受注前に見ておくべき赤信号
炎上したプロジェクトを振り返ると、多くの場合受注する前から予兆があります。
そのときは「なんとなく嫌な感じがした」で終わり、言葉にできないまま受注してしまう。そして半年後、予感が当たったことを知ります。
この記事は、その「嫌な感じ」を言葉にするための一覧です。

■ 赤信号:そのままでは受けない
これらが揃っている案件は、高い確率で難航します。
赤信号 | 実行段階で起きること |
|---|---|
決める人が誰か分からない | 要件が決まらず、決めても後からひっくり返る |
要件が白紙なのに、納期と金額が固定 | 要件が膨らんでも、調整する余地がない |
現行システムの資料が一切ない | 調査に想定外の期間がかかる。移行で詰まる |
前のベンダーが途中で降りている | 降りた理由が、そのまま自分たちにも降りかかる |
自社に経験のない技術が中核にある | 設計段階で止まる。見積りの根拠がない |
顧客側に担当者を置く予定がない | 確認が進まず、受入テストで人が集まらない |
とくに注意したいのが「前のベンダーが途中で降りている」案件です。技術的な理由だけとは限りません。決められない体制、過大な要求、支払いの問題。降りた理由を確認せずに引き受けるのは危険です。
■ 黄信号:条件をつけて受ける
これらは、対処できれば問題ありません。ただし対処せずに進めると、後で効いてきます。
黄信号 | つけるべき条件の例 |
|---|---|
要件の一部が固まっていない | 「◯月◯日までに確定」を前提に明記。遅れた場合の扱いも書く |
関係部署が多く、利害が割れている | 意見が割れたときの決裁者を、契約前に決めてもらう |
業務側の要員が決まっていない | 受入テスト期間の体制を、前提条件として書く |
他システムとの連携相手が未確定 | 連携仕様の提示期限を前提に入れる |
スケジュールに余裕がない | 前提が崩れた場合の納期再調整を、あらかじめ合意する |
過去に同種案件でもめている | もめた原因を確認し、同じ構造になっていないか見る |
ポイントは、「前提が崩れたらどうするか」まで書くことです。前提だけ書いて、崩れたときの扱いがないと、結局こちらが吸収することになります。
■ 契約前に聞いておく5つの質問
提案や商談の場で、この5つを聞くだけで、かなり見えてきます。
「このプロジェクトで、最終的に決めるのはどなたですか」
「関係する部署はどこですか。意見が分かれたら、どう決まりますか」
「御社側で、どなたが担当になりますか。どれくらい時間を使えますか」
「現行システムの資料は、どこまで残っていますか」
「なぜ、このタイミングでやることになったのですか」
最後の質問が意外に重要です。「いつまでに、なぜ必要か」の背景が分かると、納期が本当に動かせないものか、それとも希望なのかが見えてきます。
■ 「なんとなく不安」を言葉にする
赤信号を見つけても、「不安です」だけでは誰も動けません。次の形で出します。
伝わらない言い方 | 伝わる言い方 |
|---|---|
「この案件は危ないと思います」 | 「決裁者が不明なため、要件確定が遅れるリスクがあります」 |
「要件が曖昧です」 | 「機能一覧のうち3つが未定義です。ここが膨らむと工数が2割増えます」 |
「体制が足りません」 | 「テスト期間に必要な3名のうち、確保できているのは1名です」 |
どの条件が、どの工程で、どんな形で表に出るか。ここまで書けば、判断する人が判断できます。
■ 受注判断はPMが決めることではない
重要な前提として、受注するかどうかを決めるのはPMではありません。会社として決めることです。
PMの役割は次の3つです。
リスクを見つける
それを言葉にする
判断できる人に渡す
渡したうえで「それでも受ける」と決まったなら、それは組織の判断です。そのときPMがやるべきなのは、指摘した条件を計画とリスク一覧に反映することです。
「言ったのに聞いてもらえなかった」で終わらせず、記録に残したうえで、その前提で最善の計画を作ります。
■ 受けたあとにできること
赤信号がある状態で受注が決まった場合、キックオフまでにやれることがあります。
決裁者が不明なら、キックオフで体制図に明記してもらう
要件が白紙なら、要件定義のフェーズを分けて、そこで再見積りする形を提案する
資料がないなら、現行調査を独立した作業として計画に入れる
業務側の要員が未定なら、必要な時期と人数を早めに文書で伝える
受注前に見つけた問題は「条件」として交渉できます。受注後に見つかった問題は「自分たちの問題」になります。だからこそ、早い段階で見ることに価値があります。
■ まとめ
受注前に見るべきポイントは、次の3つに集約されます。
決める人がいるか(決裁者・窓口・業務側の担当者)
決まっているか(要件・連携先・現行の情報)
やったことがあるか(技術・業界・同種の規模)
いま検討中の案件があれば、この3点を確認してみてください。1つでも欠けているなら、条件として交渉できる段階のうちに出しておきます。