予測型・適応型・ハイブリッドの使い分け
「次の案件はアジャイルでいきます」という方針が、うまくいかないことがあります。手法を変えたのに、契約は一括請負、検収は最後に一度きり、要件は着手前に確定させることを求められる。中身が予測型のまま、名前だけ変わった状態です。
開発アプローチの選択は、好みや流行の問題ではありません。要件の固まり具合と、変更を受け入れられる契約になっているかで決まります。
■ 3つの型

予測型は、作るものを先に決め、工程を一度ずつ通します。計画が立てやすく、進捗も測りやすい一方、途中の変更に弱く、価値が届くのは最後になります。
適応型は、短い反復を繰り返し、毎回動くものを作ります。変更を前提とした進め方で、利用者の反応を見ながら方向を修正できます。一方、全体でいくらかかるかを先に確定させることは困難です。
ハイブリッドは、工程ごとに型を使い分けます。要件定義と移行は予測型、開発は反復型、といった形です。日本のSI案件では、実際にはこの形になっていることが多くあります。
■ どう選ぶか
判断材料は3つあります。
要件がどれだけ固まっているか:法規制対応や既存システムの移植のように、作るものが明確なら予測型。新規サービスのように、使ってみないと分からない部分が多いなら適応型
変更の頻度と影響:変更がほとんど出ない領域に反復を持ち込んでも、管理の手間が増えるだけ。逆に、変更が続く領域を予測型で進めると、変更管理の手続きに追われる
契約と検収の形:ここが決定的。一括請負で、検収が最後に一度だけなら、実態は予測型にならざるを得ない
3つ目を先に確認するのが実務的です。契約が変えられないのであれば、手法だけを変えても現場に無理が出ます。逆に、契約を工程ごとに分ける(多段階契約)ことができれば、後続工程で適応型を採る余地が生まれます。
■ PMの役割はどう変わるか
型によって、PMがやることの重心が移ります。
予測型:計画を作り、差異を監視し、変更を管理する。WBS、クリティカルパス、EVMといった道具が中心になる
適応型:優先順位づけを支援し、障害を取り除き、チームが決められる状態を作る。管理より環境整備の比重が高い
ハイブリッド:両方。加えて、型の違う部分をつなぐ調整が加わる
適応型では「PMは不要」と言われることがありますが、正確には役割が変わるだけです。スコープの合意、ステークホルダーとの調整、契約と予算の管理、リスクへの対応は、型が変わっても誰かが担う必要があります。
■ ハイブリッドを設計するときの要点
実務で最も多いのがハイブリッドなので、組み立て方の要点を挙げます。
境界を明確にする:どこまでが予測型で、どこからが反復かを文書で決める。曖昧だと、反復側にも「計画どおり」を求められる
反復の成果を検収にどうつなぐか決める:反復ごとの成果を部分検収できるのか、最後にまとめてなのか。契約と整合させる
進捗の測り方を分ける:予測型の部分はWBS消化率、反復部分は完了した機能数など、それぞれに合った指標を使う
報告の様式を揃える:経営層への報告は一本化する。型が違うからといって、報告が二種類になると読まれなくなる
■ 選んだ後に確認すること
型を決めたら、周辺が揃っているかを点検します。
契約形態が、選んだ型と矛盾していないか
発注者側に、意思決定できる人が継続的に関与できるか(適応型では特に重要)
チームがその型の経験を持っているか。ないなら、支援や教育を計画に含めたか
組織の承認プロセスが、その型の速度に対応できるか
最後の項目は見落とされがちです。2週間ごとに成果を出す体制を組んでも、承認に3週間かかる組織では回りません。手法はチームだけでなく、その周りの仕組みとセットで機能します。
■ チェックリスト
要件の固まり具合を評価したか
契約と検収の形を先に確認したか
ハイブリッドの場合、境界を文書化したか
進捗指標を型ごとに定めたか
発注者側の意思決定体制が確保されているか
組織の承認速度が型に合っているか
どの型にも向き不向きがあり、優劣はありません。重要なのは、選んだ型と、契約・組織・チームの実態が噛み合っているかです。噛み合っていない状態は、どの型を選んでも同じように苦しくなります。