最初の2週間でPMがやること
「来月からこのプロジェクトのPMをお願いします」。そう言われてから最初の2週間の使い方で、プロジェクトの難易度は大きく変わります。
ありがちな失敗は、いきなり工程表を引き始めることです。まだ何も分かっていない段階で作った工程表は、ほぼ確実に引き直しになります。最初の1週間はひたすら聞く、2週目で形にする。この順番を守ります。

■ 1週目:聞く
Day 1–2 既存の資料を全部集めて読む
提案書、見積書、契約書、過去の議事録、もしあれば要件定義の下書き。散らばっている資料を1か所に集めて読みます。ここで知りたいのは次の3点です。
すでに約束してしまっていること(金額・納期・範囲)
まだ決まっていないこと
資料の間で食い違っていること
とくに3番目が重要です。提案書と契約書で範囲が違っているようなケースは珍しくありません。早い段階で見つければ調整できますが、終盤で見つかると大問題になります。
Day 3–4 発注元の責任者に直接会う
メールではなく、時間をとって会います。聞くのは次のことです。
「このプロジェクトが成功したと言えるのは、どういう状態になったときですか」
「いちばん心配していることは何ですか」
「絶対に動かせない条件は何ですか」
3つ目の「動かせない条件」は必ず聞きます。納期なのか、費用なのか、機能なのか。ここが分かっていないと、トレードオフの判断ができません。
また、この場はPMとして顔を覚えてもらう場でもあります。問題が起きてから初めて話す相手より、最初に一度きちんと話した相手のほうが、後で相談しやすくなります。
Day 5 関係者を洗い出す
体制図に載っている人だけが関係者ではありません。次の観点で洗い出します。
成果物を実際に使う人(現場の担当者)
承認に関わる人(部門長、情報システム部門、監査など)
作業を依頼することになる人(他システムの担当者、外部ベンダー)
反対しそうな人
最後の「反対しそうな人」を早めに見つけておくのがコツです。終盤で反対されると、手の打ちようがなくなります。
■ 2週目:形にする
Day 6–7 プロジェクト概要シートを書く
1週目に聞いた内容を、A4で1枚にまとめます。背景・目的・成功基準・スコープ・スコープ外・体制・マイルストーン・前提と制約の8項目です。
書いてみると、聞き漏らしている項目が必ず出てきます。空欄が見つかったら、その時点で確認に行きます。
Day 8–9 体制と会議体を決める
役割は個人名で決めます。同時に、会議体をこの段階で押さえておきます。
定例会議の曜日・時間・出席者(発注元との定例、開発チーム内の定例)
問題が起きたときに誰に上げるか(エスカレーションの経路)
決裁が必要なときの会議はいつか(月次の部内会議など)
とくに決裁者のスケジュールは早く押さえることです。決裁者ほど予定が埋まっています。後から「来月まで空いていません」と言われると、それだけで1か月遅れます。
Day 10 決裁者に通して、キックオフを設定する
概要シートを決裁者に説明し、承認をもらいます。そのうえでキックオフ会議を設定します。ここまでで2週間です。
■ 詳細な工程表は、まだ作らない
「2週間経っても工程表がないのは遅いのでは」と感じるかもしれません。しかし、要件が固まっていない段階の詳細工程表は、精度が出ないわりに大きな手間がかかります。
この段階で必要なのは、3〜5個のマイルストーンだけです。詳細な工程表は、スコープが固まってから作ります。マイルストーンさえ置いてあれば、「いつまでに何が終わっていればよいか」は共有できます。
■ 途中から引き継いだ場合
すでに走っているプロジェクトを引き継ぐときも、やることは同じです。ただし時間がないので、次の順に絞ります。
課題管理表と直近3回分の議事録を読む(いま何が詰まっているか)
前任者に、資料に書かれていない事情を聞く(人間関係、過去の経緯)
発注元の責任者に挨拶し、懸念を聞く
概要シートの8項目を埋めてみて、空欄を確認しに行く
■ まとめ
最初の2週間は、成果物が少なく見えるため不安になります。しかし、この期間に聞いておかなかったことは、後で必ず問題として戻ってきます。
2週間の終わりに、概要シート1枚・体制図・課題管理表・会議体の予定。この4つが手元にあれば、立ち上げとしては十分です。