バッファをどこに、どれだけ置くか
工程表を引くとき、必ず出てくるのがバッファ(余裕)の話です。「余裕を見ておいて」と言われる一方で、「なぜこんなに日数がかかるのか」とも言われます。
問題は、バッファの量ではなく置き場所です。同じ日数でも、置き方を変えるだけで計画の強さが変わります。

■ 個別に持った余裕は、余っても返ってこない
よくあるのは、各担当者が自分の作業に少しずつ余裕を足す形です。「5日でできるけれど、念のため8日と言っておこう」。悪意はなく、責任感からそうなります。
ところが、この余裕はプロジェクト全体には効きません。理由は2つあります。
学生症候群 余裕があると、着手が遅れます。8日もらったら、3日目まで手をつけない
パーキンソンの法則 作業は、与えられた時間をすべて使い切るように膨らみます。5日で終わっても、8日目に出てきます
結果として、余った余裕は誰にも返ってきません。一方、遅れたタスクの分はそのまま全体の遅れになります。余裕を足したのに、遅れは減らないという状態です。
■ 見積は中央値で、余裕はまとめて置く
やり方を変えます。各タスクの見積は「順調にいけばこれくらい」という現実的な値で出してもらい、安全余裕は工程の後ろにまとめて置きます。
図のように、3タスクにそれぞれ3日ずつ足すと合計24日ですが、まとめて6日置けづ21日で済みます。しかも、遅れたタスクに融通できるので、実際の耐性は高くなります。
集約すると総量を減らせるのは、すべてのタスクが同時に遅れることはまずないからです。
■ どこに置くか
① 合流バッファ
複数の作業が合流する直前に置きます。結合テストの前、移行リハーサルの前、一斉切替の前。1本でも遅れると全体が止まる場所です。
合流点は、遅れが集まる場所です。3本のうち1本でも遅れれば先に進めないため、確率的にいちばん危ない箇所になります。
② プロジェクトバッファ
稼働日の直前に置きます。目安として、クリティカルパス上の作業日数合計の10〜20%程度です。
プロジェクトが厳しくなると、ここから削りたくなります。しかしここを削ると、遅れがそのまま納期に出ます。削るのは最後の手段です。
③ 外部要因のためのバッファ
自分たちでコントロールできない部分には、別に余裕を見ます。他部署のレビュー待ち、他システム側の対応、機材の納品、法令対応の確認など。
ここは自分の努力では縮められないので、楽観的に見積もると必ず遅れます。
■ バッファの消費を見える化する
バッファを置くだけでは足りません。どれだけ使ったかを毎週見ることで、初めて管理になります。
週次で「今週バッファを何日使ったか/残り何日か」を報告する
残りが30%を切ったら対策を打つ、と最初に決めておく
使った理由を1行で記録する(後で見積の精度を上げる材料になります)
バッファの消費ペースは、進捗率より早く危険を教えてくれます。工程の半分で7割使っていれば、その時点で手を打てます。
■ 発注元への説明のしかた
「バッファを6日置いています」と伝えると、「その6日を削れないか」と言われることがあります。次のように説明します。
「各作業の見積には余裕を入れていません。現実的な日数で出しています」
「そのぶん、後ろにまとめて置いています。個別に持つより総量は少なくなります」
「毎週、バッファの残りを報告します。予定どおり進めば、この分は前倒しになります」
隠したバッファは説明できませんが、見えるバッファは交渉の材料になります。
■ やってはいけないこと
バッファを隠す 見えないバッファは、管理できず、いつのまにか消えます
全タスクに一律◯%足す リスクの大きさは作業ごとに違います。一律は根拠になりません
バッファを最初から予定に組み込む 「バッファ込みで20日」と伝えると、20日が標準になります
遅れたときだけ黙って使う 使ったことを報告しないと、残量が共有されません
■ まとめ
バッファは、量よりも置き場所と見える化です。各タスクに隠すのではなく、合流点と最後にまとめて置き、消費を毎週報告する。
次に工程表を引くときは、「この余裕はどこに置いてあり、誰が見えているか」を確認してみてください。