未来PM
PjMノウハウ

提案段階でのPMの関わり方

受注してから「この条件では無理だ」と気づく。PMにとって、いちばんつらい始まり方です。

しかし条件を決めたのは提案段階であって、実行段階ではありません。提案の場にPMが入っていれば防げたことが、かなりの割合を占めます。

提案段階でPMが見る点の図


■ 提案段階でPMが入らないと何が起きるか

営業だけで提案が進むと、次のようなことが起こります。

提案段階で起きたこと

実行段階で表に出る形

前提条件が提案書の隅に書かれただけ

顧客と認識が違い、範囲でもめる

口頭で「それもできます」と答えた

契約範囲外の作業を求められる

見積りにテストと移行が入っていない

終盤で工数が足りなくなる

体制図に、実際には空いていない人を載せた

要員が揃わず、着手が遅れる

使ったことのない技術を前提にした

設計段階で行き詰まる

どれも、提案の時点で30分確認すれば分かったことです。


■ PMが提案段階で見るべき5点

技術の詳細ではなく、次の5点を見ます。

① 前提条件と、範囲に含まないこと

提案書に「前提」の欄がなければ、作ります。書くのは次のようなことです。

  • 顧客側が用意するもの(環境、データ、要員、承認)

  • 今回やらないこと(他システムの改修、運用保守、教育)

  • 期間の前提(顧客の回答は何営業日以内、など)

とくに「今回やらないこと」は明記します。書いていないことは、たいてい「やってもらえる」と受け取られます。

② 見積りに抜けている工程はないか

レビュー、結合・総合テスト、手戻り、会議、環境構築、ドキュメント作成、移行。これらが入っているかを確認します。入っていなければ、足すか、前提として除外します。

③ 体制図の人は、実際に空いているか

提案書の体制図に名前が載っていても、その人が本当に確保できるとは限りません。「この期間、この人は本当に空きますか」を、上長に確認します。

ここを確認せずに受注すると、実行開始時点で人がいない状態になります。

④ 技術的に実現できるか

自社に経験がない技術や、他システムとの複雑な連携が入っている場合は、詳しい人に見てもらいます。「たぶんできる」で提案すると、設計段階で止まります。

⑤ スケジュールが物理的に可能か

顧客の希望納期から逆算して、各工程に最低限必要な期間が取れているかを見ます。取れていないなら、提案の段階で言います。受注後に言っても、もう選択肢がありません。


■ 「できません」ではなく「この条件なら」

提案段階のPMは、しばしば「ブレーキ役」と見られます。営業からすると、せっかくの案件に水を差されたように感じるからです。

伝え方を変えると、受け取られ方が変わります。

言い方

受け取られ方

「この納期では無理です」

否定。話が止まる

「この納期なら、範囲を◯◯までに絞れば可能です」

条件の提示。話が進む

「この体制では回りません」

否定

「この体制なら、テスト期間を2週間延ばす必要があります」

必要な条件として伝わる

「やるとしたら、何が必要か」の形にすると、営業も顧客と交渉しやすくなります。


■ 口頭で出た話を残す

提案の打ち合わせでは、提案書に書かれていないやりとりが必ず発生します。

  • 「それもできますか」「対応可能です」

  • 「このあたりは柔軟に」

  • 「まずは小さく始めて、あとで広げたい」

こうした会話は、そのままだと片方の記憶にしか残りません。議事メモに残して、顧客にも共有しておきます。

「できます」と答えた内容が範囲に入るのか、別途見積りなのか。ここをその場で曖昧にすると、後で必ず食い違います。


■ 受注が決まったら、前提を引き継ぐ

提案したPMと、実行するPMが別人になることがあります。このとき、提案書だけを渡しても足りません。

渡すべきものは次のとおりです。

  • 見積りの内訳と、その根拠

  • 前提条件と、除外したこと

  • 提案時のやりとりで出た口約束

  • 顧客側のキーパーソンと、その人の関心事

  • 提案時に把握していたリスク

とくに「口約束」と「リスク」は文書に残りにくいので、口頭でも必ず伝えます。


■ 提案に入れないときは

組織の事情で、提案段階にPMが関われないこともあります。その場合でも、次はできます。

  • 受注直後に、提案書と見積りの内訳を一通り読む

  • 前提条件と除外事項を確認し、足りなければ顧客と再確認する

  • 営業に「口頭で約束したことはありませんか」と聞く

  • 気になる点は、キックオフの前に整理して出す

始まってからでは遅いことも、キックオフ前なら間に合います。


■ まとめ

提案段階でPMがやることは、次の3つです。

  • 前提条件と「やらないこと」を文書にする

  • 見積り・体制・技術・期間が、実行可能かを確認する

  • 口頭で出た話を記録に残し、受注後に引き継ぐ

いま担当している案件で、提案書の前提条件を読んだことがあるかを確認してみてください。読んでいなければ、まずそこからです。

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