「順調です」しか出てこない進捗報告への対処
毎週の進捗会議で、全員が「順調です」と答える。ところが納期の2週間前になって、複数の作業がまったく終わっていないことが分かる。
このとき、報告した人が嘘をついていたわけではないことがほとんどです。本人も「順調だ」と思っていたか、あるいは言える状態になかったかのどちらかです。原因を取り違えると、対策も外れます。
■ なぜ「順調です」になるのか
理由は4つに整理できます。
聞き方が漠然としている:「進捗はどうですか」と聞かれれば、「順調です」が最も無難な答えになる
何をもって順調かの基準がない:計画との差分が見えていないので、本人も判断できない
言うと詰められる:遅れを報告した人が過去に責められているのを見ていれば、誰も言わなくなる
まだ取り戻せると思っている:「来週がんばれば間に合う」という見込みが、何週も続く
一つ目と二つ目はPMの側の問題です。三つ目は場の問題です。四つ目は人間の性質に近く、仕組みで受け止めるしかありません。
■ まず聞き方を変える
最も手軽で、効果が出るのが早いのがこれです。

共通しているのは、相手を評価する質問をやめていることです。「順調ですか」は、担当者の働きぶりを問う響きを持ちます。一方「いま何を待っていますか」は、状況を問う質問です。後者のほうが、本人にとって答えるコストが低くなります。
とくに「あと何日あれば確実に終わりますか」は使い勝手がよい質問です。「間に合いますか」に対しては、多くの人が「はい」と答えてしまいます。しかし日数で答えてもらうと、本人の中にある不安が数字になって出てきます。
■ 次に、基準を作る
聞き方を変えても、本人が自分の状況を把握できていなければ答えは出ません。
有効なのは、作業を成果物の単位まで割っておくことです。「設計書の作成」という粒度では、進み具合は感覚でしか答えられません。「A機能の画面設計書」「B機能の画面設計書」と分かれていれば、終わったか終わっていないかで答えられます。
進捗率が使いにくいのは、この粒度の問題であることが大半です。作業が大きすぎると、80%という数字に根拠を持たせようがありません。
■ 言える場を作る
三つ目の原因、つまり「言うと詰められる」場合は、聞き方を変えても効きません。
できることは限られますが、確実に効くものがあります。
PMが自分の遅れを先に言う:「私のほうで顧客への確認が2日遅れています」と最初に出す。遅れを言ってよい場だと態度で示す
報告に対して「ありがとう」から入る:遅れの報告を受けたとき、最初に出す言葉を決めておく。「なぜ」から入ると、次から報告が来なくなる
原因を人に求めない:「誰がやったか」ではなく「どういう状況だったら防げたか」を問う
個別に聞く場を持つ:全員の前では言いにくいことがある。15分の1対1を週1回置くだけで、出てくる情報が変わる
四つ目の「まだ取り戻せる」については、本人の見込みを否定しても意味がありません。代わりに、取り戻せなかった場合の相談を先にしておくのが現実的です。「もし来週も終わらなかったら、どうしましょうか」と聞いておけば、次の週に切り出しやすくなります。
■ 報告を待たずに見に行く
報告の精度を上げる努力と並行して、報告に頼らない情報源を持っておきます。
課題管理表の更新が止まっていないか
成果物のファイルが実際に増えているか
チャットのやり取りが特定の話題で滞っていないか
その人の発言量が急に減っていないか
監視するという意味ではありません。困っている人は、たいてい静かになります。会議で「順調です」と言った人が、その週ずっと静かだったなら、声をかける理由としては十分です。
■ それでも遅れが出たとき
報告が遅れたこと自体を責めないのが原則です。責めれば、次はもっと遅くなります。
代わりに確認するのは、仕組みのほうです。「どの時点で、まずいと感じましたか」と聞き、その時点で報告が上がる仕組みになっていたかを見ます。たいていは、報告の場が週に一度しかなかった、あるいは報告する相手が決まっていなかった、といった理由が出てきます。そこを直せば、次は早く上がってきます。
■ チェックリスト
質問を「順調か」から「何が終わっていないか」に変えたか
作業が、終わったかどうかで答えられる粒度になっているか
遅れの報告に、まず感謝で応じているか
1対1で話す場を持っているか
報告以外の情報源(管理表・成果物・発言量)を見ているか
遅れたとき、人ではなく仕組みを直しているか
「順調です」は、情報ではなく合図です。何かが見えていないか、言いにくいかのどちらかを示しています。その合図を受け取ったときに、詰めるのではなく聞き方を変えられるかどうかが、分かれ目になります。