要件定義書をPMとしてレビューする
要件定義書のレビューに呼ばれたとき、PMは何を見ればよいのでしょうか。
技術的な正しさは、設計担当や有識者が見ます。PMが見るのは、後で問題になりそうな箇所です。見るべき観点は決まっています。

■ ① 目的とつながっているか
それぞれの要件が、立ち上げ期に合意した目的のどれを実現するのかを確認します。
つながらない要件が出てきたら、スコープ外が紛れ込んでいる疑いがあります。「この要件は、どの目的のためですか」と聞いてみます。答えられなければ、なぜ必要かを一緒に確認します。
■ ② 曖昧な言葉が残っていないか
次の言葉が出てきたら、その場で聞き返します。
「適切に」「必要に応じて」「原則として」「基本的に」
「柔軟に」「速やかに」「使いやすく」「可能な限り」
「◯◯等」「◯◯など」
これらは、後で解釈が割れる場所です。設計する人と使う人で違う意味に取られ、テストで発覚します。
聞き方は具体的にします。
「この『適切に』は、具体的にどういう状態ですか」
「『必要に応じて』は、誰がどう判断しますか」
「『速やかに』は何分以内ですか」
その場で決まらないときは、「未確定」と書いて、いつ誰が決めるかを課題管理表に起票します。曖昧なまま通さないことが大事です。
■ ③ 数量と性能が書いてあるか
数字がないと、作れませんし、テストでも判定できません。
1日に何件処理するのか。ピーク時は何件か
同時に何人が使うのか
何秒以内に応答する必要があるのか
データは何年分保持するのか
とくにピーク時の数字は忘れられがちです。平常時は問題なくても、月末の締め処理で止まることがあります。
■ ④ 例外のときどうするか
正常に進んだときのことは書いてあるが、例外が書かれていないことがよくあります。
エラーが起きたとき、どう表示し、どう復旧するか
データがゼロ件のとき
締め日をまたいだとき、年度をまたいだとき
途中で中断したとき
入力を間違えたとき、取り消せるか
ここが抜けていると、テストの終盤で大量に噴出します。要件の段階で埋めておくと、後の手戻りが大きく減ります。
■ ⑤ 誰が使うのか
使う人によって、必要な作り込みが変わります。業務に詳しくない人も使うのか。何人が、どの頻度で使うのか。
これは教育とマニュアルの工数に直結します。使う人が100人いるなら、研修の計画が必要になります。
■ ⑥ 移行と運用が入っているか
忘れられやすい3点です。
既存データの扱い どこまで移行するか、移行しないデータはどうするか
締め処理・定期処理 日次・月次でやることが書かれているか
障害時の代替手段 システムが止まったとき、業務をどう回すか
これらは要件定義では扱われず、稼働直前に「そういえば」と出てくることが多い項目です。
■ ⑦ 未確定が明示されているか
すべてを決めきれないのは当然です。問題は、決まっていないことが決まっているように書かれていることです。
未確定の箇所は「未確定」と明記し、いつ誰が決めるかをセットで書きます。これがあれば、設計を進める側も判断できます。
■ ⑧ テストできる書き方か
「この要件は、どうやって確かめますか」と聞いてみます。答えられない要件は、まだ決まっていません。
「操作性を向上させる」は確かめられません。「現在3画面の操作を1画面で完了できる」なら確かめられます。
■ ⑨ やらないことが書いてあるか
対象外の業務・機能が明記されているかを確認します。書いていないと、後から「当然入ると思っていた」という話になります。
■ レビューの進め方
事前に読んで、指摘したい箇所に印をつけてから参加する
その場で全ページを読み上げない。論点だけを扱う
指摘は「直してください」ではなく「ここはどうなりますか」と聞く形で
その場で決まらないものは、課題管理表に担当と期限つきで起票する
承認したら、日付を入れて記録する
■ まとめ
PMが要件定義書で見るのは、技術の正しさではなく「後で揉めそうな箇所」です。
とくに効くのは、曖昧な言葉をその場で聞き返すことと、「これはどうテストしますか」と聞くことの2つです。この2つだけでも、レビューの質が大きく変わります。