ベンダーに「その期日は無理です」と言われたとき
協力会社との打ち合わせで、期日を提示したところ、こう返ってきます。
「申し訳ありませんが、その期日は無理です」
ここで「そこをなんとか」と押すと、たいてい二つのうちどちらかになります。押し負けて期日が延びるか、相手が渋々受けて品質が落ちるか。どちらも望んだ結果ではありません。
やることは押すことではなく、「無理」の中身を分けることです。

■ まず聞くのは「どこが無理か」
「無理です」は結論であって、理由ではありません。同じ言葉でも、中身は図の3つに分かれます。そして打ち手がまったく違います。
最初の質問は、これで固定できます。
「差し支えなければ、どこが一番きついか教えていただけますか」
「なぜ無理なんですか」と聞くと、詰問に聞こえます。「どこが一番きついか」は、協力の姿勢として伝わります。同じ情報を求めているのに、返ってくる量が変わります。
■ ①量が足りないとき
見積もりを出してもらい、こちらの想定と並べます。差があるなら、どこで差が出ているかを1行ずつ見ます。
確認すること | よくある差の原因 |
|---|---|
テストの範囲 | 相手は結合テストまで含めて見ている |
ドキュメントの量 | 納品物の粒度が共有できていない |
レビューの回数 | 手戻りを多めに見込んでいる |
差が埋まらない場合は、範囲を2つに切ります。「期日までに必要なのはここまで。残りは翌月でよい」と分ければ、多くの場合そこで収まります。
■ ②前提が食い違っているとき
実はこれが一番多く、そして一番早く解決します。相手が「依頼された作業」を、こちらの想定より広く受け取っていることがあります。
確認の仕方は単純です。作業を箇条書きにして、1行ずつ「これは含みますか」と聞いていく。10分あれば終わります。
この作業をすると、たいていいくつかの項目が落ちます。そして、落ちたぶんで期日に収まることがよくあります。
■ ③他の案件と取り合いのとき
相手の社内で、別の案件と人の取り合いになっている場合です。これは相手の都合なので、こちらから解決はできません。できるのは、着手日を明確にすることです。
いつからなら着手できるか、日付で聞く
その日から始めた場合、いつ終わるかを聞く
その終了日が期日に間に合わないなら、何を前倒しできるか相談する
ここで効くのが、作業を分割して一部だけ前に出すやり方です。「全部は無理でも、この画面3つだけ先に」なら、隙間で入れてもらえることがあります。
■ やってはいけないこと
やりがち | 何が起きるか |
|---|---|
相手の上長に直接言う | 担当者が社内で立場を失い、協力が得られなくなる |
契約上の義務を持ち出す | その場は通るが、以降は最低限の対応しかされなくなる |
根拠なく期日を繰り返す | 相手も根拠なく無理と繰り返す。平行線になる |
協力会社は、下請けである前に、同じ期日に向かって作業する相手です。ここで関係を壊すと、終盤に効いてきます。トラブル対応で無理をお願いするのは、たいてい終盤だからです。
■ まとめ
「その期日は無理です」と言われたら、押す前に分ける。量なのか、前提なのか、他案件なのか。「どこが一番きついですか」の一言から始めてください。
特に②の前提ずれは、確認するだけで消えることがあります。次に同じ場面が来たら、作業を箇条書きにして1行ずつ確認してみてください。10分で状況が変わることがあります。