上司に「なんとかならないの」と言われたとき
遅れの見込みを報告したあと、上司がこう言います。
「そこをなんとかならないの」
具体的な指示ではありません。責められているようにも、励まされているようにも聞こえます。そしてつい、こう答えてしまいます。「なんとかしてみます」。
この返事が、あとで一番自分を苦しめます。

■ 「なんとかします」が意味すること
図のとおり、遅れに対して動かせるものは4つしかありません。範囲、期間、人、品質です。
「なんとかします」と答えたとき、上司は①〜③のどれかが動くと理解します。しかし実際には何も動いていないので、現場では④の品質を下げるか、メンバーの残業で埋めるかのどちらかになります。
そして品質を下げた結果は、テスト工程か本番で返ってきます。残業で埋めた結果は、メンバーの離脱として返ってきます。どちらも、数週間後に、より大きくなって戻ってきます。
■ その場で返す言葉
断る必要はありません。次の形に変えるだけです。
「可能性はあります。3つ案があるので、どれを取るか決めさせてください」
「できません」でも「やります」でもなく、選択肢を出す。これが一番通りやすい返し方です。上司が求めているのは、たいてい「打つ手はあるのか」という情報だからです。
そして、その場で3案を口頭で言えるようにしておきます。
案 | 言い方の例 |
|---|---|
範囲を減らす | B機能を次のリリースに回せば、期日は守れます |
期間を延ばす | 2週間いただければ、範囲はそのままで収まります |
人を増やす | 今週中に1人入れば間に合います。来月では間に合いません |
3行目の後半が重要です。人を増やす案には期限があることを必ず添えてください。終盤に人を足すと、教える時間のぶんだけ遅くなります。
■ 数字を1つだけ持っていく
3案を出しても、根拠がないと「もう少し頑張れないか」に戻ります。そこで、数字を1つだけ用意します。
残っている作業量(例:残り18本、1日2本ペース、あと9日)
今のペースで終わる日(例:予定より6営業日遅れ)
その差を埋めるのに必要な量(例:6人日ぶん)
細かい根拠は要りません。「あと6人日足りない」という1文があれば、議論は「気合い」から「調達」に移ります。
■ 上司の立場も見ておく
「なんとかならないの」と言う上司も、上や顧客に対して同じことを言われています。つまり、上司も選択肢を欲しがっています。
だから、こう添えると通りやすくなります。
「顧客に説明するとしたら、この案が一番説明しやすいと思います」
上司が次にやる仕事(顧客への説明)まで考えた提案になっているからです。同じ内容でも、受け取られ方が変わります。
■ どうしても押し切られたとき
それでも「とにかくやってくれ」で終わることはあります。そのときは、受けた上で1通だけメールを送ってください。
書くこと | 例 |
|---|---|
受けた内容 | 期日を変えずに進めます |
そのために必要なこと | C機能のテストを簡略化します |
起こりうること | 本番後に不具合が出る可能性が上がります |
責任を押し付ける文面ではありません。判断の前提を共有するためです。後で問題が起きたとき、このメールがあるかないかで、話の進み方がまったく違います。
■ まとめ
「なんとかならないの」への答えは、「やります」でも「無理です」でもなく、「3つ案があります」です。範囲・期間・人。この3つを、数字1つと一緒に出す。
次にこの場面が来る前に、自分の案件で「あと何人日足りないか」を計算しておいてください。その1行があるだけで、会話の難易度が大きく下がります。