PMが自分を守るために
PMは、プロジェクトを守る役目です。しかし自分を守る役目の人は、社内に誰もいません。自分でやるしかありません。
納期が近い、トラブルが続く、顧客も社内も厳しい。そういう時期は必ず来ます。そのときに崩れないための備えを、平時のうちに整えておく話です。

■ PMは、しんどさを抱えやすい立場にある
理由ははっきりしています。
顧客と社内の両方から要求が来る
権限より責任のほうが大きいことが多い
悪い情報が最初に集まってくる
メンバーの前では不安を出しにくい
これは、その人が弱いから起きるのではありません。役割の構造からくるものです。まずそこを理解しておくだけでも、自分を責めずに済みます。
■ 自分の状態を3段階で見る
調子が悪くなるときは、いきなり悪くなるのではなく、段階があります。
通常:回っている
眠れていて、食べられている。相談されたときに、相手の話をちゃんと聞ける。先のことを考える余裕がある。この状態を保つのが目標です。
注意:無理が続いている
休日も仕事のことが頭から離れない。細かいことに苛立つ。報告や連絡を後回しにしはじめた。
この段階が重要です。ここで手を打てば、たいてい戻れます。仕事量を減らす交渉をする、上司に状況を伝える。「まだ大丈夫」と言い続けると、次の段階に進みます。
危険:一人で抱えている
眠れない日が続く。朝、出社するのがつらい。そして誰にも本当の状況を話していない。
ここまで来たら、仕事の工夫では戻りません。人に話すことが最優先です。上司、同僚、家族、社内の相談窓口。必要なら医療機関も選択肢に入れてください。
■ つぶれないための4つの備え
① 一人で背負わない
プロジェクトの本当の状況を知っている人を、社内に最低1人つくります。上司でも、隣のPMでも、先輩でもかまいません。
大事なのは、困ってから探すのではなく、平時から話しておくことです。順調なときに状況を共有していれば、悪くなったときに切り出しやすくなります。
② 悪い情報を早く出す
遅れや問題を抱え込むと、ほぼ例外なく状況は悪化します。
早く出す:選択肢が多い(人を増やす、範囲を削る、納期を相談する)
遅く出す:選択肢がない(残業で埋めるしかない)
言いにくいのは当然ですが、言わないことで背負う量は、時間とともに増えます。
③ 線を引く
すべての連絡に即答しなくてよい、と自分で決めます。
夜間や休日に来た連絡は、緊急のもの以外は翌営業日に返す
相談を受ける時間帯を決めておく
線を引くと信頼を失うのではないかと心配になりますが、実際には逆です。いつ返ってくるかが分かるほうが、相手は安心します。
④ 戻る場所を持つ
仕事以外の時間を、予定として入れておきます。体を動かす、よく寝る、仕事と関係ない人と会う。
忙しいときほど削られる部分ですが、ここを削ると回復する手段がなくなります。
■ 「自分がいないと回らない」は危険信号
責任感の強いPMほど、この状態になります。しかし、これはプロジェクトにとってもリスクです。
情報がPMの頭の中だけにある
PMが休むと止まる作業がある
判断がすべてPMに集まっている
対策は、記録を残すことと、判断を分けることです。課題表と決定事項ログがきちんと書かれていれば、誰かが代わりに見られます。「自分が休んでも1日は回る」状態を目指します。
■ 責任の範囲を正しく理解する
PMが責任を持つのは、状況を正しく伝え、判断の材料を出し、決められたことを実行することまでです。
次のものは、PM一人の責任ではありません。
会社が受けた無理な条件
提示された予算と納期そのもの
他部門の体制不足
これらを自分の責任だと考えると、際限がなくなります。変えられることと、変えられないことを分けるのは、PMの技術のひとつです。
■ まとめ
プロジェクトには代わりがありますが、自分の健康には代わりがありません。
「注意」の段階で気づいて、人に話す。それだけで防げることが、かなりあります。もしいま、つらい状態が続いているなら、早めに身近な人や社内の窓口に相談してください。