年上・ベテランのメンバーと仕事をするとき
新任PMの悩みで、かなり上位に来るのがこれです。
自分より年上で、経験も豊富なメンバーに、どう接すればよいのか。
押しが強すぎると反発され、遠慮しすぎると何も決まらない。この加減が難しいと感じる方は多いと思います。

■ 前提:指示するのではなく、役割を分ける
まず考え方を変えます。PMは「上司」ではありません。役割が違うだけです。
誰が持つか | 何を持つか |
|---|---|
PM | 全体の段取り、優先順位、期限、関係者との調整、判断の場を作ること |
ベテランのメンバー | 技術の判断、設計の方針、やり方の選択、若手への指導 |
一緒に決める | 見積り、リスクの評価、作業の割り振り、品質の基準 |
この線を最初に共有しておくと、お互いに楽になります。
「いつまでに、何が必要か」はPMが決めます。「どうやるか」は相手に任せます。この形にすると、指示・被指示の関係にならずに済みます。
■ 最初にやること:教えを請う
担当になった直後にやるべきことは、指示を出すことではありません。聞くことです。
「この領域は、どう進めるのがよいと思いますか」
「過去に似た案件で、つまずいたところはありますか」
「私が見落としそうなことがあれば、教えてください」
これは遠慮ではありません。実際に、相手のほうが知っているからです。知っている人から聞くのは、当たり前の行動です。
そして、この時間が信頼の土台になります。最初に聞いておくと、後で判断を伝えるときに受け入れてもらいやすくなります。
■ 遠慮してはいけないこと
一方で、遠慮してはいけない領域があります。ここを曖昧にすると、プロジェクトが回りません。
遠慮してよいこと | 遠慮してはいけないこと |
|---|---|
技術の選択 | 期限 |
設計の細部 | 作業の範囲 |
作業の進め方 | 報告のタイミング |
使うツール | 決定事項の記録 |
右側は、相手が誰であっても同じように伝えます。「◯日までに必要です」「ここまでが今回の範囲です」。これは立場の話ではなく、プロジェクトを成立させるための条件だからです。
言いにくく感じるときは、主語を自分ではなくプロジェクトにします。
×「私は◯日までにお願いしたいです」
○「後続の作業が◯日から始まるので、そこまでに必要です」
■ 決める前に、一言入れておく
何かを決めるとき、いきなり決定として伝えると反発を生みます。順番を一つ足すだけで、受け取られ方が変わります。
×「◯◯に決めました。よろしくお願いします」
○「◯◯にしようと考えていますが、いかがでしょうか」→ 意見を聞く → 決定を伝える
相手が反対しても、最終的にPMが決めてかまいません。大事なのは、決める前に意見を聞いたという事実です。
そして、相手の意見を採らなかった場合は、理由を伝えます。「技術的には◯◯のほうがよいと思いますが、今回は期間の制約で△△にします」。理由が分かれば、納得できなくても協力はしてもらえます。
■ 指摘するときは、1対1で、事実ベースで
期限を過ぎている、報告がない、品質に問題がある。こうした指摘が必要な場面は必ず来ます。
やり方を間違えると、その後の関係が壊れます。
やってはいけない | こうする |
|---|---|
他のメンバーの前で指摘する | 必ず1対1で話す |
「なぜできていないんですか」 | 「◯◯が3日遅れています。何か詰まっていますか」 |
人柄や姿勢の話にする | 事実と、それによる影響の話にする |
その場で結論を出させる | 状況を聞いて、一緒に対応を考える |
人ではなく、状況の話にする。これが基本です。
■ 「若いのに」と言われたら
直接、経験の浅さを指摘されることもあります。
ここで張り合おうとすると、たいてい悪化します。事実は事実として認めたうえで、役割の話に戻します。
「技術は◯◯さんのほうが詳しいので、そこは頼りにしています」
「私は全体の段取りと、他部署との調整を担当します」
「判断に必要な情報があれば、遠慮なく言ってください」
自分の弱いところを認めるのは、弱さではありません。役割分担を明確にする行為です。
■ 時間をかけて信頼を作る
信頼は、宣言では生まれません。行動の積み重ねでしか作れません。
効くのは、地味なことです。
言ったことを、必ずやる(小さいことほど守る)
相手が困っている調整を、代わりに片づける
相手の手柄を、上や顧客にきちんと伝える
問題が起きたとき、責任を引き受ける
とくに最後が大きいです。うまくいったときは相手の功績、うまくいかなかったときは自分の責任。この姿勢が見えると、関係は変わります。
■ まとめ
年上・ベテランのメンバーと仕事をするときは、次の3つです。
役割を分ける:技術は相手、段取りと期限はPM
先に聞く:教えを請うところから始める
期限と範囲は遠慮しない:主語をプロジェクトにして伝える
相手が求めているのは、敬意と明確さです。遠慮でも、押しの強さでもありません。