PMOとプログラムマネージャーの役割分担
プログラムにPMOを置くとき、最初に決めておきたいことがあります。PMOは何をする組織なのかです。
ここが曖昧なまま始まると、PMOは「資料を作る人」になるか、逆に「何でも聞かれる人」になります。どちらも本来の役割ではありません。

■ 分け方の原則は「決めるか、手を動かすか」
図のとおり、判断はプログラムマネージャー、実務の維持はPMOです。この境目をはっきりさせておくだけで、多くの混乱が防げます。
具体的には、こうなります。
PMOがやること | PMOがやらないこと |
|---|---|
依存一覧を維持し、期限が近いものを催促する | 遅れたときに、どう調整するかを決める |
課題を記録し、期限を管理する | 課題の解決方針を決める |
各PJから進捗を集めて集計する | 進捗の良し悪しを評価する |
運営委員会の資料を作る | 資料の内容に責任を持つ |
右の列は、すべてプログラムマネージャーの仕事です。PMOに判断させると、権限がないのに責任だけを負う形になり、うまくいきません。
■ PMOの価値は「仕組みを作ること」
PMOが最も価値を出すのは、標準と様式を整えることです。
各PJの進捗報告の様式を統一する(転記作業がなくなる)
課題・リスク・依存の一覧の形式を決める(横断で見られるようになる)
ゲートの判定基準のひな形を作る(毎回ゼロから考えなくて済む)
よく使う手順を文書にする(新任PJマネージャーの立ち上がりが早くなる)
この仕事は、プログラムマネージャーには時間がありません。PMOが担うことで、全体の効率が上がります。
■ 人数と規模の目安
プログラムの規模 | PMOの体制 | 主な役割 |
|---|---|---|
PJ 2〜3本 | 専任0.5〜1名 | 一覧の維持と資料作成 |
PJ 4〜6本 | 専任1〜2名 | 上記に加えて、標準の整備 |
PJ 7本以上 | 専任3名以上 | 領域ごとに担当を分ける |
小規模なら、プログラムマネージャーが兼務しても構いません。ただし、兼務する場合はPMO業務の時間を明示的に確保してください。判断の仕事に追われて、一覧の更新が止まるのが典型的な失敗です。
■ 「報告のためのPMO」にしない
PMOが機能しなくなる一番の原因は、各PJから見て「報告させられるだけの存在」になることです。こうなると、報告の質が落ちます。都合の悪いことが書かれなくなります。
これを避けるには、PMOがPJ側に返すものを作ります。
他のPJの状況を共有する(自分だけが遅れているわけではないと分かる)
依存先の状況を先に知らせる(相手のPJに聞きに行く手間が省ける)
様式や環境を整えて、PJ側の作業を減らす
報告をもらう代わりに、役に立つ情報を返す。この関係ができると、PMOに本当の情報が集まるようになります。
■ 最初に紙1枚で共有する
プログラムの開始時に、図のような分担表を作って配ってください。項目は自分たちのプログラムに合わせて構いません。
この1枚があると、「これは誰に聞けばいいか」で迷う時間がなくなります。そして、PMOが板挟みになることも減ります。
■ まとめ
PMOとプログラムマネージャーの分担は、判断はプログラムマネージャー、仕組みの維持はPMO。PMOの価値は標準と様式を整えることにあり、報告を集めるだけの存在にしないことが大切です。
いまPMOを置いているなら、「PMOが決めていいこと」が明文化されているか確かめてみてください。なければ、1枚の分担表を作るところから始められます。