称 | 「定例」「MTG」だけの名前は避ける。何の会議か分かる名前に |
目的 | 決めることか、共有することか | 「決める」会議を優先する。共有だけなら資料配布で足りないかを検討する |
頻度・曜日・時間 | 毎週火曜 10:00-10:30 など | 固定する。毎回調整すると、そのうち開かれなくなる |
出席者(必須) | いないと会議が成立しない人 | ここに書いた人が欠席したら、会議を延期するか代理を立てる |
出席者(任意) | 関係する議題があるときだけ | 毎回呼ばない。議題ごとに声をかける |
決めること | この会議で決着させる事項 | 3つまで。多いと1つも決まりません |
上げる条件 | 金額と影響日数の2軸 | 「200万円超、または3営業日超」のように両方書く |
事前に配る資料 | 何を、いつまでに | 「前日17時までに進捗表」など。当日配布は読まれません |
議事録の扱い | 誰が、いつまでに、どこに | 「当日中にプロジェクトフォルダへ」など |
欠席時の扱い | 代理を立てるか、延期か | 必須出席者が欠席したときのルールを決めておく |
「上げる条件」を金額と日数の2軸で書くのが要点です。金額だけだと、金額は小さいが納期に響く変更が素通りします。日数だけだと、日数は短いが高額な変更が素通りします。
■ 記入例:リンクスタッフ 派遣スタッフ管理システム刷新
13か月・196人月のプロジェクトです。途中で週次会議を60分から30分に短縮しています。
会議名 | 頻度・時間 | 必須出席者 | 決めること | 上げる条件 |
|---|---|---|---|---|
朝会 | 毎日 9:15-9:30 | 開発チーム6名 | 今日の作業、詰まっていることの対処 | 15分で解けない/他チームに関わる → 週次へ |
週次進捗会議 | 毎週火 10:00-10:30 | PM、業務リーダー、技術リーダー、ベンダーPL | ① 期限切れTODOの扱い | 200万円超/影響3営業日超 → 変更管理会議へ |
変更管理会議 | 隔週木 15:00-15:45 | 情報システム課長、営業管理課長、経理課長、PM | ① CR票の判定(A〜D) | 1,000万円超/影響10営業日超 → ステコミへ |
ステアリングコミッティ | 月1回 第3水 16:00-17:00 | 管理本部長、営業本部長、情報システム部長、PM | ① 予算の増減 | 承認枠1億8,000万円を超える → 取締役会へ |
ベンダー定例 | 毎週金 14:00-15:00 | PM、ベンダーPL、技術リーダー | ① 成果物の受領判定 | 契約変更が必要 → 変更管理会議へ |
週次進捗会議の時間配分(30分)
議題 | 時間 | やること |
|---|---|---|
前週の振り返り | 4分 | マイルストーンの見通しに変化があるかだけ確認する |
TODOの確認 | 8分 | 期限切れと今週期限のものだけ。全件レビューはしない |
課題の議論 | 12分 | 期限が今週・来週の課題を扱う。ここがこの会議の本体 |
リスクの監視数字 | 3分 | 監視している数字を読み上げるだけ。議論はしない |
連絡事項 | 3分 | ― |
この配分の要点は、課題の議論に最も長い12分を割いていることです。TODOの確認は、置き場所を一本化して事前に状況が分かるようにしたことで、32分から8分に縮んでいます。減らすべきは確認の時間であって、議論の時間ではありません。
■ 運用ルール
「決めること」は1会議につき3つまで。多いと1つも決まりません
上げる条件は、金額と影響日数の2軸で書く
必須出席者が欠席するときは、代理を立てるか延期する。「後で共有」にすると、その場で決まりません
資料は前日までに配る。当日配布の資料では、質問が出ません
議事録は当日中に出す。決まったことと、次にやること(担当・期限つき)だけでよい
「共有のためだけの会議」は作らない。資料配布で足りないかを必ず検討します
3か月に1回、会議体そのものを見直す。不要になった会議はやめ、時間配分を測り直します
7番目を実行すると、たいてい1つか2つの会議が不要になります。フェーズが変われば、必要な会議も変わるからです。いったん作った会議は、意識して止めないと残り続けます。
■ 活用シーン
場面 | 使い方 |
|---|---|
キックオフ | 会議体一覧を配り、それぞれの目的と出席者を説明する |
判断が要る場面 | 金額と影響日数から、どの会議に持っていくかを決める |
会議が長いと感じたとき | 実際の時間配分を計り、この表の想定と比べる |
新メンバーが入ったとき | どの会議に出るか、そこで何が決まるかを1分で説明できる |
フェーズが変わったとき | 会議体を見直す。設計期と稼働準備期では必要な会議が違う |
関係者から「聞いていない」と言われたとき | その情報がどの会議で共有されるはずだったかを確認し、表を直す |
■ よくある失敗と直し方
失敗 | 何が起きるか | 直し方 |
|---|---|---|
「決めること」を書かない | 報告会になり、何も決まらない | 会議ごとに3つまで、決着させる事項を明記する |
上げる条件を決めない | 小さな判断が上に上がり、大きな判断が現場で決まる | 金額と影響日数の2軸で線を引く |
出席者を「念のため」で増やす | 15名を超え、誰も発言しなくなる | 必須と任意を分ける。任意は議題があるときだけ呼ぶ |
全件レビューをする | 確認に時間を取られ、議論の時間がなくなる | 期限が今週・来週のものだけに絞る |
共有だけの会議を作る | 参加者の時間が奪われ、出席率が下がる | 資料配布に切り替える |
会議体を見直さない | フェーズが変わっても同じ会議が残り続ける | 3か月に1回、必要性を点検する |
議事録を数日後に出す | 決まったことが実行されない | 当日中に、決定事項と次のアクションだけを出す |
■ 導入効果
項目 | 会議体を設計しない場合 | 設計した場合 |
|---|---|---|
判断の速さ | どの会議に持っていくか迷い、1〜2週間かかる | 金額と日数から即決できる |
月次会議の議題数 | 小さな判断まで上がり、時間内に終わらない | 大きな判断だけが上がる |
週次会議の時間 | 60分でも足りない | 30分で終わり、課題の議論に12分使える |
出席者の人数 | 「念のため」で15名超 | 必須6〜10名 |
新メンバーの立ち上がり | どの会議に出ればよいか分からない | 表を見れば分かる |
作成の手間 | ― | 初回で1〜2時間。見直しは3か月に1回30分 |
リンクスタッフの案件では、週次会議が60分から30分になりました。参加者14名で30回開催したので、210時間が会議から解放された計算です。ただ、それ以上に大きかったのは、課題の議論に使う12分が、そのまま残ったことでした。短くしたのは確認の時間だけです。
最後に1つ。会議を減らすことが目的ではありません。決めるべきことが、決めるべき場所で決まる状態を作ることが目的です。結果として会議は短くなりますが、順序を逆にして「まず30分にしよう」と始めると、決まらない会議が短くなるだけです。