生成AIをPM業務に使う
生成AIは、PMの仕事のかなりの部分を軽くしてくれます。ただし、何を任せて、何を任せないかを分けておかないと、かえって手戻りが増えます。
結論から言うと、AIは「たたき台を作る係」、PMは「決める人」です。この線を引くだけで、使い方が安定します。

■ 任せてよいのは「下書きを作る作業」
ゼロから書き起こすのに時間がかかり、しかも正解が1つに決まらない作業は、AIが得意です。
議事メモを整える
会議中にとった断片的なメモを渡して、「決まったこと」「宿題(担当と期限)」「保留」の3つに分けてもらいます。自分で整理すると20分かかるものが、数分で形になります。
出てきたものは、そのまま配りません。決定事項の部分だけは、必ず自分の記憶と突き合わせます。ここを間違えると、あとで大きな話になります。
WBSのタスクを洗い出す
「こういうシステムを作る。このフェーズで必要な作業を列挙して」と頼むと、30個ほど返ってきます。そのうち使えるのは半分くらいですが、自分が忘れていた作業が2、3個混ざっていることがよくあります。
抜け漏れを見つける用途として有効です。そのまま工程表にする用途ではありません。
リスクの候補を挙げてもらう
リスク洗い出しは、経験のあるPMでも自分の経験の範囲に偏ります。「この種類のプロジェクトで起きがちな問題を挙げて」と聞くと、自分の視野の外にあるものが出てきます。
報告文の言い回しを整える
悪い知らせを伝える文章は、書くのに時間がかかります。事実と対応案を箇条書きで渡して、「経営層向けに、事実を曖昧にせず、簡潔に」と指定すると、下書きが数十秒でできます。
長い文書の要点をつかむ
100ページの仕様書や、長い提案依頼書を読む前に、全体の構造をつかむ用途です。ただし、契約や要件の細部は必ず原文を読みます。要約で済ませてよい文書と、そうでない文書があります。
■ 任せてはいけないこと
次の判断は、AIに出させてはいけません。
見積りの最終的な数字(過去の実績とメンバーの力量を知っているのはPMだけです)
納期を守れるかどうかの判断
顧客に何を伝え、何を伝えないか
メンバーの評価や配置
契約・費用に関わる約束
これらに共通するのは、結果に責任を持つ人がやらなければならない判断だということです。AIの出力を根拠に決めても、責任はPMに残ります。
■ 機密情報は入れない
いちばん重要な注意点です。
顧客名・案件名
個人情報(氏名、メールアドレス、社員番号)
契約金額・見積り明細
未公開の仕様書・設計書
会社が許可しているツールと、許可されている範囲を必ず確認します。判断に迷ったら、固有名詞を外して一般化した形で聞きます。「A社の案件で」ではなく「小売業の在庫管理システムで」と置き換えるだけで、たいていの相談は成立します。
■ 上手に頼むための3つのコツ
① 前提と制約を先に渡す
「WBSを作って」だけだと、一般論が返ってきます。期間、人数、使う技術、譲れない制約を先に書くと、使える精度になります。
② 読み手を指定する
「経営層向け」「開発メンバー向け」「発注元の業務担当向け」で、同じ内容でも書き方は変わります。指定しないと、どこにも合わない文章が出てきます。
③ 案を複数もらう
1案だけ出させると、それが正解に見えてしまいます。「3案、方向性を変えて」と頼むと、選ぶ側の視点に戻れます。
■ 数字と固有名詞は必ず確認する
生成AIは、もっともらしい間違いを自然な文章で書きます。とくに危ないのは次の3つです。
工数や日数の数字
製品名・バージョン・規格の名称
過去の決定事項に関する記述
これらは、そのまま報告書に載せません。出典が自分の手元にあるかどうかを確認してから使います。
■ まとめ
生成AIは、PMの作業時間を確実に減らします。ただし減るのは「書く時間」であって、「決める時間」ではありません。
下書きはAIに、判断はPMに。まずは次の議事メモの整理から試してみてください。効果が分かりやすい作業です。