未来PM
PM基本知識

スケジュール管理とクリティカルパス

スケジュールは「引く」ものではなく、「出てくる」ものです。作業を洗い出し、順序と期間を決めていけば、全体の日程は結果として決まります。逆に、先に線を引いてから作業を当てはめたものは計画ではなく、願望に近いものになります。

スケジュール管理とは、作業を時間軸に並べ、実績を追い、ずれに手を打つ一連の活動です。進捗管理が「いまどうなっているか」を扱うのに対し、スケジュール管理は「そもそも、どういう順番と期間で進むはずだったか」を決める側にあたります。この土台がないと、進捗を測る基準そのものが存在しないことになります。


■ スケジュールは5つの段階でできあがる

スケジュール作成の5つの段階を示した図

出発点はWBSです。WBSがないまま順序や期間の話を始めると、作業の抜けがそのまま日程の抜けになります。スケジュールは、スコープが固まった後にしか作れません。


■ 作業の依存関係を整理する

順序を決めるとき、作業同士のつながりには4つの型があります。

  • FS(終了-開始):Aが終わらないとBが始められない。実務のほとんどはこれ

  • SS(開始-開始):Aが始まればBも始められる(設計と並行してテスト計画を書く、など)

  • FF(終了-終了):Aが終わらないとBも終われない

  • SF(開始-終了):新旧システムの切替など、限られた場面で使う

あわせて、リード(前倒しできる日数)とラグ(待たなければならない日数)を押さえます。とくにラグは見落とされがちです。承認待ち、機器の納品待ち、他部署の作業待ちは、誰も作業していないのに日程を消費します。ここを日程に組み込んでいないスケジュールは、開始直後から遅れ始めます。


■ 期間見積りで注意すること

  • 工数と期間を混同しない:10人日の作業は、1人でやれば10日、2人でやれば5日とは限りません。分担できない作業は、人を増やしても縮みません

  • 各作業に個別のバッファを持たせない:安全余裕を作業ごとに埋め込むと、「まだ余裕がある」と着手が遅れ(学生症候群)、余裕のぶんだけ時間を使い切ります(パーキンソンの法則)

  • バッファは全体で1か所にまとめる:各作業は現実的な期間で見積もり、余裕はプロジェクト全体の後ろに集約して管理します


■ 期間見積りの手法

代表的なものが3つあります。

  • 類推見積り:過去の似た案件を基に見積もる。早く出せるが精度は粗い。初期段階向け

  • 係数見積り:規模(画面数・帳票数など)に単価を掛ける。根拠を示しやすく、交渉の場で使いやすい

  • 三点見積り:楽観値・最可能値・悲観値から算出する。(楽観+4×最可能+悲観)÷6で期待値を出す方法が広く使われる

三点見積りが有効なのは、計算式そのものより、担当者に「最短で何日か」ではなく「うまくいかなかったら何日か」を聞ける点です。悲観値を尋ねることで、その作業に潜むリスクが会話に出てきます。見積りとリスクの洗い出しは、本来ひと続きの作業です。


■ クリティカルパスとは何か

クリティカルパスとは、開始から終了までの経路のうち最も長い経路のことです。この経路上の作業には余裕(フロート)がなく、1日遅れれば全体が1日遅れます。

クリティカルパスを示したネットワーク図

この図では、A→C→E→G→Hの55日がクリティカルパスです。下側のB・D・Fは多少遅れても全体には影響しません。

クリティカルパスを把握しておく価値は、遅れが出たときに現れます。どこに増員するか、どこを短縮するかを判断する際、経路上にない作業をいくら早めても全体は1日も縮みません。限られた人と時間をどこに投じるかを決めるための道具です。


■ ガントチャートとの使い分け

実務で共有に使われるのはガントチャートですが、ガントチャートは「いつ何をやるか」を示すのは得意な一方、「なぜその日程なのか」は示しません。依存関係とクリティカルパスはネットワーク図で押さえ、報告や共有にはガントチャートを使う、という併用が現実的です。


■ 遅れを取り戻す2つの手法

  • ファストトラッキング:本来は順番にやる作業を並行させる。追加コストはかからないが、前工程が固まらないうちに後工程を進めるため、手戻りのリスクが増える

  • クラッシング:残業や増員で資源を投じて短縮する。確実性は高いが、コストが増え、要員追加による教育負荷も発生する

どちらにも代償があります。「どちらを選ぶか」ではなく「どちらの代償を受け入れるか」という判断であり、これはPMが一人で決める話ではありません。影響を数字で示したうえで、決裁者に選んでもらう場面です。


■ マイルストーンの置き方

マイルストーンは日付ではなく、状態で定義します。「6月末 基本設計完了」ではなく、「6月末 基本設計書のレビュー指摘がすべてクローズし、顧客の承認印を得た状態」と書きます。

状態で書くと、達成したかどうかで揉めなくなります。同時に、その状態に至るために何が必要かが逆算でき、直前になって承認プロセスの存在に気づく、といった事態を防げます。


■ スケジュールが崩れる典型パターン

  • マイルストーンに日付しかない:何をもって完了とするかが決まっておらず、曖昧なまま次工程に進む

  • 進捗率が自己申告:「80%です」が何週も続く。成果物の完成有無で測れる粒度まで分解されていないことが原因

  • クリティカルパスを再計算していない:遅れや変更が起きれば、最長経路は移動します。当初の経路を見続けていると、手を打つ場所を間違えます


■ 運用のポイント

スケジュールは作って終わりではありません。最低でも週次で実績を反映し、クリティカルパスを引き直します。

更新の場では、遅れている作業だけを見ないことも大切です。前倒しで終わった作業があれば、その余力を後続に回せます。遅れの報告だけを集める会議は、やがて良い情報が上がってこなくなります。

あわせて、当初のスケジュール(ベースライン)は必ず別に残しておきます。上書きし続けると、「どこで、どれだけずれたのか」が誰にも分からなくなり、次のプロジェクトに知見が残りません。


■ チェックリスト

  • WBSから作業を洗い出したか(日程から逆算していないか)

  • 承認待ち・納品待ちなどのラグを日程に入れたか

  • バッファを各作業に埋め込んでいないか

  • マイルストーンが状態で定義されているか

  • クリティカルパスを毎週引き直しているか

  • ベースラインを別に保存しているか

スケジュールの精度は、線の引き方の巧拙ではなく、その前段のスコープと作業の洗い出しで決まります。線が引けないときは、たいてい作るものが決まっていません。

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