個人情報・機密情報の扱い
情報漏えいの事故は、悪意のある人が起こすとは限りません。多くは「これくらいなら大丈夫だろう」という自己判断から起きています。
はじめにお断りしておくと、この領域はPMが自分で判断してよい範囲ではありません。会社ごとにルールがあり、業界によっては法令や業界基準も関わります。この記事は「何を確認すべきか」を整理するためのものとして読んでください。迷ったときは、必ず社内の情報管理部門・法務・セキュリティ担当に確認します。

■ 扱う情報を3つに分ける
プロジェクトで触れる情報は、扱い方が違います。まず分類から始めます。
区分 | 該当するもの | 扱い |
|---|---|---|
持ち出さない | 顧客の個人情報、口座・カード番号、認証情報、本番データ | 開発環境に持ち込まない。必要ならマスキングしたデータを使う |
範囲を決めて扱う | 契約金額、未公開の仕様書、体制図、取引条件 | 見られる人を決め、会社が許可した場所にだけ置く |
通常どおり扱う | 工程表、課題管理表、議事メモ、公開済みの情報 | 置き場所を1つに決めて共有する |
プロジェクトの開始時に、この分類を関係者と共有しておきます。「何が機密なのか」が共通認識になっていないと、ルールを作っても守られません。
■ いちばん危ないのは「本番データのコピー」
実務でよくあるのが、「テストで本番と同じデータが必要」という場面です。ここが最も事故が起きやすい場所です。
手順として、次の順に確認します。
手順 | 確認すること |
|---|---|
1. 必要性 | 本番データでなければ確認できないことか。件数だけ揃えれば済まないか |
2. 許可 | 使うなら、業務部門と情報管理部門の承認を取る(口頭ではなく記録に残す) |
3. マスキング | 氏名・住所・連絡先・口座番号を、別の値に置き換える |
4. 置き場所 | アクセスできる人を限定し、誰がいつ使ったかの記録を残す |
5. 廃棄 | テスト終了後に消す。消した記録も残す |
とくに5番の廃棄が抜けがちです。テストが終わった後も開発環境に本番データが残っていた、という事故は少なくありません。「いつ消すか」を、用意する時点で決めておきます。
■ 委託先に渡すときの注意
協力会社やベンダーに情報を渡す場面では、次を確認します。
契約に秘密保持の条項が入っているか
再委託先がいる場合、そこまで条項が及ぶか
相手の会社で、どこに保管されるか
プロジェクト終了後、どう廃棄されるか
これらは調達部門や法務が確認している場合が多いですが、PMとして「確認済みか」を把握しておきます。渡した後に聞くのでは遅いからです。
■ 日々の場面で気をつけること
大きなルールより、日常の小さな場面のほうが事故につながります。
場面 | 起きやすいこと | 対策 |
|---|---|---|
メール送信 | 宛先の入力ミス、BCCとCCの取り違え | 送信前に宛先を読み上げる。大量送信は別の手段を使う |
資料の共有 | 不要なシートやコメントが残っている | 外部に出す前に、非表示シートと変更履歴を確認する |
画面共有 | 会議中に他の資料が映る | 共有はウィンドウ単位にする。通知は切る |
持ち帰り作業 | 私物の端末やクラウドを使う | 会社が許可した環境以外で作業しない |
生成AIの利用 | 顧客名や仕様をそのまま入力する | 会社が許可したツールと範囲を確認する。固有名詞は外す |
とくにメールの宛先ミスは、件数として最も多いものの1つです。「送信前に宛先を声に出して確認する」だけでも、かなり減ります。
■ アクセス権は、プロジェクトの節目で見直す
プロジェクトが進むと、メンバーが入れ替わります。しかしアクセス権は、追加はされても削除はされにくいものです。
次のタイミングで見直します。
メンバーが抜けたとき(その日のうちに)
フェーズが変わったとき
プロジェクトが完了したとき
とくに完了後の権限削除は忘れられがちです。終結の作業に、明示的に入れておきます。
■ 何かあったときは、すぐ報告する
「送り先を間違えたかもしれない」「データを間違った場所に置いたかもしれない」。こうした場面では、自分で処理しようとせず、すぐに社内の担当に報告します。
理由は2つあります。
初動が早いほど、影響を小さくできる(回収・削除依頼・相手への連絡)
報告義務がある場合、期限が決まっていることがある
隠して様子を見るのが、いちばん状況を悪くします。報告した人が責められない空気を作っておくことも、PMの役割です。
■ まとめ
この領域でPMがやることは、次の3つです。
扱う情報を分類して、プロジェクト開始時に共有する
本番データを使う場面では、必要性・許可・マスキング・廃棄を確認する
判断に迷ったら、自分で決めずに社内の担当に確認する
いま担当している案件で、開発環境に本番データが残っていないかを確認してみてください。意外と、誰も把握していないことがあります。