PMBOK第6版の10の知識エリアと49のプロセス
この記事はPMBOKガイド第6版(2017年)の構成にもとづいています。第7版以降は「知識エリア」という分類そのものがなくなっているため、最新版を読む際には章立てが異なる点にご注意ください。版ごとの違いは、別記事「PMBOK第7版と第8版は何が違うのか」で整理しています。
それでも第6版の整理を押さえておく価値はあります。プロジェクトで管理すべき対象を網羅的に並べた一覧として、いまも実務の見取り図として使えるためです。第8版でプロセスの考え方が復活したこともあり、第6版を知っていると理解が早くなります。
■ まず全体像 ― 縦と横で整理されている
第6版は、プロジェクトマネジメントを2つの軸で整理しています。
知識エリア(10個):何を管理するのか。スコープ、コスト、品質といった管理の対象
プロセス群(5個):いつやるのか。立上げ、計画、実行、監視・コントロール、終結という段階
この縦と横が交差したところに、具体的な作業(プロセス)がひとつずつ置かれています。その総数が49です。

表を見ると、計画のプロセスが24個と全体の半分近くを占めています。プロジェクトマネジメントの作業量が、事前の計画に大きく寄っているということです。
■ 5つのプロセス群
先に横軸から押さえます。こちらは時間の流れなので、直感的に理解しやすいはずです。

注意したいのは、この5つが一列に並んで一度ずつ進むわけではない点です。「監視・コントロール」は実行と並行してずっと動き続けますし、ずれが大きければ計画に戻ります。フェーズが複数あるプロジェクトでは、フェーズごとにこの5つを回すことになります。
■ 10の知識エリアと、49のプロセス
ここからが本題です。エリアごとに、何のための領域なのかを述べたうえで、含まれるプロセスの意味を一つずつ説明します。カッコ内は、そのプロセスが属するプロセス群です。
1. プロジェクト統合マネジメント(Project Integration Management) 7プロセス
他の9つの領域をまとめ、全体として矛盾がない状態を保つための領域です。唯一、5つのプロセス群すべてにプロセスを持ちます。
プロジェクト憲章の作成(立上げ):プロジェクトを正式に発足させ、目的・大枠の予算・PMの権限を文書にする
プロジェクトマネジメント計画書の作成(計画):各領域の計画を1つの文書に束ね、全体として整合させる
プロジェクト作業の指揮・マネジメント(実行):計画にそって作業を進め、成果物を作る
プロジェクト知識のマネジメント(実行):進める中で得た知見を集め、今後に活かせる形で残す
プロジェクト作業の監視・コントロール(監視):実績を計画と突き合わせ、全体の健全性を確認する
統合変更管理(監視):変更の要求を受け付け、影響を評価し、承認・却下を決める
プロジェクトやフェーズの終結(終結):成果物の引き渡しと事務手続きを済ませ、正式に閉じる
2. プロジェクト・スコープ・マネジメント(Project Scope Management) 6プロセス
「何を作るか、何を作らないか」を決めて守る領域です。ここが曖昧だと、他のすべての計画が根拠を失います。
スコープ・マネジメントの計画(計画):スコープの決め方・守り方そのもののルールを決める
要求事項の収集(計画):関係者から「何が必要か」を聞き取り、文書化する
スコープの定義(計画):要求を整理し、含むもの・含まないものを記述書にまとめる
WBSの作成(計画):スコープを成果物の単位に階層分解し、管理できる大きさにする
スコープの妥当性確認(監視):完成した成果物を発注者に確認してもらい、正式に受け入れてもらう
スコープのコントロール(監視):範囲が勝手に膨らんでいないかを監視し、ずれを正す
3. プロジェクト・スケジュール・マネジメント(Project Schedule Management) 6プロセス
いつ終わるのかを見通し、遅れに手を打つための領域です。第5版までは「タイム・マネジメント」と呼ばれていました。
スケジュール・マネジメントの計画(計画):日程の立て方・更新の頻度・使うツールを決める
アクティビティの定義(計画):WBSの最小単位を、実際に着手できる作業まで割る
アクティビティの順序設定(計画):どの作業が終わらないと次に進めないか、前後関係を決める
アクティビティ所要期間の見積り(計画):各作業に必要な日数を見積もる
スケジュールの作成(計画):順序と期間をつなぎ、全体の日程表に落とす
スケジュールのコントロール(監視):実績を反映し、遅れがあれば手を打つ
4. プロジェクト・コスト・マネジメント(Project Cost Management) 4プロセス
いくらかかるのかを見積もり、予算の中に収めるための領域です。
コスト・マネジメントの計画(計画):費用の見積り方・管理の単位・報告の様式を決める
コストの見積り(計画):各作業に必要な費用を算出する
予算の設定(計画):見積りを積み上げ、時間軸に沿った予算配分を決める
コストのコントロール(監視):実際の支出を予算と比べ、超過の兆しに対応する
5. プロジェクト品質マネジメント(Project Quality Management) 3プロセス
成果物が要求を満たしている状態を作る領域です。「高機能にする」ことではなく「決めたとおりである」ことを目指します。
品質マネジメントの計画(計画):どの品質基準を適用し、どう確認するかを決める
品質のマネジメント(実行):決めた手順が守られているかを見て、作り方そのものを改善する(QA=品質保証)
品質のコントロール(監視):出来上がった成果物を検査し、基準を満たすか判定する(QC=品質管理)
6. プロジェクト資源マネジメント(Project Resource Management) 6プロセス
人・設備・資材といった資源を確保し、活かす領域です。第6版から、人以外の資源も含む名称になりました。
資源マネジメントの計画(計画):必要な要員と設備、役割分担、調達方法を決める
アクティビティ資源の見積り(計画):各作業に何人・何がどれだけ必要かを見積もる
資源の獲得(実行):実際に要員や設備を確保し、プロジェクトに参加させる
チームの育成(実行):メンバーの能力と連携を高め、チームとして機能する状態にする
チームのマネジメント(実行):稼働状況と成果を把握し、課題や対立に対応する
資源のコントロール(監視):資源が計画どおり使えているかを監視し、不足に対応する
7. プロジェクト・コミュニケーション・マネジメント(Project Communications Management) 3プロセス
必要な情報が、必要な人に、必要なときに届く状態を作る領域です。
コミュニケーション・マネジメントの計画(計画):誰に・何を・いつ・どの手段で伝えるかを決める
コミュニケーションのマネジメント(実行):計画にそって情報を作成・配布・保管する
コミュニケーションの監視(監視):情報が実際に伝わっているかを確認し、やり方を調整する
8. プロジェクト・リスク・マネジメント(Project Risk Management) 7プロセス
まだ起きていない出来事に、あらかじめ備える領域です。統合と並んで最多の7プロセスを持ちます。
リスク・マネジメントの計画(計画):リスクの扱い方、評価の尺度、対応の役割分担を決める
リスクの特定(計画):起こりうる出来事を洗い出し、一覧にする
リスクの定性的分析(計画):発生確率と影響度を高中低で評価し、優先順位をつける
リスクの定量的分析(計画):重要なリスクについて、金額や日数への影響を数値で分析する
リスク対応の計画(計画):回避・軽減・転嫁・受容のいずれで臨むかを決める
リスク対応策の実行(実行):決めた対応策を実際に実施する
リスクの監視(監視):兆候を見張り、新たなリスクを追加し、対応の効果を確認する
9. プロジェクト調達マネジメント(Project Procurement Management) 3プロセス
外部から購入・委託する部分を扱う領域です。契約の話が中心になります。
調達マネジメントの計画(計画):何を外部に頼むか、契約形態をどうするかを決める
調達の実行(実行):提案を集め、取引先を選定し、契約を結ぶ
調達のコントロール(監視):契約どおりに履行されているかを監視し、必要なら変更・終結の手続きをとる
10. プロジェクト・ステークホルダー・マネジメント(Project Stakeholder Management) 4プロセス
プロジェクトに関わる人・影響を受ける人と、どう付き合うかを扱う領域です。第5版から独立した、比較的新しい領域です。
ステークホルダーの特定(立上げ):関係者を洗い出し、影響力と関心度を把握する
ステークホルダー・エンゲージメントの計画(計画):相手ごとに関わり方と情報提供の方針を決める
ステークホルダー・エンゲージメントのマネジメント(実行):実際にやり取りし、期待を調整し、協力を得る
ステークホルダー・エンゲージメントの監視(監視):関係の状態を見直し、関わり方を調整する
■ 覚え方のコツ
49個を丸暗記する必要はありません。次の見方を押さえておくと、必要なときに思い出せます。
ほとんどの領域が「◯◯マネジメントの計画」から始まる:管理のやり方そのものを先に決める、という発想です
立上げは2つだけ:プロジェクト憲章の作成と、ステークホルダーの特定。この2つが出発点です
終結も1つだけ:統合マネジメントの「プロジェクトやフェーズの終結」に集約されています
「コントロール」と「監視」には言い分けがある:介入して正すものがコントロール、見て確認するものが監視です
■ 第7版・第8版との関係
第7版(2021年)では、この10の知識エリアと49のプロセスという記述がなくなりました。代わりに12の原理・原則と8つのパフォーマンス領域が置かれ、進め方は各プロジェクトが状況に応じて組み立てる(テーラリング)という考え方に変わっています。
さらに第8版(英語版2025年、日本語版2026年)では、原理・原則が6つに整理され、パフォーマンス領域が7つに再編されたうえで、プロセスの考え方が復活しました。
つまり第6版の「手順」は否定されたのではなく、一度背景に退いたあと、形を変えて戻ってきたことになります。この記事で扱った49のプロセスは、いまでも「プロジェクトで抜けがちな作業のチェックリスト」として使えます。自分がいま担当しているプロジェクトを当てはめてみて、手をつけていない項目があれば、そこが検討すべき箇所です。