受入テストと検収の進め方
受入テストは、プロジェクトの最後にある工程です。しかしここでもめるかどうかは、ほぼ設計段階で決まっています。
「業務で問題なく使えること」としか決めずに進むと、終盤に「これでは使えない」と言われ、誰も終わらせられなくなります。

■ テスト工程ごとの役割を整理する
まず、受入テストが何を見る工程なのかをはっきりさせます。
工程 | 何を確かめるか | 誰がやるか | 合格の判断 |
|---|---|---|---|
単体テスト | 1つの機能が仕様どおり動くか | 開発者 | 仕様書どおりか |
結合テスト | 機能をつないで動くか | 開発チーム | 設計書どおりか |
総合テスト | システム全体が要件を満たすか | 受注者のテスト担当 | 要件定義書どおりか |
受入テスト | 実際の業務が回るか | 発注者の業務担当 | 合意した合格基準を満たすか |
ここで重要なのは、受入テストだけ判断の基準が違うことです。他の工程は「文書どおりか」ですが、受入テストは「業務が回るか」です。
だからこそ、何をもって「回る」とするかを先に決める必要があります。
■ 合格基準は、設計段階で数と条件で書く
「正しく動くこと」では基準になりません。次のように書きます。
基準にならない書き方 | 基準になる書き方 |
|---|---|
画面が速く表示されること | 一覧表示は、1万件のデータで3秒以内に表示される |
業務が問題なく回ること | 1日500件の受注入力を、2人で3時間以内に完了できる |
帳票が正しく出ること | 月次請求書100件を、現行システムの出力と突き合わせて差異ゼロ |
使いやすいこと | 受注入力1件あたりの画面遷移が3回以内 |
この作業を要件定義と同時にやります。テスト計画のときに考え始めると、もう遅いことが多いです。
■ 業務側の体制を2か月前に押さえる
受入テストで最も多い遅れの原因は、技術的な問題ではありません。業務側の担当者が集まらないことです。
次の3点を、遅くとも2か月前に確定させます。
誰がテストするか(部署名ではなく個人名で)
何日間・1日何時間使えるか
その期間が、相手の部署の繁忙期と重なっていないか
月末月初、決算期、繁忙シーズン。ここに受入テストを置くと、人が来ません。相手の業務カレンダーを先に聞いておきます。
■ 不具合か変更かを、先に決めておく
受入テスト中の対立は、たいていここで起きます。
区分 | 判断の基準 | 費用の扱い | 対応のタイミング |
|---|---|---|---|
不具合 | 合意した仕様と違う動きをしている | 受注者が負担 | リリースまでに直す |
仕様変更 | 仕様どおりだが、業務に合わないと分かった | 別途見積り | 影響を判断して決める |
運用でまわす | 直さなくても手順で回避できる | 費用なし | 手順書に明記する |
この表をテスト開始前に配って、「判定はこのルールでやります」と合意しておきます。テストが始まってから決めようとすると、感情的な話になります。
■ 毎日、件数で見る
受入テスト中は、日次で次の数字を共有します。
見る数字 | 何が分かるか |
|---|---|
消化件数/全体件数 | 予定どおり進んでいるか |
未着手の件数 | 人手が足りているか |
不具合の件数(未解決) | 直す作業が追いついているか |
判定待ちの件数 | 不具合か変更かの判断が滞っていないか |
とくに「判定待ち」の件数に注意します。ここが増えているときは、判断できる人が会議に出ていないサインです。
■ 検収は、残件の扱いを書いてから
全件が完璧に終わってから検収、ということはほとんどありません。だからこそ、残件をどう扱うかを書面にします。
残っている件数と、その内容
いつまでに、誰が直すか
直すまでの間、業務をどう回すか
費用が発生するものはどれか
ここを口頭で済ませると、数か月後に「あれはやってもらえると思っていた」という話になります。検収書と一緒に、残件一覧を添えるのが確実です。
■ 発注者側PMの場合
立場が逆の場合、やるべきことは次のとおりです。
テストする人を、早い段階で名指しで確保する
合格基準を、業務の言葉で具体的に出す
現行業務の実データ(件数・パターン)を提供する
不具合の報告は、再現手順と画面を添えて出す
「とりあえず触ってみて、おかしければ言う」というやり方では、テストになりません。何を確認するかのリストを、こちらから出します。
■ まとめ
受入テストがもめるのは、テストのやり方が悪いからではなく、合格基準が決まっていないからです。
いま進行中の案件で、受入テストの合格基準が数と条件で書かれているかを確認してみてください。書かれていなければ、いまが決めどきです。