未来PM
PjMノウハウ

要件が固まる前に「いつ終わる・いくら」と聞かれたら

立ち上げ期のPMが、いちばん困る質問があります。「で、いつ終わるの? いくらかかるの?」。

まだ要件が固まっていない段階で聞かれても、正確には答えられません。かといって「分かりません」で済ませると、頼りない印象を与えます。ここでの答え方には、型があります。

超概算・概算・確定見積の精度の幅と、金額・納期を聞かれたときの答え方4つを示した図


■ 見積の幅は、分かっている量で決まる

見積の精度は、PMの能力ではなくその時点でどれだけ決まっているかで決まります。PMBOK第6版では、段階ごとに次のような精度のレンジが示されています。

  • 超概算(ROM) 目的だけが決まっている段階。−25%〜+75%程度の幅

  • 概算 やること/やらないことが決まった段階。−15%〜+25%程度

  • 確定見積 設計が終わり、作るものが具体的に決まった段階。−5%〜+10%程度

ここで重要なのは、幅があることは見積の欠陥ではなく、正しい性質だということです。分かっていない段階で1つの数字だけを答えると、その数字が約束として扱われます。


■ 答え方の4つの型

① 幅で答える

「3千万円くらいです」ではなく、「今の情報だと、3千万円から5千万円の幅になります」と答えます。幅を出すことで、まだ不確実な段階だということが伝わります。

幅を出すのをためらう気持ちは分かります。「そんなに開きがあるのか」と言われそうだからです。しかし、幅を隠して1点で答えたほうが、後で大きな問題になります。

② 前提を添える

数字には必ず前提があります。「他システムとの連携が2本までなら」「既存のマスタがそのまま使えるなら」。この前提を数字とセットで伝えます。

前提を書いておけば、前提が崩れたときに見積を見直す根拠になります。前提のない数字は、あとで動かせません。

③ いつ精度が上がるかを言う

「今は幅が広いですが、要件整理が終わる6月末には、幅を半分にしてお出しします」。いつになれば答えられるかを示すと、相手は待てます。

「分かりません」と「6月末には出せます」では、受け取られ方がまったく違います。後者は、状況を把握しているPMの答え方です。

④ 動かせない条件を確認する

金額や納期を聞かれているとき、実はすでに答えが決まっていることがあります。「予算は3千万円で通してある」「11月稼働は動かせない」。

そうであれば、聞き返します。「もし予算が先に決まっているなら、その範囲でできる形を一緒に考えたほうが早いと思いますが、いかがでしょうか」。見積の問題ではなく、スコープの問題に置き換えるのです。


■ やってはいけないこと

  • その場の勢いで数字を言う 一度口に出した数字は、前提なしで一人歩きします

  • 安全のために大きく盛る 根拠のない上積みは、後で説明できません。バッファは前提として明示します

  • 「精一杯やります」で逃げる 数字を避けると、相手は自分に都合のよい数字を想像します

  • 開発側に確認せずに答える 実際に作る人の感触を聞かずに出した数字は、後で守れません


■ 幅を縮めるためにやること

幅が広いのは情報が足りないからです。縮めるには、分からないところを潰します。

  • いちばん大きい不確実性を特定する(連携先の数、移行データの状態、業務ルールの複雑さ)

  • そこだけ先に調べる。必要なら短期間の調査フェーズを提案する

  • 調べた結果を見積に反映し、更新した幅を出す

「全体をきちんと見積もる」より、幅を広げている原因を1つずつ潰すほうが早く縮まります。


■ 更新することを最初に合意しておく

見積は1回出して終わりではありません。立ち上げ時に、次のことを伝えておきます。

  • いま出す数字は超概算であること

  • 要件整理後と設計完了後に、改めて出し直すこと

  • 前提が崩れたときは、その時点で見直すこと

これを最初に言っておかないと、後から数字が変わったときに「話が違う」と言われます。更新することも含めて、最初に合意しておきます。


■ まとめ

要件が固まる前の見積は、当てるものではなく幅と前提を共有するものです。幅・前提・いつ精度が上がるか。この3つをセットで答えるだけで、「答えられないPM」から「状況を把握しているPM」に変わります。

次に数字を聞かれたら、まず「幅で答える」を試してみてください。

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