複数案件を掛け持ちするとき
「3案件を見てほしい」と言われたとき、どう考えればよいでしょうか。
よくある考え方は「1案件あたり3割ずつ」です。しかし実際には、その計算どおりにはなりません。案件の負荷は一定ではなく、山と谷があるからです。

■ 見るべきは「平均」ではなく「山の重なり」
掛け持ちが破綻するのは、忙しい週が重なったときです。
各案件には、必ず負荷が高くなる時期があります。
フェーズ | PMの負荷が上がるとき |
|---|---|
立ち上げ | 関係者の調整、体制づくり、キックオフ |
要件定義 | 会議が増える。決めることが集中する |
設計・製造 | 比較的落ち着く(課題対応が中心) |
テスト | 不具合の判定、業務側との調整で急に増える |
移行・リリース | 最も高い。深夜・休日の作業も発生 |
完了 | 報告書、引き渡し、残件処理 |
この山が別々の週にずれていれば、3件でも回ります。逆に同じ週に重なれば、2件でも破綻します。
■ 週単位で並べて見る
やることは単純です。案件ごとの負荷を、週単位で「大・中・小」に置いて並べます。
横軸:これから3か月の週
縦軸:担当している案件
各マス:その週の負荷(大・中・小)
正確である必要はありません。重なっている週が見えればそれで十分です。
そして、重なりが見つかったらその週が来る前に手を打ちます。ここが肝心で、その週に入ってから相談しても、もう打ち手がありません。
■ 重なる週への打ち手
重なりを見つけたら、次の順に検討します。
打ち手 | 内容 | いつ使えるか |
|---|---|---|
日程をずらす | 片方の山を1〜2週ずらせないか相談する | 早く気づいたとき。最も効果が大きい |
代われる人を立てる | その週だけ、別の人に主担当を任せる | 事前に人を決めてあるとき |
優先順位を決めてもらう | どちらを優先するか、上司に決めてもらう | ずらせないとき |
自分で頑張る | — | 最後の手段。続けられない |
「どちらを優先するか」を自分で決めないことが大事です。両方の関係者から「なぜうちが後回しなのか」と言われる立場に、自分を置かないようにします。上司に決めてもらい、その決定を両方に伝えます。
■ 案件ごとに「代わりに動ける人」を置く
掛け持ちをする前提なら、自分がいない日でも回る形を作っておきます。
各案件に、状況を把握しているサブの人を決めておく
課題管理表と決定事項ログを、その人も見られるようにする
定例会議に、その人も出てもらう
「自分しか分からない」案件を複数持つと、どれか1つが炎上したときに、他が全部止まります。
■ 切り替えのコストを減らす
掛け持ちで失われる時間のうち、意外に大きいのが頭の切り替えです。
A案件の会議の直後にB案件の会議が入ると、前の話を引きずったまま次の判断をすることになります。
対策は、曜日や時間帯を固めることです。
A案件の会議と作業は、月・水の午前
B案件は、火・木の午後
C案件は、金曜
完全には分けられなくても、寄せるだけで切り替えの回数は減ります。
あわせて、案件ごとに状況を書き出したメモを1枚持っておくと、切り替えが速くなります。「いま止まっていること」「次に決めること」の2行で十分です。
■ 引き受ける前に確認すること
新しい案件を頼まれたとき、その場で「やります」と答える前に確認します。
確認すること | なぜ必要か |
|---|---|
その案件の負荷の山がいつか | いま持っている案件と重なるかを判断する |
期待される関与の深さ | 主担当か、レビューだけか、で負荷が全く違う |
サブに立てられる人がいるか | 1人で全部見る前提かどうか |
いまの案件の優先順位 | 重なったときにどちらを優先するかを、先に合意する |
とくに最後の「重なったときの優先順位」は、引き受ける時点で確認しておきます。後から相談するより、はるかに話が早く済みます。
■ 限界を伝えるときの言い方
「無理です」だけでは、話が進みません。材料を添えて伝えます。
「A案件のテストとC案件の移行が、3月第2週に重なります」
「両方を私が見ると、どちらかの判断が遅れます」
「案としては、①C案件の移行を1週ずらす ②A案件のテスト期間だけ◯◯さんに主担当を代わってもらう の2つです」
事実・影響・選択肢の3点で話すと、相手も判断できます。
■ まとめ
掛け持ちの限界は、案件数では決まりません。山が重なるかどうかで決まります。
案件ごとの負荷を、週単位で並べて見る
重なる週を見つけたら、その週が来る前に相談する
優先順位は自分で決めず、決めてもらう
いま複数の案件を持っているなら、これから3か月の負荷を、紙に週単位で書き出してみてください。重なっている週が見えるはずです。