役員に「なぜこうなった」と問われた15分
プロジェクトの遅れが大きくなり、役員会議で報告することになりました。与えられた時間は15分。冒頭、役員がこう言います。
「で、なぜこうなったの」
ここで経緯から話し始めると、まず間違いなく失敗します。「4月に要件が固まって、5月に…」と説明しているうちに10分が過ぎ、対策の話にたどり着けません。

■ 最初の30秒で結論を言い切る
役員が知りたいのは、順番としてはこうです。
で、どうなるの(見通し)
で、いくらかかるの(影響)
で、私は何をすればいいの(依頼)
原因の詳細は、実はそれほど求められていません。だから最初の一言は、こうなります。
「結論から申し上げます。リリースは3週間遅れる見込みです。追加費用は発生しません。本日、B機能を次期に回す判断をいただきたく参りました」
30秒です。この30秒で、残り14分の会話の質が決まります。
■ 事実は数字で、原因は仕組みで
次に事実を話します。ここでのコツは、形容詞を使わないことです。
言いがちな表現 | 伝わる表現 |
|---|---|
かなり遅れています | 計画比で3週間、残作業は18本です |
想定以上に難しかった | 1本あたりの工数が見積もりの1.8倍でした |
体制が厳しい状況です | 2名の予定が1名で進めています |
原因を話すときは、さらに注意が必要です。人の名前や個人の能力を持ち出さない。これは倫理の問題であると同時に、実務上の理由があります。
「担当者が遅かった」と説明すると、役員の打ち手は「人を替える」しかなくなります。「レビュー待ちが平均4日発生していた」と説明すれば、打ち手は「レビュー体制を変える」になります。説明の仕方が、相手の選択肢を決めます。
■ 対策は、始めたことから話す
対策のパートで一番効くのは、すでに着手しているという事実です。
言い方 | 受け取られ方 |
|---|---|
今後、検討してまいります | まだ何もしていない |
先週からレビューを2名体制にしました。今週の処理数は1.4倍です | もう動いている。信用できる |
小さくても構いません。1つでも「もう始めていて、効果が出ている」ことがあると、報告全体の信頼度が変わります。
■ 依頼は1つに絞る
最後のパートが一番大事です。役員会議は、決裁者が全員そろっている数少ない場です。ここで決めないと、次に同じ顔ぶれがそろうのは1か月後かもしれません。
だから、決めてほしいことを1つだけ持っていきます。
A案とB案を示し、推奨と理由を添える
決めなかった場合に何が起きるかを、1行で言う
「本日ご判断いただけますか」と、はっきり聞く
2つ目を忘れないでください。「決めない」という選択にもコストがあることを、その場で見せる必要があります。
■ 答えられない質問が来たら
15分の中で、答えを持っていない質問が必ず飛んできます。そのときは、推測で埋めないでください。
「その数字は手元にありません。本日中に確認してお送りします」
これで十分です。役員は、その場しのぎの数字を出されるほうを嫌います。そして、約束した時刻までに必ず送る。この積み重ねが、次回以降の信頼になります。
■ 会議の前にやっておくこと
準備 | 理由 |
|---|---|
資料は1枚にする | 15分で読み込める量は限られる |
自分の上長に事前に見せる | その場で上長が援護しやすくなる |
30秒版を声に出して練習する | 冒頭でつまずくと、最後まで戻せない |
3つ目は本当に効きます。頭で考えた文章と、口に出せる文章は違います。
■ まとめ
役員への報告は、結論・事実・原因・対策・依頼の順。経緯は求められたときだけ話す。原因は仕組みで説明し、依頼は1つに絞る。
次の報告の前に、自分のプロジェクトの「30秒版」を書いてみてください。書けないなら、まだ状況を把握し切れていないサインです。