「言った・言わない」を防ぐ記録の残し方
プロジェクトの終盤でいちばん体力を奪うのが、「言った・言わない」の応酬です。「その仕様で合意しましたよね」「いや、そんな説明は受けていない」。どちらも嘘をついているつもりはなく、記憶が食い違っているだけです。
これを人間の記憶力で防ぐことはできません。防げるのは、書き方と配り方の仕組みだけです。この記事では、明日から使える形でその仕組みをまとめます。

■ 議事録を長く書いても、争いは防げない
まじめなPMほど、会議の発言をすべて残そうとします。ところが、長い議事録ほど読まれません。読まれない記録は、後から「見ていない」と言われます。
記録の目的は、会議の再現ではなく後から参照して判断できることです。必要なのは次の3つだけです。
決まったこと
決まらなかったこと(誰がいつまでに決めるか)
次にやること(誰がいつまでに)
この3つが書いてあれば、A4で1枚に収まります。1枚なら読まれます。
■ 決定事項は「5点セット」で書く
「帳票Bは次期対応とする」とだけ書くと、3か月後に必ず揉めます。なぜそうしたのかが残っていないためです。決定事項は、次の5つをそろえて1行にします。
いつ どの会議で決まったか(日付+会議名)
誰が 誰の承認で決まったか
何を 決まった内容
なぜ そのときの前提・理由
いつまでに誰が その決定に伴う作業の担当と期限
とくに「なぜ」が効きます。前提が変わったときに、決定を見直すべきかどうかを判断できるからです。前提が書いていない決定は、覆すことも守ることもできません。
■ 記録は3層に分けて置く
すべてを1つの議事録ファイルに書き足していくと、どこに何があるか分からなくなります。役割の違う3つに分けます。
議事メモ その会議で話したこと。当日中に配る。会議中に画面共有しながら書き、その場で認識を合わせるのが最も確実です
決定事項ログ 決まったことの一覧。議事メモから転記して積み上げます。常に最新版が1か所にある状態を保ちます
課題管理表 まだ決まっていないこと。担当と期限を必ず入れ、「検討中」のまま置かないようにします
課題管理表の項目が決まったら、決定事項ログへ移します。この移動が滞っていると、プロジェクトは必ず遅れます。
■ 配り方で確定させる
書くだけでは足りません。相手が受け取って、異議を出さなかったという状態を作る必要があります。そのために、プロジェクトの開始時に次のルールを合意しておきます。
議事メモは会議当日中に送る
指摘は翌営業日の17時まで
指摘がなければ、その内容で確定とする
この一文を最初に合意しておくと、後から「聞いていない」と言われたときに、記録と送信履歴で確認できます。相手を責めるためではなく、お互いが安心して前に進むための取り決めとして説明すると、たいてい受け入れられます。
■ チャットと口頭を、記録に着地させる
実際の意思決定は、会議よりも立ち話やチャットで起きることが多いものです。ここを拾えないと、記録に穴が開きます。
口頭で決まったことは、その場でスマートフォンにメモし、当日中に決定事項ログへ入れる
チャットで決まったことは、「では◯◯ということで進めます」と自分の言葉で書き直して投稿し、相手のリアクションをもらう
重要な合意は、チャットだけで終わらせずメールにも残す。チャットは流れて検索しづらくなります
■ やってはいけないこと
会議の翌週に議事録を出す。記憶が薄れ、指摘も出にくくなります
決定を覆したときに、古い記録を書き換える。取り消し線で残し、いつ誰の判断で変わったかを追えるようにします
「たぶんこうだったはず」で書く。曖昧な部分は「未確定」と明記して、次の会議の議題にします
自分だけが持っているファイルに書く。全員が同じ場所を見ている状態が前提です
■ まとめ
記録は、後から誰かを責めるための証拠ではありません。未来の自分とチームが迷わないための道具です。目的をそう置くと、書く内容も配り方も自然に決まります。
まずは次の定例から、議事メモを会議中に画面共有しながら書いてみてください。それだけで、「言った・言わない」はかなり減ります。