セクション別サマリテーブル
セクション |
主な内容 |
追加すべき要素/成果物(アウトプット) |
プロジェクト概要 |
背景・目的、期間、期待効果 |
プロジェクトサマリ(1ページ)、想定ベネフィット(定量/定性) |
目標・成果物 |
SMART目標、Deliverables |
KPI定義表、測定方法、オーナー |
スコープ管理 |
In/Out、境界線 |
スコープ宣言、変更管理フロー(Change Control) |
スケジュール |
WBS、マイルストーン、ガント |
WBS辞書、マイルストーン表、クリティカルパス |
体制・役割分担 |
RACI、組織図 |
ガバナンス図、意思決定権限表、エスカレーションルート |
リソース計画 |
人員・資材・外注 |
スキルマップ、採用/調達計画、稼働表 |
コスト計画 |
見積り、予算、CF |
コストブレイクダウン、コンティンジェンシー、支払スケジュール |
リスク管理 |
リスク一覧、対応 |
リスクレジスター(定量化)、リスクトリガー、モニタリング頻度 |
品質管理 |
QA/QC、テスト |
受入基準、テスト計画、品質チェックリスト |
コミュニケーション計画 |
ステークホルダー |
コミュニケーション表、報告テンプレ、会議ルール |
課題管理 |
Issue管理 |
課題ログ(状態・優先度)、解決期限、オーナー |
前提条件・制約 |
Assumptions / Constraints |
依存関係マトリクス、法規制チェックリスト |
用語定義・付録 |
略語、参考資料 |
テンプレ群(Change Request、CRF、Acceptance Form) |
各セクション詳細(テンプレ&チェック付き)
1. プロジェクト概要
要旨:経営層が1分で理解できるサマリを最初に置く(目的、範囲、期間、主要成果)。
推奨フィールド(テンプレ):プロジェクト名/プロジェクトID/バージョン/作成日/作成者/スポンサー/PM/概要(1行)/背景/戦略的整合性/成功基準(トップ3)/想定投資対効果(ROI)
レビュー基準:1ページ要約があるか。期待効果(定量)が示されているか。承認者(スポンサー)が明記されているか。
例:目的:2026/12までにIT運用コストを15%削減(基準:2024会計年度実績)/期待効果:年間37.5M USD削減見込み。
2. 目標・成果物(Deliverables)
要旨:SMARTで明確に。成果物ごとに受入基準(Acceptance Criteria)をセット。
推奨フィールド:目標名、SMART詳細、KPI、基準値、測定方法、ベースライン、オーナー、期日、関連成果物。
レビュー基準:各KPIに測定方法とデータソースが指定されているか。達成責任者がいるか。優先順位(MUST/SHOULD/CAN)表記があるか。
例:成果物「クラウド最適化レポート」/受入基準:「使用率改善提案が50項目以上、推定コスト削減額の根拠有り」/承認者:CIO。
3. スコープ管理
要旨:In/Outを明確化し、スコープ変更時の手順と影響評価方法を定義。
推奨フィールド:スコープ宣言(1行)、Inリスト、Outリスト、境界(依存システム等)、スコープ変更申請テンプレ、承認フロー。
レビュー基準:主要ステークホルダーの署名(または合意記録)があるか。Change Requestの評価基準が定義されているか。
注意点:スコープの粒度は「成果物ベース」で定義する(作業ではなく受入)。
4. スケジュール
要旨:WBSを基にガント・マイルストーンを作成し、クリティカルパスやリード/ラグを明示。
推奨フィールド:WBS一覧+WBS辞書、マイルストーン表(期日・成果物・完了基準)、主要依存、クリティカルパス、バッファ(%)。
レビュー基準:WBS最小作業単位が2〜5営業日程度か。マイルストーンが成果物ベースか。遅延閾値とエスカレーションが定義されているか。
ツール:MS Project、Smartsheet、Jira(サブタスク管理)など。
5. 体制・役割分担(RACI/ガバナンス)
要旨:誰が決め、誰が実行し、誰に相談するかを明確化。承認権限を図示。
推奨フィールド:組織図、RACI表(成果物×役割)、意思決定マトリクス、エスカレーション階層、会議カレンダー(定例)。
レビュー基準:RACIに空白がないか(R/Aが複数いないか)。意思決定の権限が明確か。リスク対応時の承認者が示されているか。
追加:ステアリング委員会や技術フォーラムの開催頻度と議事録ルール。
6. リソース計画
要旨:必要人的資源、スキル、設備、採用・外注スケジュールを決める。
推奨フィールド:人員計画表(役割・FTE・スキル・稼働率・期間)、設備・ライセンス一覧、外注候補と契約条件、トレーニング計画。
レビュー基準:スキルギャップの把握と対応計画があるか。主要リソースの確保状況(コミット)が記録されているか。
数値目安:リソース過不足は月次で見直し、ピーク時の稼働率は80%未満推奨。
7. コスト計画
要旨:根拠ある見積り、予算配分、キャッシュフロー、コンティンジェンシーを示す。
推奨フィールド:コストブレイクダウン(人件費、外注、ツール、ライセンス、予備)、見積り手法、支払スケジュール、ROI試算、キャッシュフロー予測。
レビュー基準:見積り根拠の記載(参考単価・過去事例)があるか。コンティンジェンシー(%)理由が明示されているか。
ガイド:通常コンティンジェンシー10〜15%(リスク高→増)。
8. リスク管理
要旨:リスクを定量化して優先順位付け、対応計画とモニタリングルールを作る。
推奨フィールド:リスクレジスター(ID/説明/影響度/確率/期待損失/対応策/オーナー/ステータス)、リスク閾値、トリガー、リスク報告頻度。
レビュー基準:重大リスク(高影響×高確率)に対する代替策があるか。リスクオーナーがアサインされているか。
追加:リスクの可視化(ヒートマップ)と月次更新ルール。
9. 品質管理
要旨:受入基準、QA/QCの仕組み、テスト範囲を明確化。
推奨フィールド:成果物ごとの受入基準、品質チェックリスト、テスト計画(単体・結合・受入・性能)、テスト環境、欠陥管理フロー、品質KPI。
レビュー基準:受入基準に合格する計測可能な指標があるか。テスト環境が用意されているか。QAとQCの責任が分離されているか。
例:パフォーマンステストは最大同時接続数Xでレスポンスタイム
10. コミュニケーション計画
要旨:誰が・何を・いつ・どの形式で報告するかを明文化し、期待値ズレを防ぐ。
推奨フィールド:ステークホルダーマップ、コミュニケーション表(受信者/送信者/内容/頻度/フォーマット/配布先)、会議テンプレ、レポート形式サンプル(1ページ経営向け)。
レビュー基準:主要ステークホルダー向け1ページサマリが用意されているか。会議の目的と成果物(議事録・アクション)が決まっているか。
11. 課題管理(Issue)
要旨:発生した課題はログ化して優先度・対応・完了までトレーサブルに管理。
推奨フィールド:課題ログ(ID/内容/発生日/優先度/影響範囲/対策/担当/期限/状態)、定例レビュー頻度、エスカレーション基準。
レビュー基準:未解決課題の致命度と件数が経営に与える影響が明示されているか。
12. 前提条件・制約
要旨:Assumptions(仮定)とConstraints(制約)を別々に列挙し、依存関係を明確に。
推奨フィールド:前提一覧、技術的制約、契約上制約、法令・規制、依存システム、外部イベント(例:法改正)と対応方針。
レビュー基準:重要前提に対する検証計画があるか。違反時の影響評価が準備されているか。
13. 用語定義・付録
要旨:略語や参照資料をまとめ、誰でも同じ意味で読むための基準にする。
推奨フィールド:用語集、参照ドキュメント一覧(バージョン・保存場所)、テンプレ群(CR、承認フォーム、報告テンプレ)。
レビュー基準:ドキュメント間のリンク(Single Source of Truth)が機能しているか。
付録:よく使うテンプレ(抜粋)
A. リスクレジスター(列)
ID | リスク内容 | 影響度(H/M/L) | 発生確率(%) | 期待損失($ or 工数) | 優先度 | 対応策 | オーナー | 状態 | 備考
B. RACI(成果物 × 役割)
成果物 | Sponsor | PM | Dev | QA | Ops | 備考(承認基準)
C. マイルストーン表
ID | マイルストーン名 | 期日 | 完了基準 | 担当 | 状態
D. 変更申請(CR)
CR-ID | 申請日 | 申請者 | 変更概要 | 影響(コスト/スケ/品質) | 推奨/却下 | 承認者 | 実施日 | 備考
E. 受入基準テンプレ
成果物名 | 目的 | 測定可能基準 | 測定方法 | テスト条件 | 合格要件 | 承認者
推奨ツール(参考)
-
ドキュメント:Confluence / SharePoint(版管理・リンク)
-
WBS/ガント:MS Project / Smartsheet / Primavera / Excel(小規模)
-
要件・タスク追跡:Jira / Azure DevOps / Asana
-
リスク/課題:Excelテンプレ or Jira Issues(タグ運用)
-
コミュニケーション:Teams / Slack / 定期Web会議(議事録はConfluence)
ベストプラクティス(実務的な一言)
-
最初の合意に時間を掛ける:初期合意が堅牢だと手戻りが劇的に減る。
-
成果物を受入基準で定義する:作業完了ではなく「受入れ完了」で判断する。
-
数値は根拠とともに提示:見積りやバッファは算出ロジックを必ず添付。
-
単一の情報源(Single Source of Truth)を守る:古いドキュメントが混在すると混乱の元。
-
早期に法務/セキュリティレビュー入れる:後からの仕様変更コストが大きい。