移行と定着をプログラムに組み込む
プログラムが失敗する形で一番多いのは、途中で止まることではありません。全部作り終えたのに、成果が出ないことです。
システムは動いています。テストも通っています。それでも数字が変わらない。原因はほぼ決まっていて、現場のやり方が変わっていないのです。

■ 稼働日は、途中の1日でしかない
プロジェクトの計画では、稼働日がゴールです。プログラムでは違います。稼働日は、成果が出るまでの長い工程の真ん中あたりにあります。
図のとおり、稼働の前後には次の作業が必要です。
新しい手順書を作る(システムの操作マニュアルとは別物)
現場に説明し、練習してもらう
例外的なケースの扱いを決めておく
旧のやり方を止める
使われているかを確認し、使われていなければ理由を調べる
これらは、プログラムの計画に行として存在しないと、実行されません。「業務部門がやるもの」として計画の外に置かれたとき、誰も担当しない状態になります。
■ 手順書は、業務側の人が書く
操作マニュアルはシステム側で作れます。しかし業務手順書は違います。
操作マニュアル | 業務手順書 | |
|---|---|---|
書くこと | 画面の使い方 | 仕事の進め方(誰が、いつ、何をするか) |
書く人 | システム側 | 業務側 |
ないとどうなるか | 操作で迷う | 新しいやり方が定まらず、人によってバラバラになる |
業務手順書を業務側に書いてもらうのは、時間がかかります。本業がありますし、文書を書き慣れていない人も多いです。だからこそ、計画に入れて、時間を確保する必要があります。
進め方のコツは、白紙から書いてもらわないことです。こちらで叩き台を作り、「ここは実際どうしていますか」と聞きながら直していく。この形なら、数回の打ち合わせで形になります。
■ 旧を止める日を、最初に決める
定着で一番効くのが、これです。新しい仕組みと古いやり方が並んでいると、人は慣れたほうを使います。
並行運用は必要ですが、期間を最初に決めておくことが重要です。「様子を見ながら」にすると、半年経っても旧が残ります。
止めるもの | 確認すること |
|---|---|
旧システム | 参照だけの利用が残っていないか。過去データの見方を用意したか |
旧帳票・旧Excel | 誰がどこに保管しているか。回収または削除する |
旧の権限 | アクセス権を落とす。残っていると使われる |
旧の連絡経路 | 旧の依頼フォームやメールアドレスを閉じる |
4行目も忘れがちです。旧の依頼経路が生きていると、そこから仕事が流れ込み続けます。
■ 使われているかを数える
定着しているかどうかは、感覚では分かりません。数えます。
新しい画面から入力された件数 ÷ 全件数(システムで取れる)
新手順で処理された件数の割合(一定期間、記録してもらう)
旧帳票の残数(現場を回って数える)
この数字が低い場合、責めても上がりません。使いにくい理由が必ずあります。よくあるのは、例外的なケースの扱いが決まっていないこと。1件でも扱えないケースがあると、現場は「じゃあ今までどおりでいいか」となります。
■ 定着を担当する人を決める
最後に、この一連の作業を誰が持つかです。プログラムマネージャーが全部やるのは無理があります。
おすすめは、業務部門側に「定着の責任者」を1人置くことです。システム側ではありません。現場に顔が利き、手順を決められる人。この人がいるかどうかで、定着の速度が変わります。
そしてこの人の作業も、プログラムの計画に行として書きます。
■ まとめ
プログラムの計画には、システム側・業務側・旧のたたみ方の3つの行を置く。業務手順書は業務側が書き、旧を止める日は最初に決める。そして、使われているかを数える。
いま関わっているプログラムの計画を見て、「旧を止める」という作業が書かれているか確かめてみてください。なければ、そこが成果を止める場所になります。