課題管理表を実際に回す運用
課題管理表を作っていないプロジェクトは、ほとんどありません。しかし、実際に機能している課題管理表は、それほど多くありません。
よくあるのは、項目数だけが増えていき、状態が何か月も変わらない行が並ぶ状態です。会議では上から順に読み上げるものの、「まだ対応中です」で終わる。やがて誰も開かなくなります。
■ 6つの列があれば足りる
列を増やすほど記入の負担が増え、更新されなくなります。必要なのは次の6つです。

多くの課題管理表に欠けているのが、右の2列です。
「放置するとどうなるか」がないと、優先順位を判断できません。20件の課題が並んでいても、どれから手を付けるべきかが分からず、結局は声の大きい人の案件から処理されます。影響が書いてあれば、順番は自然に決まります。
「次の一手」がないと、会議のたびに同じ議論を繰り返します。「これはどうなっていますか」「まだです」「では引き続きお願いします」の往復です。次にやることと、いつまでにやるかが書いてあれば、確認は10秒で終わります。
■ 担当は必ず一人にする
解決責任者の欄に「関係者一同」「開発チーム」と書かれている行は、実質的に誰も動きません。
実作業が複数人にまたがる場合でも、進捗を報告する責任を持つ人を一人決めます。その人が全部やるという意味ではなく、その人に聞けば状況が分かる、という状態にするためです。
PM自身が担当になる行も当然あります。むしろ、他部署との調整や決裁の取り付けは、PMが引き受けるべき課題です。「PMの名前が一つもない課題管理表」は、丸投げになっていないか疑ってみる価値があります。
■ 起票のハードルを下げる
課題が挙がってこないプロジェクトは、うまくいっているのではなく、起票しにくいだけのことが多くあります。
誰でも書ける状態にする:PMを経由しないと登録できない運用にしない
雑に書いてよいと伝える:体裁を整えるのはPMの仕事。まず出してもらう
重複を歓迎する:「もう誰か書いているかも」と思われると、誰も書かなくなる
起票した人に感謝する:小さいことだが、これが最も効く
■ 棚卸しの頻度
課題管理表は、放っておくと必ず溜まります。定期的な棚卸しを運用に組み込みます。
週次:期限切れの行と、状態が先週から変わっていない行だけを見る
月次:全件を上から確認し、すでに意味を失っている行をクローズする
フェーズの節目:次のフェーズに持ち越す課題を選別する
月次の棚卸しでは、思い切ってクローズすることが大切です。状況が変わって不要になった課題、いつの間にか解決していた課題は、意外と多くあります。生きている行だけが残っている表のほうが、見てもらえます。
■ エスカレーションの基準を決めておく
課題の中には、プロジェクト内では解決できないものがあります。他部署の協力が必要、追加予算が必要、方針そのものの変更が必要、といった場合です。
こうした課題をPMが抱え続けると、解決しないまま期限だけが過ぎます。あらかじめ基準を決めておきます。
同じ状態が2週間続いたら、上位に上げる
金額や日程への影響が一定を超えるものは、発生時点で上げる
他部署の判断が必要なものは、依頼して1週間動かなければ上げる
基準があると、エスカレーションが「PMの判断」ではなく「ルール」になります。上げやすくなるだけでなく、上げられた側も身構えずに済みます。
■ ツールをどうするか
Excelでも課題管理ツールでも構いませんが、選ぶ基準は一つです。関係者全員が、見たいときに最新版を見られるか。
メールで添付ファイルを配る運用だけは避けます。各自の手元で版が分かれ、会議で「私が持っているものと違う」が起きます。共有の場所に1つだけ置き、そこを見るというルールにします。
■ チェックリスト
「放置するとどうなるか」の列があるか
「次の一手」の列があるか
担当者が一人に特定されているか
期限が全件埋まっているか
PM自身が担当の行があるか
週次と月次の棚卸しを回しているか
エスカレーションの基準を決めたか
最新版が一か所にあるか
課題管理表は、作った時点では何の価値もありません。回して初めて、問題が見えるようになります。項目を増やすより、更新され続ける状態を保つほうが、ずっと難しく、ずっと重要です。