WBS(作業分解構成図)とは?計画の土台をつくる分解の技術
WBSとは
WBS(Work Breakdown Structure:作業分解構成図)は、プロジェクトで作るべき成果物と、そのために必要な作業を、階層的に分解して整理したものです。プロジェクト計画の土台となり、スケジュール、コスト見積もり、要員計画、進捗管理のすべてがWBSを起点に作られます。
WBSは、MECE(モレなく、ダブりなく)とロジックツリー(要素分解ツリー)の考え方を、プロジェクト計画に応用したものです。
WBSの基本構造
1. 販売管理システム刷新
├─ 1.1 要件定義
│ ├─ 1.1.1 現行業務の調査
│ ├─ 1.1.2 要件定義書の作成
│ └─ 1.1.3 要件のレビュー・承認
├─ 1.2 設計
│ ├─ 1.2.1 基本設計書
│ └─ 1.2.2 詳細設計書
├─ 1.3 開発・テスト
├─ 1.4 移行
└─ 1.5 プロジェクトマネジメント最上位:プロジェクト全体
中間レベル:フェーズ、主要な成果物、サブシステムなど
最下位(ワークパッケージ):担当者・期間・コストを見積もり、管理できる単位の作業
各要素には「1.1.2」のようなWBSコードを振り、どの階層のどの作業かを一意に識別できるようにします。
WBSの重要な原則
① 100%ルール
下位の要素をすべて足すと、上位の要素の100%になるように分解します。上位に含まれない作業を下位に入れたり、必要な作業を落としたりしないことが重要です。これはMECEの「モレなく」にあたります。
② 成果物を中心に分解する
「何をするか(作業)」よりも、「何を作るか(成果物)」を基準に分解すると、モレが生じにくく、完了の判断もしやすくなります。
③ 重複させない
同じ作業が複数の要素に含まれないようにします。重複があると、工数やコストを二重に見積もってしまいます。
④ 適切な粒度まで分解する
ワークパッケージの粒度の目安としては、次のようなものがあります。
8/80ルール:1つの作業が8時間以上、80時間以内に収まるようにする
報告期間ルール:1つの作業が、進捗報告の周期(例:1〜2週間)以内で完了するようにする
担当者が明確:一人(または一チーム)が責任を持てる単位にする
分解の切り口
切り口 | 例 | 向いているプロジェクト |
|---|---|---|
フェーズ別 | 要件定義 → 設計 → 開発 → テスト → 移行 | ウォーターフォール型のシステム開発 |
成果物別 | 販売管理機能、在庫管理機能、帳票、インフラ | 成果物の構成が明確なプロジェクト |
組織・拠点別 | 本社、東日本拠点、西日本拠点 | 複数拠点への展開プロジェクト |
実務では、第1階層をフェーズ別、第2階層を成果物別にするなど、組み合わせて使うことがよくあります。ただし、同じ階層では一つの切り口にそろえることが大切です。
WBSの作り方
スコープを確認する:プロジェクト憲章やスコープ記述書をもとに、プロジェクトの範囲と成果物を確認します。
第1階層を決める:フェーズ別・成果物別など、全体をMECEに分ける切り口を選びます。
下位へ分解する:ワークパッケージの粒度になるまで分解を繰り返します。
プロジェクトマネジメント作業を加える:会議、報告、レビューなどの管理作業も、WBSに含めます。忘れられやすい作業です。
WBS辞書を作る:各ワークパッケージの作業内容、成果物、完了条件、担当者などを記述します。
関係者でレビューする:現場の担当者と確認し、モレや重複がないかチェックします。
WBSから広がる計画
スケジュール:ワークパッケージをアクティビティに分け、順序と所要期間を設定してガントチャートやネットワーク図を作ります。
コスト見積もり:ワークパッケージごとに工数・コストを見積もり、積み上げて全体の予算を算出します。
要員計画・役割分担:ワークパッケージごとに担当者を割り当て、RACIチャートで責任を明確にします。
進捗管理・EVM:ワークパッケージ単位で進捗を測定し、出来高を管理します。
よくある失敗と注意点
作業の羅列になる:成果物を意識せずに作業を並べると、モレや重複が生じます。
管理作業を忘れる:会議、報告、調整、品質レビューなどの工数が見積もりから漏れがちです。
粒度がばらばら:細かすぎる作業と大きすぎる作業が混在すると、進捗を正しく把握できません。
一人で作る:PMだけで作ると、現場の実態と合わないWBSになります。担当者を巻き込んで作成します。
作って終わり:スコープの変更があれば、WBSも更新します。
まとめ
WBSは、プロジェクトの成果物と作業を階層的に分解した、計画の土台
100%ルール(MECE)と成果物中心の分解を守り、管理できる粒度のワークパッケージまで落とし込む
スケジュール、コスト、要員、進捗管理はすべてWBSを起点に作られる