対立が起きたときの間の入り方
プロジェクトが進むと、必ずどこかで意見がぶつかります。発注者と開発チーム、業務部門と情報システム部門、設計担当とテスト担当。PMはその真ん中に立たされます。
このとき、まずいのはどちらが正しいかを先に決めようとすることです。対立には種類があり、種類によって入り方がまったく違います。見分けないまま入ると、こじれます。
■ 対立には3つの種類がある

■ 1. 事実の対立 ―― 見ている情報が違う
「そんな仕様で合意した覚えはない」「前回の会議でそう決まったはずだ」。よくあるのがこの型です。悪意があるわけではなく、単に持っている情報が食い違っています。
この型はPMがいちばん解きやすい対立です。議事録、仕様書、メールを並べて事実を確定させます。ただし、「どちらが間違っていたか」を追及しないことが大事です。追及した瞬間に、事実の対立が感情の対立に変わります。
記録を並べて、何がいつ決まったかを確認する
記録がなければ「今のところ決まっていない」と認める
過去の責任ではなく、これからどうするかに話を移す
決め直した内容は、その場で書いて両者に配る
■ 2. 利害の対立 ―― 守りたいものが違う
「品質を優先すべきだ」「いや納期が最優先だ」。どちらの言い分も、その人の立場から見れば正しい。これが利害の対立です。正解が存在しないので、議論を続けても決着しません。
ここでPMがやるのは、説得ではなく判断の基準を先に決めることです。手順は次のとおりです。
主張ではなく理由を聞く。「なぜそれが必要なのか」を両者から引き出す
理由のレベルまで降りると、両立できる案が見えてくることが多い(例:全機能ではなく、まず必要な機能だけ先に出す)
それでも決まらないときは、プロジェクトの目標に戻る。何のためにこのプロジェクトをやっているのかを確認する
基準に照らしても決まらないなら、その場で決めずに決裁者へ上げる
PMが自分で無理に裁定すると、負けた側に不満が残ります。基準に沿って決まった形にすることで、PM個人への不満になりません。
■ 3. 感情の対立 ―― 扱われ方への不満
「あの人の言い方が気に入らない」「こちらの都合をまったく考えていない」。表向きは仕事の話をしていても、中身は人間関係の問題であることがあります。
この型を全体会議の議題にしてはいけません。人前で扱うと必ず悪化します。会議の外で、個別に話を聞くところから始めます。
まず、それぞれから別々に話を聞く。反論せず最後まで聞く
人柄の話ではなく、具体的に何が起きたかに戻す
すれ違いの原因が役割の曖昧さにあることが多い。誰が何を決めるのかを引き直す
連絡の経路を変えるだけで収まることもある(直接やりとりを、PM経由に変える等)
■ 間に入るときの共通の順番
どの型であっても、次の順番を守ると大きく外しません。
STEP 1 両者を同席させる前に、個別に話を聞く いきなり対面させると、引くに引けなくなります
STEP 2 事実・解釈・感情を分けて書き出す 「納期が2週遅れる」は事実、「軽く見られている」は感情です
STEP 3 判断の基準を先に合意する 結論より先に「何を優先して決めるか」を合意します
STEP 4 決めた内容・担当・期限をその場で記録して配る ここを省くと、同じ対立が再発します
■ PMがやってはいけないこと
どちらかの味方をする。以降、PMは中立の立場を失います
放置して自然に収まるのを待つ。対立は時間が経つほど型が変わり、感情の対立になります
メールやチャットの往復で解決しようとする。文字は感情を増幅させます。声か対面に切り替えます
両者の言い分を、そのまま相手に伝え返す。表現を事実に直してから伝えます
■ まとめ
対立そのものは悪いことではありません。誰も何も言わないプロジェクトのほうが、後で大きな問題になります。PMの役割は、対立をなくすことではなく、対立が意思決定につながるように整えることです。
ぶつかっている場面に出会ったら、まず「これは事実の話か、利害の話か、感情の話か」と自分に問うてみてください。それだけで、次にかける一言が変わります。