社内の他部門との調整
プロジェクトが止まる原因は、開発の中にあるとは限りません。
サーバーが用意できない。契約が進まない。人が手配できない。こうした「社内で止まる」ケースは、経験の長いPMほど警戒します。相手が社内なので強く言えず、しかも自分では動かせないからです。

■ 「協力してくれない」のではない
他部門が動かないとき、つい「協力的でない」と感じます。しかし多くの場合、理由は別のところにあります。
相手にも決められた手続きがある
締め日や承認フローがある
他の依頼が先に並んでいる
依頼の内容が、相手の判断に必要な情報を満たしていない
つまり、相手のルールを知らずに頼んでいることが原因であることが多いのです。
■ 計画時に、必要な手続きを洗い出す
いちばん効くのは、これです。プロジェクトの計画を立てる段階で、社内の手続きが必要なものを全部書き出します。
部門 | 依頼すること | 目安のリードタイム |
|---|---|---|
情報システム | サーバー、アカウント、ネットワーク開放 | 数週間〜数か月 |
調達・購買 | 契約手続き、発注、新規取引先の登録 | 1〜2か月 |
法務 | 契約書レビュー、秘密保持、外部委託の可否 | 2週間〜1か月 |
人事・総務 | 要員の手配、入館手続き、席・端末 | 数週間 |
経理 | 予算申請、支払処理、資産計上 | 締め日に依存 |
この表は会社によって大きく違います。自社の実際の期間を、経験者に聞いて埋めます。ここが分かっていれば、いつ依頼すればよいかが逆算できます。
とくに新規の取引先を使う場合は要注意です。既存の取引先なら数日で済むことが、新規だと審査や登録で1か月以上かかることがあります。
■ 依頼は「工程表のタスク」として扱う
社内手続きを「ついでにやること」として扱うと、必ず遅れます。工程表に、担当と期限をつけたタスクとして載せます。
「◯月◯日までに、情報システムへ環境申請を提出」
「◯月◯日までに、法務へ契約書レビュー依頼」
そして、そのタスクが後続の作業とつながっていることを示します。「この申請が遅れると、開発着手が2週間遅れる」と見えていれば、優先度が伝わります。
■ 頼み方で結果が変わる
同じ依頼でも、出し方で進み方が変わります。
こじれる頼み方 | 通る頼み方 |
|---|---|
「急ぎでお願いします」 | 「◯月◯日までに必要です。理由は〜」 |
必要な情報が揃っていない | 相手の申請様式に沿って、先に埋めて出す |
知っている人に個別に頼む | 正式な窓口を通し、記録を残す |
必要になった日に依頼 | リードタイムから逆算して、余裕をもって依頼 |
断られたら押し切る | 代案を聞く。難しければ上位に相談する |
とくに「相手の様式に沿って出す」は効果が大きいです。相手が書き直す手間がなくなり、そのぶん早く進みます。
■ 窓口を通す
知り合いがいると、つい個別に頼みたくなります。速いこともありますが、次の問題が起きます。
記録が残らず、「聞いていない」となる
その人が不在のときに、誰も状況を知らない
相手の部門内で、優先順位がつけられない
正式な窓口を通したうえで、知り合いには「こういう依頼を出しました」と一声かける。この形が最も確実です。
■ 相手の事情を先に聞いておく
プロジェクトの初期に、各部門の担当者と一度話をしておきます。聞くのは次の3点です。
依頼はどういう流れで進むか(誰が承認するか)
通常どれくらいかかるか
混み合う時期はいつか(決算期、年度末など)
この会話を何も頼みごとがない時期にやっておくのがコツです。困ってから初めて連絡するより、はるかに話が進みます。
■ 進まないときの上げ方
依頼したのに動かない。催促しても変わらない。このときは、段階を踏みます。
段階 | やること |
|---|---|
1 | 担当者に、現在の状況と見込みを確認する(責めない) |
2 | こちらの期限と、遅れた場合の影響を文書で伝える |
3 | 自分の上司に状況を報告し、判断を仰ぐ |
4 | 上司同士で話してもらう |
3と4を自分でやろうとしないことが大事です。部門をまたぐ優先順位は、担当者レベルでは決められません。管理職の間で決めてもらう問題です。
このとき、相手の担当者を責める形にしないよう気をつけます。「その人が悪い」ではなく「この期限に間に合わない」という事実として上げます。
■ まとめ
社内調整でPMがやることは、次の3つです。
計画時に、必要な社内手続きとリードタイムを洗い出す
工程表のタスクとして、担当と期限をつけて管理する
相手の様式・窓口・締め日に合わせて依頼する
いまの案件で、社内手続きが工程表に載っているかを確認してみてください。載っていなければ、そこが最初のリスクです。