決裁者に判断を仰ぐ資料の作り方
経営層に状況を報告したのに、何も決まらないまま会議が終わる。次の定例でも同じ議題が載る。その間、プロジェクトは止まったままです。
原因の多くは、判断できる形で持っていっていないことにあります。状況の説明を受けただけでは、相手は決めようがありません。
■ 1枚に収める構成

この構成の要点は、冒頭に「何を決めてほしいか」を置いていることです。状況説明から始めると、相手は最後まで聞かないと何を求められているのか分かりません。
もうひとつが最後の行、「決めない場合どうなるか」です。判断が先送りされる最大の理由は、急ぐ理由が伝わっていないことです。「◯月◯日を過ぎると①しか選べなくなります」と事実で示すほうが、「お急ぎください」と書くより動きます。
■ 選択肢は2〜3個
1個だと「それで進めてください」となり、判断ではなく承認になります。4個以上あると比較の負荷が上がり、結局「持ち帰って検討」になります。
各案には代償を必ず添えます。「稼働日を延ばす(追加費用なし/業務部門の受け入れ準備をやり直す必要あり)」のように、良い面と悪い面を両方書きます。都合のよい面だけ並べると、後から「そんな話は聞いていない」になります。
推奨案は示してよく、むしろ示すべきです。現場を最も知っているのはPMです。ただし、推奨と決定は別であることを、書き方で示します。「②を推奨します」とは書いても、「②で進めます」とは書きません。
■ 数字を入れる
決裁者が判断に使うのは、ほぼ数字です。
日数:「遅れます」ではなく「3月10日が3月24日になります」
金額:「費用が増えます」ではなく「約180万円の増加です」
影響範囲:「業務に影響します」ではなく「月次処理の3業務が対象です」
正確な数字が出せない場合は、幅で示します。「120万〜200万円」でも、何も書かないよりはるかに判断しやすくなります。
■ 技術的な経緯は削る
PMが時間をかけて調べた経緯は、書きたくなります。しかし決裁者にとっては、判断に使わない情報です。
原因の説明は1行で十分です。詳細は口頭で聞かれたときに答えるか、別紙に回します。1枚に収める制約が、内容を判断に必要なものだけに絞ってくれます。
■ 事前に根回しをしておく
会議の場で初めて聞く話は、判断されにくいものです。とくに金額や日程が動く話では、その場で即断される期待は持たないほうが現実的です。
有効なのは、会議の前にキーパーソンに個別で当てておくことです。「来週こういう相談を上げます」と伝え、反応を見ておく。懸念が出れば、資料に答えを織り込めます。会議は合意を取る場であって、議論を始める場ではない、という設計にします。
■ 決まったら記録する
判断してもらったら、その場で決定事項を読み上げ、議事録に残します。
「②で進める。ただし機能Bの次期対応は年度内に着手する条件つき」といった形で、条件も含めて書きます。後から「そこまでは言っていない」という食い違いを防げます。
■ チェックリスト
冒頭に「何を決めてほしいか」を書いたか
選択肢を2〜3個に絞ったか
各案に代償を書いたか
推奨案とその理由を示したか
日数・金額を数字で入れたか
決めない場合どうなるかを書いたか
技術的な経緯を削ったか
事前に主要な相手に当てておいたか
決裁者は、プロジェクトの詳細を知りません。知らない相手が判断できる形に整えるのが、PMの仕事です。資料が1枚に収まらないときは、たいてい判断に不要な情報が混ざっています。