見積りをPMとしてレビューする
メンバーやベンダーから見積りが上がってきたとき、PMはそれをどう見ればよいのでしょうか。
「自分は技術が分からないから判断できない」と感じる方も多いと思います。しかしPMが見るべきなのは、技術の妥当性ではありません。「抜けている工程はないか」です。ここだけ見ても、精度はかなり上がります。

■ 見積りは「そのまま受け取らない」
出てきた数字をそのまま計画に載せると、たいてい足りなくなります。理由は単純で、見積りを出す人は、自分が作る部分しか見ていないからです。
実際のプロジェクトでは、作る以外の時間が多く発生します。
抜けやすい工程 | 目安 | 抜けるとどうなるか |
|---|---|---|
レビューと指摘対応 | 製造の1〜2割 | 設計・コードの直しが計画に入らない |
結合・総合テスト | 単体テストと同等以上 | 終盤で不具合対応の時間が取れない |
手戻り | 全体の1割前後 | 1回でうまくいく前提の計画になる |
会議・質問対応 | 全体の1〜2割 | 「作業する時間」が実際より多く見える |
環境構築 | 案件により変動 | 着手が遅れる |
ドキュメント作成 | 案件により変動 | 納品直前に一気に作ることになる |
これらが「含まれているか、別で見ているか」を確認するだけで十分です。含まれていないなら、どこかに足す必要があります。
■ 受け取ったら、4つ聞く
技術が分からなくても聞ける質問です。
① 前提は何か
「この数字は、何を含んで、何を含まないか」を聞きます。とくに次の3点です。
どこまでの範囲を含むか(設計だけか、テストまでか)
使う技術・環境は決まっている前提か
他システムとの連携は含むか
② 誰がやる想定か
同じ作業でも、経験者と初めての人では倍以上違うことがあります。「この数字は、誰がやる前提ですか」と聞きます。
ベテランが出した数字を、初めての人がやると、まず収まりません。見積りを出した人と、実際にやる人が違うときは要注意です。
③ 根拠は何か
根拠には段階があります。
根拠 | 信頼度 | PMがやること |
|---|---|---|
過去の似た案件の実績 | 高い | どの案件か聞いて、条件の違いを確認する |
作業を分解して積み上げた | 中くらい | 分解した単位に抜けがないか見る |
経験からの感覚 | 低い | 幅で出してもらう(最短・最長) |
根拠なし | — | 分解を依頼する。そのままは使わない |
「だいたい2週間くらいです」という答えが返ってきたら、「どんな作業に分かれますか」と聞いて、一緒に分解します。分解する過程で、本人も抜けに気づきます。
④ 何が抜けやすいか
先ほどの表を見ながら、1つずつ確認します。これは疑っているのではなく、一緒に確認するという進め方にします。
■ 「大きすぎる粒度」は分解してもらう
1件で30人日を超えるような見積りは、中身が見えていません。
粒度が大きいと、次の問題が起きます。
進捗が測れない(「20人日のうち何人日終わった」が申告になる)
抜けに気づけない
ずれたときに、どこでずれたか分からない
目安として、1件5人日以内まで分解してもらうと扱いやすくなります。分解できないなら、そこは本人もまだ見えていない部分です。
■ 幅で受け取る
1つの数字だけで受け取らず、最短と最長を聞きます。
「うまくいけば何日、引っかかったら何日ですか」
「何が起きたら、長いほうになりますか」
2つ目の質問が重要です。ここで出てきた答えが、そのままリスクの一覧になります。「他システムの仕様が分からなかったら」「テストデータが用意できなかったら」といった答えが出てきたら、それは先に手を打つべきことです。
■ 合計してから、全体で見る
個別の積み上げが終わったら、全体として見ます。
見る観点 | 確認の仕方 |
|---|---|
工程の比率 | 設計・製造・テストの割合が、経験則から大きく外れていないか |
過去案件との比較 | 同じ規模の過去案件と比べて、極端に少なくないか |
要員の山 | 特定の時期に人が集中しすぎていないか |
バッファ | 全体のバッファが確保されているか |
積み上げると全体が見えなくなるので、最後に一歩引いて、全体の形を見ます。
■ 数字を削らせない
上から「予算に合わせて削れ」と言われることがあります。このときに、数字だけを削るのは最悪の対応です。
やることは、次のどちらかです。
作るものを減らす(機能を次期に回す)
やり方を変える(既存機能で代替する、外部サービスを使う)
「同じものを作るのに、工数だけ減らす」は実現しません。減らした分は、品質か納期のどちらかで必ず出てきます。
■ まとめ
PMは、技術の詳細を評価できなくてかまいません。見るのは次の3点です。
抜けている工程はないか(レビュー・テスト・手戻り・会議)
根拠は何か。誰がやる前提か
粒度は細かいか。幅で受け取っているか
次に見積りを受け取ったら、まず「レビューと手戻りの工数はどこに入っていますか」と聞いてみてください。ここから会話が始まります。