要員計画(山積み表)のテンプレート
「全体で108人月」という計画は作られても、「6月に何人必要か」という形で整理されていないことがあります。合計が合っていても、月ごとに見ると人が足りない時期がある。それが分かるのが山積み表です。
このページでは、要員計画(山積み表)のテンプレートと、山崩しの考え方、記入例をまとめます。記入例は、事例集の「まなびカレッジ(架空)の受講管理システム刷新」に当てはめたものです。
■ この帳票が要る場面(背景・よくある課題)
よくある症状 | 本当の原因 |
|---|---|
直前になって「人が足りない」と分かる | 月ごとの必要人数を出していなかった |
特定の月だけ全員が残業している | 作業の時期が偏っており、山崩しをしていない |
ベンダーに要員を依頼したが、間に合わなかった | いつ何人必要かを半年前に伝えていなかった |
人が余っている月があるのに、別の月は不足している | 山と谷が見えていない |
増員したのに、進みが速くならない | 足りていなかったのは設計者で、入ったのは開発者だった |
最後の行が重要です。人数だけを合わせても、職種が合っていなければ意味がありません。山積み表は職種別に積み上げて作ります。
■ このテンプレートの目的
月ごと・職種ごとの必要人数を出す:合計ではなく、時期で見ます
確保できる人数と比べ、不足を早く見つける:不足が分かるのが早いほど、打てる手が増えます
山崩しの候補を見つける:動かせる作業を前後にずらして、平準化します
■ テンプレートの全体像

部品 | 形式 | 役割 |
|---|---|---|
① 山積み表(必要人数) | 表(行=職種、列=月) | WBSの工数と日程から、月ごとの必要人数を積み上げる |
② 確保計画(供給人数) | 表(行=職種、列=月) | いつ、何人、どこから確保できるか |
③ 差分表 | 表(①−②) | 不足・余剰が一目で分かる。ここがこの帳票の主役 |
④ 山崩しの記録 | 表 | どの作業をどこへ動かしたか |
■ 各項目の説明
列・行 | 何を書くか | 書き方のコツ |
|---|---|---|
職種 | PM・管理/業務/設計/開発/テスト/インフラ など | 人が入れ替えられない単位で分ける。「設計」と「開発」を分けないと、増員しても効きません |
必要人数(月別) | その月に必要な人数 | WBSの工数 ÷ 月の稼働日数から計算する。感覚で置かない |
確保済み | 名前が決まっている人数 | 「調整中」は確保済みに入れない |
確保見込み | 交渉中の人数と、確定する時期 | 確定時期を必ず書く。「7月着任予定・6/20までに確定」 |
差分 | 必要 − 確保済み | この列だけ色をつける。ここを見るための表です |
不足の理由 | なぜ埋まらないか | 「調達の見込みがない」のか「予算がない」のかで、打つ手が変わる |
対応 | ①増やす/②動かす/③減らす のどれか | 3つのうちどれで対応するかを明記する |
必要人数の出し方は次のとおりです。難しくありません。
WBSの末端作業に、開始日・終了日・工数(人日)が入っていることを確認する
各作業の工数を、その作業の期間の日数で割る(=1日あたりの必要人数)
月ごとに、その月にかかる作業の1日あたり人数を合計する
職種別に集計する
WBSの末端が1人月以内に分かれていれば、この計算は自動でできます。山積み表が作れないときは、たいていWBSの粒度が粗いことが原因です。
■ 記入例:まなびカレッジ 受講管理システム刷新
11か月・108人月のプロジェクトです。着手時点の山積みと、確保計画を並べます。
① 必要人数(職種別・月別)
職種 | 4月 | 5月 | 6月 | 7月 | 8月 | 9月 | 10月 | 11月 | 12月 | 1月 | 2月 | 計 |
|---|---|---|---|---|---|---|---|---|---|---|---|---|
PM・管理 | 1 | 1 | 1 | 1 | 1 | 1 | 1 | 1 | 1 | 1 | 1 | 11 |
業務 | 2 | 3 | 3 | 3 | 3 | 2 | 2 | 2 | 2 | 3 | 3 | 28 |
設計 | 2 | 3 | 5 | 5 | 4 | 2 | 1 | 0 | 0 | 0 | 0 | 22 |
開発 | 0 | 0 | 0 | 3 | 5 | 8 | 8 | 7 | 5 | 2 | 0 | 38 |
テスト | 0 | 0 | 0 | 0 | 0 | 0 | 0 | 1 | 2 | 3 | 3 | 9 |
合計 | 5 | 7 | 9 | 12 | 13 | 13 | 12 | 11 | 10 | 9 | 7 | 108 |
③ 差分表(必要 − 確保済み)
月 | 必要 | 確保済み | 差分 | 不足の理由 | 対応 |
|---|---|---|---|---|---|
2025年6月 | 9 | 6 | −3 | ベンダーの設計要員2名の着任が7月・8月にずれる | ②作業を動かす |
2025年7月 | 12 | 8 | −4 | 同上 | ②作業を動かす |
2025年8月 | 13 | 11 | −2 | 同上 | ②作業を動かす |
2025年9月以降 | ― | ― | 0以上 | ― | ― |
3か月累計 | 34 | 25 | −9人月 | ― | ― |
この案件では、不足していたのが設計要員だったことが決定的でした。開発要員を増やしても解決しません。そこで「足りない設計の手を、どの作業に当てないと納期に響くのか」を調べ、クリティカルパス上にあった学習基盤の連携設計を、I/F仕様の先行確定によってパスから外しています。
④ 山崩しの記録
動かした作業 | 元の時期 | 新しい時期 | 動かせた理由 | 効果 |
|---|---|---|---|---|
連携I/F仕様の確定 | 7月(基本設計の後) | 6月(要件定義の直後) | 受講管理の内部設計を待たずに決められる項目だった | クリティカルパスから12営業日を短縮 |
学習基盤 連携設計 | 8月〜9月 | 7月〜9月に分散 | クリティカルパス外に移ったため、期間を延ばせた | ピーク時の設計要員を1名減らせた |
受入テストの準備 | 1月 | 12月に前倒し | 業務部門の手が空く時期だった | 1月の業務要員のピークを緩和 |
■ 山崩しの3つの手
手 | 内容 | 向いている場面 | 注意点 |
|---|---|---|---|
① 人を増やす | 要員を追加する | 不足が判明したのが3か月以上前 | すぐには集まらない。立ち上がりに1か月かかる |
② 作業を動かす | 前倒し・後ろ倒しで平準化する | まず最初に検討する | クリティカルパス上の作業は動かせない |
③ 作業を減らす | スコープを削る、または第2期へ送る | ①②で埋まらないとき | 合意が必要。勝手に減らさない |
②から検討するのは、総量を変えずに済むからです。①は費用が増え、③はスコープが変わります。②は時期を変えるだけなので、影響が最も小さくて済みます。
ただし、動かせるのはクリティカルパス外の作業だけです。山崩しの前に、どの作業に余裕(フロート)があるかを確認してください。余裕のない作業を動かすと、そのまま納期が延びます。
■ 運用ルール
着手前に必ず作る。要員の調達には時間がかかるので、早いほど手が打てます
職種は、人を入れ替えられない単位で分ける。設計と開発を一緒にしない
「調整中」を確保済みに入れない。名前が決まって初めて確保済みです
月次で更新する。WBSの実績と、確保状況の両方を反映します
不足が出たら、対応を①②③のどれかで明記する。「様子を見る」は対応ではありません
ピークが確保可能人数の1.3倍を超えたら、計画そのものを疑う。山崩しで埋まる範囲を超えています
ベンダーには、必要人数を6か月前に伝える。直前の依頼は、たいてい間に合いません
■ 活用シーン
場面 | 使い方 |
|---|---|
計画の立ち上げ | 必要人数と確保計画を突き合わせ、不足の時期を特定する |
ベンダーへの要員依頼 | 職種別・月別の必要人数を渡す。「6月から設計3名」と具体的に |
業務部門への協力依頼 | 「1月に業務3名を延べ36日」と、時期と量を示して依頼する |
増員の判断 | 不足が何人月かを数字で出し、費用と効果を比べる |
スケジュールを変えたいと言われたとき | 山積みがどう変わるかを示す。「2か月後ろ倒しにすると、12月の必要人数が16名になる」 |
月次の状況報告 | 差分表の行だけを見せる。不足がなければ報告は1行で済む |
■ よくある失敗と直し方
失敗 | 何が起きるか | 直し方 |
|---|---|---|
合計人月だけで計画する | 特定の月に人が足りないことに気づかない | 月ごとに割る。WBSの日程から自動計算できる |
職種を分けない | 増員しても効かない(必要なのは設計者、入ったのは開発者) | 入れ替えられない単位で分ける |
「調整中」を確保済みに入れる | 直前に「やはり出せない」と言われる | 確保済みは名前が決まっている人だけ |
不足を見つけて、いきなり増員を頼む | 費用が増え、しかも間に合わない | まず②作業を動かせないかを検討する |
クリティカルパス上の作業を動かす | そのぶん納期が延びる | 山崩しの前に、余裕のある作業を特定する |
作って以降、更新しない | 実態とずれ、使われなくなる | 月次で更新する。WBSと連動させれば手間は小さい |
■ 導入効果
項目 | 山積み表がない場合 | 山積み表がある場合 |
|---|---|---|
不足に気づく時期 | その月に入ってから | 数か月前(確保計画との突き合わせ時点) |
打てる手 | 残業か、納期の延長 | 作業の前後移動、早めの増員依頼、スコープ調整 |
増員の効き方 | 職種が合わず、効かないことがある | 必要な職種を指定して依頼できる |
他部門への依頼 | 「協力をお願いします」 | 「1月に3名を延べ36日」と具体的に依頼できる |
作成の手間 | ― | WBSがあれば初回30分。月次の更新は10分 |
まなびカレッジの案件では、6月の時点で9人月の不足が数字で見えていました。そのため「全体を2か月後ろ倒しにする」という判断を避け、作業の順番を組み替えるという別の手を検討できています。不足が「なんとなく足りない」ではなく「6月に3名、7月に4名、8月に2名」と分かっていたから、どこに手を打てばよいかが絞れました。
最後に1つ。山積み表は、人を増やすための表ではありません。いつ、どの職種が、どれだけ足りないかを早く知るための表です。早く知れば、増やす以外の手が使えます。