ベンダーが期日を守れないとき
「来週には出します」と言われ続けて、3週間が経った。ベンダーからの成果物が期日どおりに出てこない。発注者側のPMにとって、頭の痛い状況です。
このとき、いきなり「契約上どうなっているのか」と言い出すのは早すぎます。遅れの原因によって、有効な打ち手はまったく違うからです。

■ まず、遅れの原因を見分ける
① 要員が足りない
約束した人数が実際には入っていない。あるいは、別案件に取られている。よくあるケースです。
確認するのは、体制表と実績工数です。「今月、このプロジェクトに何人日投入されていますか」と具体的に聞きます。感触ではなく数字で確認します。
② 技術で詰まっている
想定外の技術的な難所にぶつかっている。担当者が一人で抱えて、周りに言えていない。
この場合、催促しても解決しません。有識者を入れる、方式を変える、その機能だけ切り離すといった打ち手が必要です。「何に詰まっているか」を具体的に聞くところから始めます。
③ 仕様が固まらない
実は、こちら側の回答待ちが原因だった、というケースも少なくありません。「あの件の回答をお待ちしています」と言われていたのに、社内で止まっていた。
この場合、問題はベンダーではなく発注者側にあります。まず自分たちの回答期限を守れる体制にします。
④ 優先順位が低い
他の顧客の案件が優先されている。契約金額や関係性から、こちらの優先度が低く扱われている。
これは現場のリーダー同士では動きません。管理職のラインで話す必要があります。
■ 段階的に上げる
原因が分かったら、対応を段階的に上げていきます。いきなり最上段に行かないことが大事です。最初から契約の話を持ち出すと、関係が壊れ、その後の協力が得られなくなります。
第1段階:現場のリーダー同士
週次定例の場で、事実と原因を確認します。「何が原因で遅れているのか」を具体的に聞き、回復計画を出してもらいます。
このとき、期限を切ります。「3営業日以内に、いつまでに回復できるかを教えてください」。期限のない依頼は、後回しにされます。
第2段階:書面で正式に依頼する
口頭のやりとりを、文書に切り替えます。「回復計画書の提出をお願いします」とメールで正式に依頼します。
これは責めるためではなく、相手の社内で動きやすくするためでもあります。書面での依頼があると、担当者は上司に相談しやすくなります。
第3段階:双方の管理職を入れる
要員の配置や優先順位は、現場では動かせません。双方の管理職を入れた会議を設定します。
この場の設計が重要です。責める場ではなく、対策を決める場として設計します。
事実(何がいつまでに必要で、いまどうなっているか)を先に共有する
原因についての認識を合わせる
「どうすれば回復できるか」を一緒に考える形にする
決まったことを議事録に残し、双方で確認する
第4段階:契約上の対応
それでも改善しない場合に、契約書の納期・検収・遅延に関する条項を確認します。自社の法務や調達部門に相談します。
ここまで来る前に、必ず記録が残っていることが前提です。いつ、何を依頼し、どう回答されたか。記録がなければ、契約上の主張もできません。
■ 自分たちの側を点検する
ベンダーの遅れを問題にする前に、発注者側として次を確認します。
仕様に関する質問への回答が、期限内に返せているか
レビューの依頼に対して、約束した日までに返せているか
変更依頼を、小出しに出していないか
テスト環境や接続先の準備が、約束どおりできているか
ここに漏れがあると、遅れの責任を問う立場が弱くなります。まず自分たちの約束を守っている状態を作ります。
■ 日頃からやっておくこと
週次定例で「気になっていること」を出す枠を設けておく(言いやすい場を作る)
成果物の期日を、大きな塊ではなく中間の節目で置く(遅れに早く気づける)
相手のリーダーと、定例以外でも話せる関係を作っておく
とくに2つ目が効きます。1か月後に一括で出てくる契約より、週単位で中間成果を確認できる形のほうが、遅れに早く気づけます。
■ まとめ
ベンダーの遅れは、催促の回数では解決しません。原因を見分け、段階的に上げる。これが基本です。
そして、どの段階でも記録を残します。記録は相手を追い詰めるためではなく、後から双方が判断できるようにするためのものです。