「実はまだ終わっていません」と言われたとき
朝の朝会で、メンバーがこう切り出します。
「すみません、あの機能、実はまだ終わっていません」
昨日までは「順調です」と聞いていた作業です。予定では今日からテストが始まるはずでした。頭に血がのぼりそうになりますが、ここでの返し方で、このあと数週間の情報の流れが決まります。

■ 最初の1分:責める前に、受け止める
思わず出てしまうのが「なんで早く言わなかったの」です。気持ちは分かります。ただ、この一言は「次は報告しないほうがいい」というメッセージとして受け取られます。
実際、遅れの報告が直前まで上がってこない現場では、たいていその前に同じような場面がありました。報告した人が責められるのを、他のメンバーが見ています。
だから最初の一言は、これで固定しておくのが安全です。
「教えてくれて助かった。今の状況を一緒に見よう」
決まり文句で構いません。とっさに言葉を選ぼうとすると、感情が出ます。あらかじめ決めておくほうが確実です。
■ 5分まで:感覚ではなく、量で聞く
次にやるのは、遅れの大きさを数える作業です。ここでの質問の仕方で、返ってくる情報の精度が変わります。
効きにくい聞き方 | 効く聞き方 |
|---|---|
どのくらい遅れそう? | 残っているのは、何画面分/何件分? |
あとどれくらいで終わる? | 今日1日で、そのうちいくつ終わる? |
大丈夫そう? | 今のままだと、いつ終わる見込み? |
左の聞き方だと「もう少しです」という答えが返ってきます。これは情報ではありません。右のように数えられる形で聞くと、本人も状況を客観的に見られるようになります。
■ 10分まで:影響の範囲をその場で洗う
遅れそのものより、影響のほうが大きいことがあります。その場で3つ確認してください。
この作業を待っている人は誰か(すぐ手が止まるのは誰か)
顧客との約束に関わるか(デモ、テスト開始、リリース日)
他に同じ理由で遅れそうな作業はあるか
3つ目が重要です。原因が「思ったより仕様が複雑だった」なら、似た作業も同じように遅れます。1件の遅れとして扱うか、全体の見直しとして扱うかが、ここで変わります。
■ 15分まで:今日やることだけ決める
この場で計画全体を引き直そうとしないでください。情報が足りません。決めるのは2つだけです。
決めること | 例 |
|---|---|
今日中にやること | 残りの作業を分解して一覧にする/詰まっている箇所を2人で見る |
今日中に伝える相手 | 後工程の担当者/自分の上司(顧客への連絡は状況が固まってから) |
原因の分析と再発防止は、翌日以降で構いません。その場でやると、責任追及の空気になりやすく、得られるものも少ないです。
■ 同じことを繰り返さないために
この場面を減らす方法は、実はひとつしかありません。遅れが小さいうちに見える仕組みを作ることです。
進捗を「何%」ではなく「終わった数/全体の数」で報告してもらう
2日以上動いていない作業を、朝会で必ず拾う
「困っていること」を聞く時間を、朝会の最後に30秒だけ置く
特に1つ目です。「80%です」は何日でも80%のままでいられますが、「12件中7件」は動かないとすぐ分かります。
■ まとめ
「実はまだ終わっていません」は、悪い知らせであると同時に、まだ報告してもらえているという良い知らせでもあります。本当に危ないのは、何も言われないまま期日を迎えることです。
次にこの場面が来たら、最初の一言だけ意識してみてください。「教えてくれて助かった」。それだけで、そのあとの会話がまったく違うものになります。