要員のアサインと育成
「この作業、誰に任せるか」。PMが毎日のように向き合う判断です。
いちばん簡単なのはできる人に任せることです。速いし、確実です。しかしそれを続けると、その人に仕事が集中し、他の人は育ちません。そしてその人が抜けた瞬間に、プロジェクトが止まります。

■ 任せ方は、人によって変える
同じ渡し方をしても、相手によって結果が違います。見るのは経験と意欲の2つです。
状態 | 任せ方 | PMがやること |
|---|---|---|
経験が浅く、意欲が高い | 小さく区切って任せる | 完了条件を細かく示し、途中でこまめに見る |
経験も意欲も高い | まとめて任せる | 口を出さない。判断が要る場面だけ入る |
経験が高く、意欲が低い | 背景と裁量を渡す | なぜ気持ちが向かないかを1対1で聞く |
経験も意欲も低い | 作業を明確にして渡す | まず理由を聞く。できた事実を返す |
経験が浅い人に大きな塊を渡すと、途中で行き詰まり、期限直前に「できていません」となります。逆に経験のある人に細かく口を出すと、信頼されていないと受け取られます。
■ 任せるときに渡すもの
「これお願い」だけでは、うまくいきません。次の5つをセットで渡します。
完了条件:何ができたら終わりか
期限と、途中で見せてもらう日:締切だけだと最後まで状況が見えない
背景:なぜこれが必要か
判断してよい範囲:どこまで自分で決めてよいか
困ったときの相談先:PMか、別の人か
とくに「途中で見せてもらう日」を決めておくのが有効です。「困ったら言ってください」だけだと、困っている人ほど言い出せません。日付を決めておけば、その日に自然と状況が分かります。
■ 経験が浅い人には「小さく、早く」
育てる目的で任せるときは、次の形にします。
やり方 | 理由 |
|---|---|
作業を小さく区切る | 短い周期で結果が出るので、修正が効く |
最初の1件は一緒にやる | やり方を見せてから、2件目を任せる |
完了条件を具体的に書く | 「いい感じに」では判断できない |
早めに見る | 2割できた時点で方向を確認すれば、手戻りが小さい |
ここでPMがやりがちな失敗は、途中で見て気になった部分を自分で直してしまうことです。直すと速いのですが、本人には何も残りません。どこが違うかを伝えて、本人に直してもらいます。
■ 失敗を「取り返せる大きさ」にする
育つためには、任せて、失敗する余地が必要です。ただし、プロジェクトを壊す失敗は避けなければなりません。
その調整がPMの仕事です。
影響が閉じている作業から任せる(他に波及しない部分)
期限に余裕がある時期に任せる(終盤は避ける)
レビューを1段入れて、外に出る前に気づける形にする
「失敗させない」ではなく、「失敗しても取り返せる範囲にする」という考え方です。
■ できた事実を返す
人が伸びるのは、うまくいった経験が積み重なったときです。そのためには、できたことを具体的に伝える必要があります。
×「よくやってくれました」
○「設計書のこの部分、前回指摘した観点が入っていました。おかげでレビューが早く終わりました」
何が良かったのかが具体的に分かると、本人は次も再現できます。漠然とした褒め方は、記憶にも残りません。
指摘するときも同じです。「ここがダメ」ではなく、「何が起きるか」と「どうすればよいか」をセットにします。
■ 意欲が下がっている人への向き合い方
経験はあるのに、動きが鈍い人がいます。ここで「やる気を出してください」と言っても、何も変わりません。
1対1で、状況を聞きます。よくある背景は次のとおりです。
背景 | できる対応 |
|---|---|
作業の意味が分からない | 背景と、誰の役に立つのかを伝える |
同じ作業ばかりで飽きている | 担当を変える。別の領域を任せる |
裁量がなく、指示待ちになっている | 判断してよい範囲を広げる |
過去に否定された経験がある | 小さく任せて、できた事実を返す |
プロジェクト外の事情 | 踏み込まない。負荷を調整する |
最後の項目は重要です。すべてがPMの扱える範囲にあるわけではありません。踏み込みすぎず、できる調整をします。
■ 「その人しかできない」を作らない
できる人に任せ続けると、その領域が属人化します。プロジェクトとしてはリスクです。
対策は単純です。
重要な領域には、必ず2人目を関わらせる
設計の判断理由を、文書に残してもらう
定期的に、担当を入れ替える機会を作る
短期では非効率に見えますが、長期では確実に得です。誰かが休んだ日に止まらなくなります。
■ まとめ
アサインでPMがやることは、次の3つです。
経験と意欲を見て、任せ方を変える
完了条件・期限・背景・裁量・相談先をセットで渡す
失敗が取り返せる範囲を作って、実際に任せる
いまのチームで、「この人しかできない」作業がないかを確認してみてください。あれば、そこが次に手を打つ場所です。